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勇者は早く殉職したい  作者: しまきち
7/8

勇者は殉職したい

「申し訳ございませんっ」

部屋が斬撃の痕でメッタメタになっているのを、ユネは案内してくれた宿屋の従業員と共に見た


確かに何かシュパシュパ音がするなと思っていたが、まさか

辻斬り、旋風?かまいたち?風魔法とか?

窓は菱形に切り取られ,ベッドは鋭い爪のような線で分割されている

壁や床もメッタメタだ


慌てて降りていく従業員

2階の部屋は他にもあるが、どうやら全滅かもしれない

他の客も入っていくなり飛び出してきている


緑色の塗料がそこかしこに飛び散っており、ペンキ塗るゲームを彷彿とさせる激しいタッチだった


宿を変えれば済む話、とはならない

なぜなら宿場全体が塗料と斬撃でメッタメタなのだ

関係者たちが青筋立てながら今後の対応に追われる中、

客たちは呆然としていた


カフェでもあればいいが、宿場には居酒屋と家族向け飲食店しかなく、時間的に前者は開いておらず、後者はキャンペーンのため大変混雑している


コンビニがあれば、ないないねだりはいけないが、路上で蹲る人々を見ていると、雪による欠航で立ち往生する絵面を彷彿とさせる


加護、こんな時こそまだ確認してない加護

ご休憩∞

ご宿泊∞

何か引っ掛かる表記だが、この際気にしていられない

休憩を選択する


無料休憩開放中!という看板が出現し、困窮する人々の前に

天井の高い広々としたカフェが現れた

カフェならば大丈夫、


とりあえず気分転換に散歩しよう


宿屋からは修繕時間に1時間用すると言われた

短時間で直せるなら、ぶらり散歩で済む話だ


一人ならば




「パチンコというカジノがあるんじゃが、行かぬか?」

ゼルザハがチラシを見せる

筐体といい、絵柄といい、海の生き物とスイムウェアのお姉さんのアレだ。

金色の猫もいるし、紫色の人造人間の兵器も描かれている

完全に日本の、パチンコ店の広告だ

文字はこちらの字体だが、イラストは著作権に引っかかってしまう本物とみまごう、


「ええ、タバコの匂いがすご」

「あ、安心して、嗜好品はサロンが別にあって、そこのみ使用可能なの、消臭も完璧で椅子もふかふかなマシュマロスライム使用よ。食事もサキワレスプーンの悪魔が麺類を仕入れてくれるのよ、美味しいって評判だから行きましょうよ」


