第13話 塞がれた通路
ヘルシラント族の皆に族長として認められるために、わたしの「スキル」である「採掘」を使って、役立つことがしたい。
だが、具体的にはどんな事があるだろうか。
「今、部族のみんなが困っている事はないの?」
わたしがそう聞くと、リーナが少し考え込んでから言った。
「洞窟の外の話になりますが、畑が害獣に良く荒らされていますね」
「害獣?」
「鹿や猪ですね。夜中に入り込んできて、畑を荒らすので、なかなか対策が……」
害獣対策か……。
わたしの「採掘」で害獣を消せるわけではないので、すぐに対策するのは難しそうだ。
「あと、今年は天気がよくないので、カイモン芋が不作になりそうですじゃ」
「カイモン芋、美味しいんですよ!」
天候についても、自分の能力でどうにかできるわけではない。
それに、脱線しつつ、畑の話が延々と続きそうな雰囲気になったので、わたしは話を変える事にした。
「他に、何かわたしが対応に協力できそうなことは……」
「そうですね……」
リーナはふたたび考えこんだ。
そして、ふと何かを思い出した様で、ぽん、と手を叩いた。
「あ、先日の地震の事は覚えていますか?」
「ああ……あったわね、地震」
わたしは少し前の事を思い出していた。
「スキル」に目覚める少し前の、まだ幽閉されていた時期。結構大きな地震があった。洞窟の中も大きく揺れたし、地響きみたいな音も聞こえてきて、かなり怖かったのを覚えている。
「……実はあの時、洞窟の何カ所かで落盤があったのです」
「そうなの……」
あの地響きの様な音は、落盤の衝撃だったのか。
「幸いにも巻き込まれた者は出なかったのですが、落盤した場所の一つが、水場の入り口だったのです」
リーナの説明に、爺が頷きながら続けた。
「それ以来、洞窟内の水場が使えなくなって、外まで水を汲みに行かないといけない状態になっていて、みんな苦労してますのじゃ」
「それは大変ね……」
わたしは頷いた。
「この落盤で塞がれた通路ですが……りり様のお力で何とかなりませんか?」
リーナの言葉で、わたしははっと気がついた。
そうだ。確かに、わたしの採掘であれば、岩も消すことができる。これこそ、自分の力をみんなのために役立てる事ではないだろうか。
「教えてくれてありがとう、リーナ」
わたしは、リーナの手を取って、案内を頼んだ。
「何とかできないか、やってみましょう。さっそく、その場所に連れて行って貰える?」
「はいっ」
リーナは頷いた。
……………
リーナと爺に連れられて、わたしは、落盤地点……水場がある広間に繋がる通路までやって来ていた。
その通路は、「通路だったところ」と言った方がいい程の酷い状況になっていた。
落盤が発生していて……完全に道が塞がれていた。
少し壁や天井が崩れている、というレベルでは無く、天井全体が落ちてきて通路を完全に塞いでしまっている。
落盤で塞がれた通路の前で、集まったゴブリン達が不安げに眺めていた。
「ここが現場です、りり様」
リーナの言葉に、集まっているゴブリンたちが一斉にわたしを見た。
「あれが『りり様』? 初めて見た……」
「なんで人間の子供がいるのかとおもったけど、あれが『ゴブリリ』なんだ…」
完全に珍しいものを見る表情で、遠巻きにわたしをじろじろと眺めている。
これまでずっと族長部屋に閉じ込められていたので、わたしの事を名前でしか知らない、姿を見たことが無い者が多いのだ。無理も無い反応だった。
だが、改めて族長になったからには、みんなに顔を覚えて貰わないといけないのだ。
そして、みんなに族長と認められなければならない。
「落盤で通路が塞がれて、水場に行けなくなってしまったのですじゃ」
爺が改めて説明してくれる。
この先は洞窟内でただ一つの、綺麗な水が湧き出す、大切な水場だった。
ここが使えないとなると、水の確保のためには、洞窟の外にある泉まで、長い距離を外まで取りに行く必要がある。そのため、最近は毎日洞窟の外、山を下ったところまで水を汲むために往復する、不便な生活を強いられているとのことだった。
通路を塞ぐ岩を撤去できれば、もう一度水場を使えるのだが、落盤した岩は大きくて、人力……ゴブリン個々人の力ではどうしようもないレベルだった。
そうなると、ツルハシやノミで地道に岩を削っていくしかない。ひたすら岩を削っても、完全に除去して、水場利用を再開するためには、相当長い期間が掛かりそう。いや、もうこの場所は諦めるしか無いのかもしれない。そういった状況なのだった。
「皆が困っています。りり様のお力で、何とかできませんか?」
リーナが言う。
あの日、族長部屋での騒動などで、リーナはわたしの「採掘」の力を見ている。だが、これほど大規模に岩で塞がれた通路を見ると、この状況が「何とかなる」のか半信半疑といった表情だった。
「そうね……」
わたしは、改めて通路を塞いでいる岩を眺めた。
確かに普通の方法であれば、岩の撤去は難しいだろう。
……でも、わたしの「スキル」……「採掘」であれば、もしかして……
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