4-疑いと終末の存在
見た。確かに見たんだ。そして聞いた。
沖葉 涼佳が残した言葉と、その悲しげな冷えきった表情。
僕は憤った。新学期が始まったばかりで、異能力だかなんだかってだけで何故罪のないクラスメートに手をかけるんだ…?
「なんで…なんでこんな真似をした?」
僕はそのままの疑問を吐くように、容疑者とされる一人の女子生徒、白川 琴音に聞いた。
「私は…してない。」
震え声でそういってくる。でもあの沖葉の顔に嘘はないはずだった。あんなに必死に伝えたのに、それが嘘だなんて、そんな終わらせ方はしたくない。
「じゃあなんで沖葉は殺された?どうしてだ。
まだあんまり話したこともないけど、最後の最後まで温もりを求めていたあの顔を、純情を裏切るやつがいたってことだろ!?」
「でも…私は知らないです。だから私がしたっていわれて、私は私が信じられなくなりそうだし、いまこの世界だって、本当は現実でも真実でもないって、信じたい。」
そうやって分からないというやるせなさを露骨に表情にだす白川。
くそっ。どうすればいい?誰を信じれば…
そもそもなぜこんなことになると、魅花見さんは…?何か知っていたんじゃないのか?
異能力…それを使って何をしたくて、どうしてこんなことになってるっていうんだよ!
「とりあえず、沖葉はこんな地べたじゃないところで横にさせてあげた方が…良いよな」
「そうだね。果山くん…?だよね。」
「とっても優しくて勇気のある人なんだね。」
この人は…沖葉の友達の、滝間 礼 か。
なんというか、とても優しい眼差しをしていた。
「ただクラスメートがこんな悲しい顔で最期を迎えるなんて、やるせなかっただけだよ」
「きっと怖がっていて、悲しんでる人も沢山この中にはいる。僕は信じてる。」
こんな事した奴への皮肉もあったが、純粋に信じられる人がいることを願いながらそうこぼした。
「凉佳を寝かしたら話があるの、ちょっとしたね。あなたには聞いて欲しい。だから…そうね。女子トイレに来て。」
耳元でそう告げられた……。
え?女子トイレ!? とかいってる場合でもないのか、なら気にせずに…沖葉の頬にてをおいてからトイレに向かった。
彼女の頬はとても冷たかった。まるで氷のように。休み時間に見えていた笑顔の暖かさを忘れてしまうほどに。
「魅花見さんと話していたでしょう?」
「あ、…あぁ」
ばれていたのか。
少し緊張感が走る。
滝間は信じて良いのか…?そもそも何を聞かれるのか…。
「じゃあ話は早いわね。」
「私は終末の異能力を持つものよ。」
まさか滝間が異能力者の一人だったとは。
カミングアウトしてきたってことは…相当な裏がなければ信じてよさそうだ。
「しゅ…しゅうまつ?」
かたことになる。だって週末って、なんだよ。
「終末。その気になればこの時空を全て終わらせる力よ。時間の流れの終着点を作るの。終末に関することだから、対価があれば、人の能力を終わらせて無能力にもできるし、人生も終わらせられる。」
え。怖すぎる。なんだそのチート能力は…
僕は最初の方にこんなのと会ってしまって良いのか?
この暖かい眼差しに終末。
温度差の激しい子だな…。
「だから入学してから魅花見さんに私も言われた。彼女は継承と予知、そして起源の力を持つの。だから私がたちきり、彼女が始める。こうすることで、何度かやり直して、繰り返していけるの。」
なるほど。そういう仕組みか。
なんで滝間の存在を言わなかったのかも謎だし、予知がどの範囲なのかも気になるな…。
ただ、滝間と基本的に連携していくというのは分かった。
「とりあえず話は読めたよ。それで、話に続きはあったりするのかな?」
「もちろんよ。」
少し得意そうに言っているが…一体なんだろうか
「もったいぶるなよー?期待するだろ」
深呼吸すると、彼女はこういう。
「犯人候補なら、何人か分かるわ。」