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表と裏2章  作者: 奏華
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表と裏ー4話ー逃げない

1月後


あれから、コウのこともニクのこともショックが大き過ぎて、現実についていけない。ニクからののメールも読んでいない。ずっと、避けている。

だって、私に何ができるの?親も、医者も対処できないんだよ。ずっと、そんなことばかり考えていた。


麗奈のユニ話も、ほとんど耳を素通りさせた。

ある日

「鈴、ショックだよ。ユニ自殺未遂で、病院に運ばれたらしいよ。しばらく、ヒトトキは2人で活動するんだって」

「えっ、えー。どこの病院?」

「発表するわけないじゃん。ファンが、殺到するよ。」

「そ、そうだよね。ごめん、用事思い出した。」


気がついたら、家に走っていた。身支度して、おばさんに電話する。

病院にかけつける。

受付で、部屋番号を聞き部屋に急ぐ。

入ると、憔悴したおばさんがいた。

「鈴ちゃん、来てくれたんだね。ありがとうね。」

横には、身体にチューブがたくさん入っているニクが横たわっている。酸素マスクもしている。

(また涙が、溢れ出す)


「わ、私ずっと、ニクからの連絡避けてて、ごめんなさい。」


「いいのよ。私ったら、昔から仕事だからって何一つ親らしいことして来なくて、今になってうろたえて

鈴ちゃんに、頼ろうとして、ごめんね。重かったでしょう。あの後、すごく後悔したの。ニクも、丁度あんな生活、限界だったのね。かなり重症だったけど一命は、とりとめたわ。本当に、きてくれて」おばさんの目から、涙が落ちる。もう、一滴もでないって言ってたのに。


ニクは3日間寝ていた。前よりも大人びて感じたのは、精一杯の演技だった。本当は、たった一人の姉コウを失って寂しかったんだ。しかも、自分のせいだと思っていたなんてなんて、悲しすぎる。

ニクのパジャマの袖を、まくってみる。おばさんの言ってたとおり、無数の切り傷だらけだ。身体にもきっと。(私には、泣くことしかできない。一人で頑張って耐えてたんだね。私は、自分のことしかかんがえてなかったのに、今も昔も。いつも、あなたを置き去りにした。)


学校でも、家でもずっと、ニクのことばかり考えてる。

何もできないけど、病室には毎日いっていた。

日にち薬とは、うまいこといったもんだ。チューブも、徐々に数が減っている。


試験が迫り、さすがに留年はしたくないので、おばさんには連絡して、しばらく勉強に専念することにした。こんな気持ちで、勉強にも身が入らないでもこんな時だからこそやらないと、ニクのせいになんてできない。


3か月後


なんとか、試験が終わった。赤点は、ギリギリまぬがれて早速、おばさんに連絡とって病室に向かう。

時々おばさんからは、ニクの近況報告の写メがとどいていた。徐々にチューブが外れていく過程。近況では、身体のリハビリの様子も届いた。もう、最近ではおばさんも2,3日に1回の見舞いらしい。

今日は私のために来てもらうのも、悪いから一人で行くことにする。


リハビリの様子も、見たかったので受付で聞き、部屋に向かう。

中に入ると、5,6人ぐらいの患者が指導の先生についてもらいながら、手を動かしたり寝転んで足上げをしたりしている。その中でニクを探す。


高い左右の平行棒に、両うでをかけながら、体重を預けて少しずつ足をひきずってまえに進んでいる。(ニクだ。写メで見てたけど。実際にみると、うれしくてまた、泣けてきそうだ。)ニクの先生と、目が合ったので会釈する。

「さあ、今日もよく頑張ったね。そろそろ彼女が来たから、終わろうか」

ニクが、ゆっくり視線を私に向ける。

「いや、まだいいっすよ。もう、少し練習したいんで。彼女?募集中なんで。」


それでも、今日はもうこれで終りねとさえぎられ、車いすに座らされる。

「悪いけど、病室まで頼める?次の患者が、待ってるんで。彼、頑張りやだから。俺もへとへとだよ。」

「あっ、はい」車椅子を押すのは、初めてでタイヤがついているものの。曲がり角は、うまくまわれなくて何度も角度を調整して曲がった。とは、言うものの。ムスッとした、ニクと対面してないとは言っても気づまり。


