第14話 水場の確保
落盤で塞がれた通路。水場に繋がる通路を塞ぐ、岩。
普通であれば手の付け様の無い状態だけど。でも、わたしの「スキル」……「採掘」であれば、何とかできるかもしれない。
わたしは、手を前にかざして、目の前に積もっている岩に意識を集中させた。
岩を「掴む」感覚がする。
うん、大丈夫。この岩も「採掘」できる。
硬い岩だから心配だったけれど、これなら大丈夫だ、という感覚がする。
鉄格子でも「採掘」できたから、きっと大丈夫だろうと思っていたけれど、うん、問題ないようだ。
わたしはにっこりと微笑んで、周りに呼びかけた。
「安心して、わたしに任せなさい」
わたしの「スキル」の事を知らない、周りのゴブリンたちがザワザワとし始める。
「あの、人間みたいな子供が族長様? 見物にでも来たの?」
「わたしに任せなさい、と言われても……あの子がこの岩を掘るの?」
「伝説の『ゴブリリ』だって。能力に目覚めたらしいけど、さすがに無理だろ」
「あんな小さい子が、あんな大きな岩を動かせる筈がないよ……」
やはり、疑問の声しか上がっていない。ここは実際にやって見せるしかなさそうだ。
「……っ!」
わたしは改めて岩に意識を向けて、「採掘」の「スキル」を発動させた。
ボシュッという音とともに、通路を塞ぐ岩の一部が消える。
その様子を見て、周りのゴブリン達から「おおっ!?」と声が上がった。
「なんだ、今の?」
「岩が消えたぞ!?」
今のわたしの力だと、人差し指の長さ四方の大きさしか消せないので、消えたのはごく一部だけだ。……だけど、続けて何度も使えばいい。
連続で「採掘」を発動させる。
少しずつだけど、次々と、そして確実に、洞窟を塞いでいた岩が削れる様に、音を立てて消滅していく。
目の前で、次々と岩が削れる様に凹んで、次第に消えていくのを見て、様子を見守っている部族のゴブリンたちから、「わあっ」と歓声が上がった。
そんなゴブリンたちの様子を横目に、連続で「採掘」を使い続ける。
次々と岩が削れる様に消滅していき、次第に通路を塞ぐ障害がなくなって、綺麗になってくる。
ある程度岩を消すと、塞がれていた通路の向かい側が見えてきた。
削ったり、動かそうとするだけでも大変な労力が必要な岩が、ものすごい早さで消滅していくのを見て、ゴブリンたちから歓声が上がった。
「すごい! あんな大きな岩が無くなっていく!」
「これが、伝説の『ゴブリリ』の力……!」
「これで、水場まで通れる様になるわ……!」
「何でも消せる、消滅魔法……なんて凄まじい威力なんだ……!」
「おおっ、さすがはりり様!」
「消滅の『スキル』を、まるで採掘能力みたいに使われるなんて……さすがです!」
爺とリーナも歓声を上げる。
実際にはその逆で、「採掘」の力を、あたかも消滅魔法に見える様に使っているわけだけど……。
だが、能力を有効活用できるのに越した事はない。そもそも「採掘」なのだから、こうした事に使うべき能力なのだろう。
数分ほど作業を続けた結果、通路から落盤した岩は「採掘」の能力で削られて、すっかり消えていた。
わたしは通路に転がっている大きめの岩を「採掘」で消しながら、通路を奥の方に歩いていく。
落盤の後だったので、岩を消した後で崩れてこないか心配だったけれど、どうやら大丈夫そうだ。
通路の奥には、水場として使っていた部屋があって、こちらは被害を受けずに、変わらずに水が沸きだし続けていた。
最後に、泉の中にいくつか転がっている岩を「採掘」で消すと、水場はすっかり元通りの姿に戻っていた。
「……はい、直りましたよ」
そう宣言すると、おずおずと後ろを付いてきていたゴブリンたち。特に普段水場を使っていた女性たちから、わあっと歓声が上がった。
「すごい!」「あっという間だ!」
「あれが、族長様の、ゴブリリ様の力……」
「これで水場が使える様になります!」
「ありがとうございます! りり様!」
「すごいです、族長様!」
「わたしたち、りり様についていきます!」
手を取り合って喜ぶゴブリンの仲間たち。
そして、笑顔で駆け寄って来て、手を取ってわたしにお礼を言ってくれる。
その様子を見て、後ろで爺とリーナも笑顔を浮かべていた。
わたしの、「採掘」の力が、みんなの役に立った。
わたしの「スキル」が役に立って、みんなが、喜んでくれている。
部族のゴブリンたちが、喜んでくれている。みんなの笑顔が見られて、わたしも嬉しかった。
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