第17話 新しい通路の先に
わたしたちのいる、族長の間。
玉座のすぐ後ろにある堅い壁。この部分を掘って、新しい通路と部屋を作ろうという事になった。
「ここから奥の壁……りり様のお力で、掘り進められますか?」
「……やってみましょうか」
手を壁の方に伸ばして、意識を集中させる。ツルハシの削り跡が残っている壁に意識を向けてみると……壁を「掴む」感覚がした。
確かに他の部分の壁よりも、「堀り」辛い感じ、「固い」感じがする。この前、落盤した岩を取り除いたけれど、あの時よりも格段に固い。
だけど……何とか、「掘れる」感触がする。
そんな事を考えながら、「採掘」を発動させる。
やはり岩が硬くて、消えるまでに微妙に長く時間が掛かる気がしたが、それでも、少しして、ボシュッと音がして壁の一部が消え、通路が四角く凹んだ。
「わあっ」
「おおっ、やりましたな」
壁が「掘られた」様子を見て、爺とリーナが小さく歓声を上げる。
「……行けそうね」
「りり様、続けて掘ってみましょう」
「ええ」
リーナに促されて、連続で「採掘」を発動させる。
とりあえず、わたしの身体よりも少し大きめ。縦横が、普通のゴブリンが通れる程度のサイズになる様に、通路の岩を削っていく。
そして、縦横の幅を確保したら、同じスペースを確保しながら、奥へと削っていく。
壁の岩が硬いこともあり、いつもより長く、「採掘」一回毎に数秒程度の時間が必要だったが、それでも少しずつ、通路が掘り進められて奥に伸びて行った。
進みながら通路の断面を見ると、ガチガチの一枚岩と言った感じで、本当に固そうだ。これまでの人力(ゴブリン力?)では絶対に掘るのは無理だろうと感じられる。
とはいえ、「採掘」で消した跡の断面が、結晶の様にきらきらとした感じで、とても綺麗だ。幸いにも、地下水が漏れてくる様な感じもなく、綺麗な通路になりそうだ。
そんな事を考えながら、しばらく掘り進んだ時だった。
突然、「採掘」を使ってもいないのに、突き当たりの壁ががらがらと崩れた。掘り進めていた先の壁が、薄くなっていたらしい。
「!?」
そして、崩れた壁の向こう側から……明るい光が差し込んできた。
洞窟を掘っているのに、光が差し込んでくるのはおかしい。外の光かと思ったが、ここは地面より遙か下。ヘルシラント洞窟の最深部だ。これはどういうことだろうか。
「りり様、これは!?」
リーナと爺がわたしを見るが、自分にもわからない。どうして崩れた壁の向こうから光が漏れてくるのだろう。
とりあえず、この先に何があるのか見てみるしかなさそうだ。
わたしたちは新しくできた通路の先に足を踏み入れて。
「わあ……!」
そして、三人で歓声を上げた。
そこは、とても広い空間になっていた。
先ほどまでわたしたちがいた、「族長の間」よりも格段に大きい。縦横は「族長の間」の数倍。そして、奥はどこまで続いているか判らないほどの広大な空間が広がっていた
そして……壁一面が、何か水晶の様な結晶に覆われている。その水晶がきらきらと青白い光を放っており、洞窟全体を照らし出していた。
「すごい場所を掘り当ててしまったわね……」
「とても明るくて、綺麗ですのぅ……」
「族長部屋の少し先に、こんな広い場所があるとは思いませんでした」
三人で周りを見回す。
「それにしても、この光っている石は何かしら?」
わたしが言うと、リーナが少し考えて答えた。
「これは……『魔光石』ではないでしょうか」
わたしは、本で読んだ知識を思い出していた。
「魔光石」。魔力が貯め込まれた鉱石で、青白い光を放ち続ける特徴がある。
また、魔力が貯蔵されている特徴を生かして、携帯用の魔力補充アイテムとして使用されたり、マジックアイテムの材料などにも使われている。
……言うまでもなく、とても貴重で、高価な、高く売れる鉱石だ。
そんなものが、洞窟の奥にあったなんて驚きだ。
「まさか、こんなところに『魔光石』の鉱脈があるなんて……」
鉱脈どころではない。大鉱脈……いや、広々とした部屋全体が、どこまでも「魔光石」で埋め尽くされているのだ。
こんな場所が、我がヘルシラント族の洞窟の中に。それも、族長部屋の後ろにあるなんて驚きだ。
この石の鉱脈の近くだったから、族長部屋の後ろの壁は、あんなに堅くて。そしてキラキラと光っている感じだったのかもしれない。
「ここにある全体が、『魔光石』とは、すごいですのぅ」
爺が感嘆の声を上げる。
わたしは改めて、「魔光石」の光に包まれた洞窟を見回した。
これは大きな……とても大きな収穫、幸運な収穫だ。
この広い洞窟の中、一面埋め尽くしている「魔光石」。これだけあれば、かなり長い間、使い切る心配はないだろう。
「光る石」という点でも様々な事に仕えるし、それに高値で売却することもできる。
有効活用すれば、わたしたちヘルシラント族が経済的に潤うし、生活も便利になる筈だ。
それに、出てきた場所も良い。
この場所であれば、わたしが生活している「族長の間」からしか通じていないので、わたし自身が管理できる。
アクダム派に横取りされる心配も無い、更には、一番奥にあるので、洞窟外からの何者かに盗まれる心配も無い、安全な場所だった。
……さて、これだけの「魔光石」。まずはどう活用しようか。
わたしたちは、しばし、まばゆく輝き続ける『魔光石』の洞窟を眺め続けたのだった。
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