「久しぶりだね。試験中だったんだ。写メおばさんから、何枚か届いてた。最初の日からしたら、すごく頑張ったね。」

何か、返事が返ってきた。でも、うまく聞きとれない。聞き返すと、今度ははっきりと

「もう、来なくていいから。いてほしい時にいつも俺を置き去りにして、自分の都合のいい時だけ来られても迷惑なだけだから。俺の、こんな姿みて同情してんだろ。」

思いきり、ぶん殴られた気がした。本当だ。今さら、私何してるの。

「お前、俺の言うこと聞いてるの。俺リハビリで疲れてるし、早くベットで横になりたいんだよな。」右の眉毛が上がっていた。よかった。こんな時に思うことじゃないけどチューブだらけでは、みられなかった表情だったから。


「うん、聞いてるよ。私随分、身勝手だったなって。わかってる。でも、退院するまで来たいの。そしたら、諦めるから」

「誰を。振られたのは、俺だぜ。自分可愛いのは、わかるけどな。それに、看護婦で可愛い娘いるからモーションかけてるの。元かのに、隣にいられても迷惑」

「そ、そうなんだ。わかったよ。もう、来ないから。」

「おい、ここに置いていくなよな。」

涙を、拭きながら車いすを押し部屋まで行く。ナースコールを押してから、帰る。


1年後


あれから、おばさんから何度かメールや電話があったけどさすがにニクの最後の言葉は、突き刺さった。

連絡を、一切していない。


今は卒業して、学校の紹介で介護士の仕事をしている。シフトも夜間込みで3勤務なので、ヘトヘトで、ニクのことも、あまり考える暇がないので、かえってありがたい。


更に2年後

この介護の仕事をしていると、死がかなりの確率でやってくる。

皆、高齢なんだからしょうがないけど。

同じ作業のルーティンで、日々が過ぎていくなかで、介護者と利用者という関係であっても、情や思い出は積み重なっていく。

とくに、手間がかかる利用者はひと際いなくなると悲しい。

痩せ気味の上品なおじいちゃんだった。食が細く、スタッフが、あの手この手で少しでも食べてほしいと、若い頃すきだったものや好きな音楽を聞かせたり。あと一口食べてねが、スタッフの口癖になった。

休みの日にこのおじいちゃんの死を聞いたとき、ああとうとうきたんだなとおもった。80代、高齢には違いないけど、もう少し長いきしてほしいとおもうのは、まわりのエゴだろうか。


お葬式が、終わって帰ろうと思ったとき。

この近くに野菜パフェーイロハが、あるのを思い出した。懐かしい。お昼食べてなかった。でも、スィーツで昼食にするのもなあ。考えあぐねて、とりあえず、行ってみることにした。


『イロハ』は、ランチ時は、パスタやオムレツもあって混んでいた。

中に入ると、女の人と同席になった。すみません。と、言って顔も見ると、二人して「あっ」と、声がでる。

「おばさん、久しぶりですね。こんなところであうなんて」となりにニクが、いないのを確かめる。

「本当ね。もう、なんかあなたとは、運命しか感じないわ。あの時、ニクが嫌なこといったんでしょ。」

「えっ、まあ、私も優柔不断だったんです。ニクは、元気してますか」


「まあ、元気は元気よ、いい若者がゴロゴロ、あの時から働きもせず。最初は、ハローワークも頻繁に通ってたけど。手の神経が動かないから、見つけた仕事でも面接で落とされて。ハローワークでは、障害者認定受けたらどうかと言われてプライドが、許さないのね。私も、どうしてあげたらいいものか。でも、ヒトトキにいた頃より張り詰めた、緊迫感がなくなって生きていてくれるし、私が死ぬまで頑張ればいいかって」

(そうかあ。あれからって3年余りも引きこもりかあ。会いたい?自分で、自問自答する。あったら、なんか歯止めが、効かなくなりそう。)


二人とも、イロハの日替わり定食を注文して黙々と平らげた。彩りがいいパスタとコーヒーと、ミニ野菜パフェがついて1000円だ。おばさんは、持ち帰り分も頼んでいた。

「そういえば、葬式の帰り?」

「はい、今介護士やってて、利用者のおじいちゃんの葬式で」黒づくめなので、わかるわよね。

「そうか。仕事頑張っているんだね。これから、コウにも焼香してってくれない?」

(そういわれると、断れない。でも、ニクもいるのよね。)

