2 友達 _完クリするまで終われない方程式_
僕は学校が楽しみだ。
なぜなら新学期に入り、ちょっとした楽しみができたからだ。というかもうちょっとしたとかいうレベルじゃない。
生まれてこの方まともに話したことの無かった女子と友達になれて、席替えとかするまではずっと僕は幸せ者だろう。
だから重かった足取りはだいぶ軽くなった。
「よっ!律。」晴也だ。
「おはよう 晴也。」挨拶は無難にこなすのが僕のやり方なのだ。
「最近おまえとなりの席の女子と仲良いじゃんかよー全く。俺なんて隣の娘全っ然話してくれねえしなぁ!羨ましいぜ!」
と苦笑いをすぐに晴也は笑い飛ばした。
僕と晴也は最近の学校のことを話したりしながらクラスに行き、また昼休みに。
と言って別れた。
「律徒くん、おはよ。」
こういって僕に挨拶をしたのは魅花見さんだ。
「おはよう。朝から勉強?偉いね」
「私は頭悪いから予習してるの。テストで笑われちゃうと嫌だからね」 と微笑みながらまた教科書に目線を戻した。
全く綺麗な横顔だ。チラチラ見たらさすがに嫌だろうから逆に意識して見ないようにしながら、僕はスマホを見てホームルームまでの少しの時間を潰した。
____もうすぐね。また私から友達がいなくなる。皆を巻き込んで、皆、みんなごめんなさい。
__________ごめんなさい。__________
!?なんだ今の声は?
多分…これは魅花見さんの声だ。
でも…彼女は今……なんだ寝ちゃってるよ。
幻聴かな…?僕が彼女を気にかけすぎたのか。
不思議だったがホームルームが始まり、みんなが静かになったところで僕は不自然さを押さえ込んでいた。
___。______。
だれかの泣き声が聞こえる。
これはやっぱり幻聴なんかじゃない。
隣の席のあの娘が俯いている。たしかにうつろげな顔で、悲しさに満ちた表情で自分の小さな拳を見つめていた。
「魅花見さん。」 声をかけるのは、友達としてはきっと普通の事だ。
「もしかしたら魅花見さんは何か悩みがあるんじゃないかな、もしそうなら……あとで僕なんかで良ければ話してくれないかな。」
彼女は少し驚いた顔をした。
「…ありがとう。じゃあホームルーム終わったらさ、裏庭に来てくれるかな。」
「うん。すぐ行こう。」
少し心臓がうるさい。でもこれは別に青春とか恋愛のためじゃない。
友達としてだと、自分には言い聞かせた。
「ここなら多分、誰もいないよね。」
魅花見さんは僕を見ながら聞いてきた。
「うん。基本は誰も来ないよ。」
その目をそらしながら僕は答えた。
「あの、ね。少し驚くかもしれないけど、聞いて欲しいの。」
「うん」
「私と一緒にいると、皆タイムリープをしてしまうの」
「うーん、……え?」
タ イ ム り ー ぷ?
「そうだよね。急にこんなこと言われてもね。すぐに信じるのは難しいとおもう。
でもね、本当にしちゃうの。タイムリープ。
そして私はこの学校にいる異能力者達の企みを阻止して、この学校の時間軸に、異能力が介入しない世界線を維持する。
そうしないといけないの。」
「まるで創作のようなお話なんだね。」
僕は晴也のように笑顔で返す。
彼女がずっと悲しみの表情を浮かべているから、それを和らげようとした。
「そうだね、確かに創作…されたものなのかもね、私も。誰かの筋書きでしかないなら、そうなのかもしれないね、」
一段と悲観をして表情に雲がかかる。
「できることがあるなら、協力するよ。
なんでも。どんな異能力でも、友達のためなら
折れずに一緒に立ち向かって見せる」
「…信じるの?私の話」
「魅花見さんの声、届いてたからさ。」
「ありがとう。律徒くん」
僕は2時間目にこの教室の誰かが…死ぬと伝えられた。
そしてこの学校には異能力者が30人いると、そしてこのクラスには8人いると聞いた。
僕は記憶は継承できないが、自分の精神にこの感覚を刻む力を付与された。
魅花見さんのために、こんな凡才の僕でも力になれると、自分自信に証明してみせる。