アンパン

パチンコ店の名前が書かれた看板は、ネオンらしき物体で光っており、入り口はガラス張りで花が敷き詰められている

赤絨毯が店内まで続き、フロアはものすごく広い

モールくらいはある


入った瞬間に、ドレスになった

「ここは現実から離れる異空間、ゆっくりしていってください」

可愛い女の子、つのがピンクでデコ盛りしてある悪魔のようだ


パチンコ玉が積まれていない

機械で管理されていて、見えないところで玉が移動している


ジャラジャラとメダルが排出される音がする

ホールの真ん中に金色のメダルが敷き詰められた特別な筐体が並んでいる

大きさが他の比ではない かなりの大きさだ

そんな筐体から、メダルがたくさん出てきている


「おめでとうございます!ジャックポットゲットです」

そう宣言された当人はすでに埋まりかけており、あっという間にメダルに埋もれ見えなくなった


しばらくすると、埋もれるほどあったメダルは消えてなくなり、人が倒れている 先程の人だろう

担架で運ばれていくのを見送り、ユネは頷く


「帰ろう」



結局帰れず、1/319の台に座っている

回転数は250回転、大当たり回数は0、昨日も0、

筐体の上にあるデータが表示されたパネルを眺める

軽いノリの誘いだ、勝てなくてもせいぜい銀貨止まり、よくあるカジノのルーレットでん百万円スる、なんてことはないだろう



気がつけば夜になっていた

驚くほどよく当たり、台の上方にあるデータ盤には五桁の数字が並んできる


すでにユネは疲れていた

ハンドルと言われる部分を握りしめ、持ってきた水分は底をつき、トイレにも行きたいがゼルザハが先にトイレに立って帰ってこない


金色のねこが剣を持って何かしらのウィルスと死闘を繰り広げ、負けて崖下へ落ちて終わり、のはずが、大きなフナがねこを助けて逆転当たり


銀色の玉が穴へ吸い込まれていくのを虚無として見送る



ゼルザハはどよめきの中をかきわけながらユネのいる場所へ戻っていた

まず当たらないとされる、伝説の台がまさかの怒涛連チャン

座ったものの財布と命を食い尽くす悪魔の台が、無様に銀色の玉を吐き出す様は、負け続けていた他の客たちの興奮を高めるのには充分だったようだ

歓喜と羨望の声が渦巻く中、とうとう連チャンが終了し、従業員に振り向き×を指でつくるユネの顔は、だいぶ老けていた。




「どうして早く戻ってくれなかったの!おかげで膀胱危機いっぱいだったよ?!」

返却ボタンを押し、出てきたカードを持ってカウンターへ向かう

換金したらトイレへゴウ!だ


金額はかなりのものになったが、すぐ財布にしまいトイレへ駆け込む

サラサラと流れる音楽、ここでは珍しく温水便座

ウォシュレットなんて、ここに来て初めてだ

おそらく、異世界に飛ばされた技術者がいるのだろう

たぶん。


カホンは異質だった

カナンリやエルフの国は中世の雰囲気があるが、ここは

紛れて元いた世界に近いものが溢れている



「お客さま、当店名物のCRみっつの国のフヒト、挑戦されませんか?」

あのメダルに埋もれた筐体を、やれと?


確かに高額換金だったが、あの倒れた人がどうなっ


先程見かけた客は、ベンチで寝ていた

担架、じゃなくてベンチだったの?!

周りに金貨が見える袋が置かれており、気絶していただけのようだ 連れが膝枕であおいでいる。


そうか、死んだんじゃないのか。なら安全だな

試しに見てみるだけ、


そうして踏み込んだメダルに囲まれた筐体に足を踏み入れた瞬間、あたりが真っ暗になり、男が1人立っている空間に切り替わった


「ユネ、なかなかの趣向だな。これは」

ゼルザハが当たり前のように後ろから顔を出して周りを見る

さっきまで空気のように気配を消していたが、特殊な空間に

変わってからは遠慮なく出てきた


「お連れ様とお二人ですね、ようこそ三国の世界へ。

ここでは実際に現地に赴き、対象を倒して稼いでいく

下克上スタイルのパチンコになりま「すみません、猛烈な便意がきたので帰ります」え?」


ユネは果てしなく広がる大陸と、春秋戦国時代の光景のテロップで即踵を返した


あれはあかんやつ

バトルロワイヤル的なやつ

無双なやつ


「あ、あ、んしんしてください!倒すのは人ではなく、

魔物です!あの、ここまで来れる方は久方ぶりで、その!

私の担当になってからは、初めてでして!

毎日練習してきたご案内さ、お待ちくださいっーー」


本当にお腹が痛くなってきたので、丁重にお断りし、すぐさま近くのトイレへ入る

緊張するとすぐこれだ


担当は察して

くれなかったようだ

扉の前に気配を感じる



「すみません、申し訳ないですが出てもらえますか

出るものも出ないんで」

「あのう、ぜひ、お試しでも構いませんので、」

ユネの腹の関門が決壊寸前まで来ている


「では、お試しを後で聞きますので」

そういうとすぐに気配が消えた


トイレから戻ると、応接室のような空間に出た

ゼルザハがソファに腰掛け、何か読んでいる


「先人の知恵の結晶とやらだな」

ゼルザハはニコリと笑うとパンフレットを差し出した


入り込む世界には、希少な鉱石や道具類、美味しい食べ物

可愛らしい獣、珍しい" "

最後はかすれて読めない

珍獣とか植物とかそっち系だろう


「ご利用はお一人様だけでご「いやあ、ここの管理人は

シュファゲーク、だったかな?私は彼とは旧知の仲でね。

ここを仕上げるのに尽力したのを思い出すよ」

どこから生えたかディスターが居る


担当、名札にはモズと書かれている男性は、途端に顔面蒼白になり、すぐどこかへ連絡していた


「知り合いなのか?」

ゼルザハがディスターを小突く

「いや、プログラミング募集をしていてな、応募して働いていたのだ。彼は大層おおきな袋が大好きでな。私の知り合いに可愛らしく袋も大きい女性がいたので紹介した事がある」


「袋・・。」

「お前最低じゃな。ユネの前だぞ?言い方があるだろうに」

「何を言う、悪魔。精一杯の遠回しだ」










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