「ニクは、気にしないで。壁だと、思って。あの、寡黙で弱々しいニクが、うるさくなったけど。」

(壁かあ。はあ。でも、また嫌味いわれるわね。まあ、割り切ろう。近況をみる口実ができるもの。)


ニクの家の玄関先についた。

懐かしい。

おばさんの「ただいまー」の声の後ろから、入ろうとした。

ばったり、玄関の一段あがったところに、ニクはいた。「鈴ちゃんと、イロハで相席になっちゃってね。運命感じちゃったから、連れてきちゃった。」

「なんも、感じねーよ。それより、飯買ってきた?2階で食うわ。俺、くそしてから。」

「ダメよ。食事は、一緒にね。くそって、少しは、女の子に気づかえないの?」

「ごめんねー。きっと、照れもあるのよ。」と、おばさんはほろうする。

(うっー、なんかイメージ変わった。アイドル辞めて、ホルモン剤もやめたんだね。どっからみても男の人だ。骨格。髭も生えてる。当たり前なんだろうけど、前のイメージからは、程遠い。髪はぼさぼさで、伸び放題それでも、やっぱ美しい容姿のDNAは、健在だあ。しかし、迷惑そう。私ったら、何を期待していたんだろう。コウの焼香したら、早く帰ろう)


コウのお焼香がすんで、テーブルに、案内される。

右側には、ニクが、持ち帰りのパスタを食べている。左側のおばさんは、ニコニコして二人を見ている。

ふと、立って紅茶もってくるわと行ってしまった。

二人きりで、とてもきまづい。「あ、あの久しぶり。元気そうだね。」

(目の前なのに、完全無視されている。)

「イロハって、ランチもあったんだね。気がつかなかった。今日のパスタも、野菜が練り込んでて身体によさげだし、ソースもこっているよね。」シーン。

「あの、全然イメージ違ってて、びっくりした。男の人に、なって。ごめん。何いってるんだか。意味わかんないね。」

「もう、食ったから」と、立ち上がろうと、する。

「待って」と、ニクに抱きついた。(えっー、何やってるの。私、おまけにそれ以上言葉出ないし)

「お前、なにやってるの。突然やって来て。俺、ついてけないよ。」

「もう、逃げないから現実から」ボソッとつぶやいていた。

「だから、もう3年以上も経っていわれても。とにかく、そういうことだから」

「私にとっては、終わってないの。いい加減、忘れよう。他の人に目を向けよう。と、したけど無理なの。」

私はニクにしがみつきながら、喋っている。

「馬鹿か。俺は、もうアイドルでもなんでもないし、引きこもりのニートだ。オマケに手首が動かない、障害者だ。もう、本当に帰ってくれ」


「嫌だ。離さない。」(わ、私何やってるの。ニクに抱きついて、自分で自分の行動についていけない。)

「苦労するの、目にみえてる。俺と、いたって。」

「私、今介護の仕事で夜勤もあって、20万ぐらいあるから。何とか、切り詰めたら一緒にやっていけるよ」

(えっー、何いってるんだ。私。)

「養ってあげるってか?すごいなあ。びっくりだ。突然きて。どうせ、何も考えてなかったんだろう」

「確かに、こんな言葉でたこと自分でもびっくり。イロハで、おばさんと会ってから、3年間抑えてた思いが、爆発したと思う。また、一緒にいたい。今までしらなかったニクも、知りたい。」

「もういいよ。早く帰れ。うるさいから、返事は母さんに聞いてメールするから」

「うん」と、言いながら、二人とも離れられない。お互いの温もりや、思いから離れたくない。



あら、だいぶたったわね。もう、帰ったのかしら。静かね。

なんだか、コウが鈴ちゃんをニクと、くっつけたがっている気がする。


居間を、覗くと鈴ちゃんに抱きつかれたまま床で、二人倒れたように寝ていた。

(あら、まあ、うふふ。そっとしとくか。なんだか、この二人似たとこあるのよね。娘が、増えそうね。うれしいわ。)

























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