第15話 洞窟の整備
わたしが「採掘」の能力で、落盤で塞がれた通路を復旧させてから、しばらく経った。
落盤事件を解決させた様子を見た者から、部族の中に噂が広がったのだろうか。周りのゴブリンたちの目も、次第に変わって来た様だ。
少しずつわたしの事が認められている様で、何だか嬉しい。
それに、我ながら、こんな能力……「採掘」などに使い道があるのか?と思っていたので、実際にこの能力を使って、困っていたみんなを助ける事ができて嬉しかった。
洞窟の中などで、邪魔になるものを「採掘」して消す……という事が、思っていたよりも便利で、みんなの役に立つことが判ってきた。
これからも、この「採掘」の能力を生かして、ヘルシラント族のみんなのために役立つ事をしよう。
このヘルシラントの洞窟の中には、「採掘」の能力を使えば、不便な事が解消できたり、もっと便利になる事がある筈だ。
洞窟の外でも、邪魔な岩などを消したり、地面などを掘る事ができれば、集落に住むゴブリンたちの役に立てる筈だ。
おそらくはこれが「採掘」の本来の使い方だと思うし、みんなのために積極的に使っていきたい。そしてそれは、ヘルシラント族みんなの支持を得ることに繋がって行くはずだ。
まずは、洞窟内の整備から手を付けていこう。
……………
その日以降、わたしは、リーナと爺を連れて洞窟内の各所を歩き回り、気がついたいろいろな場所を、「採掘」を使って少しずつ整備して行った。
洞窟の少し狭くなっている部分の壁を、「採掘」で削って広げたり。
また、水場から新鮮な水を引くための溝を引いたり。
流れが澱んでいた下水用の溝も「採掘」で削って流れを直したりした。
そして、上水や下水が流れる溝には、岩を「採掘」で削って作った蓋を設置していく。
そうした整備が一段落した後は、洞窟全体で、あちこちの壁を「採掘」で削って、整備していった。
基本的に自然の洞窟が原型で、その後は手堀りで広げていたので、狭くてごつごつしていた、ヘルシラントの洞窟。
そんな洞窟の通路を、崩れないように気をつけながら、少しずつ切り広げるようにして整備していく。
削った場所の天井が崩れてこないかが心配で、洞窟内を削る時にはみんなに離れて貰ったりと気をつけていたけれど……幸いにも、削った場所で崩落が起きる事はなく、順調に洞窟を整備する事ができた。
岩肌の壁のごつごつした部分を、「採掘」で削って綺麗に整えて行く。通路や部屋を中心に、壁や通路の形は、整然とした四角形、直線に変わっていった。
……………
こうして、洞窟の中は、わたしの「採掘」の能力で次第に整備されていった。
洞窟の整備は役立つし、部族のゴブリンのみんなも喜んでくれる。
整然とした綺麗な通路。そして、石の蓋付きで整備された、上下水道。
各部屋も同様で、私の「採掘」によって、整然とした真四角の部屋に整備された。住人のリクエストに応じて、壁を削って棚を作ったりもしてあげる。
部屋が綺麗に整理されて、いろいろな家具を置きやすいと好評だった。
ただ、アクダム派だけは、わたしを縄張りに入れてくれなかったので、そうした部分の洞窟は手つかずのままだった。
ともあれ、そんなアクダム派の縄張りを除いて、洞窟はかなり整備できて来た気がする。
アクダム派の者達は、「採掘」で削られた洞窟の壁を見て「先祖からの手堀りの苦労した鑿やツルハシの跡がー、伝統がー」と文句を言ったけれど、それ以外の部族のゴブリン達には好評だった。
わたしの「採掘」による整備を拒否した、アクダム派が仕切っている縄張りの、通路や部屋は昔のままだ。
その一方で、わたしを支持してくれる者達が住む通路と部屋は、綺麗に整備されていく。
結果的に、アクダム派の縄張りは、手つかずの不便なままの洞窟。
それ以外の、わたしを支持してくれる者たちの住む地域は、わたしの「採掘」で整備された、綺麗で整備された便利な洞窟……という状況に変わっていった。
その「差」を見て、アクダム派からわたしへの支持に乗り換えてくれる者も、少しずつ出始めている。
地道にこの活動を続けていけば、ヘルシラント族でわたしを支持してくれる者も、地道に増えていきそうだった。
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