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俺のヤバイイ幼馴染

あらすじでも書いた通り、ありきたりです。ありきたりですからね‼大切な事なので、二度言いました。

 ミーン、ミーン、と蝉のけたたましい鳴き声をBGMにして、俺は夏休みの宿題に取り組んでいた。待ちに待った夏休み。しかし、それをぶち壊すような物が存在している。それこそが夏休みの宿題。


 これを夏休みの終わりまで残す、何て奴が多いが俺はそこまで愚かではない。面倒事は早めに潰しておくのがモットーの俺。


 だから、夏休み初日の今日。俺は夏休みの宿題の大半を終わらしてしまおうと、自宅で奴らと悪戦苦闘している訳だ。


「ん?ちょっとココ少し難しいな?……って言うか結構熱いな」


 換気のために開けていた窓から吹く風は、生暖かく少し気持ち悪い。ジリジリと焙ってきそうな日光をカーテンで遮っているが、完全に日光を遮断できていないようで、熱がこもって蒸し暑い。


 俺の部屋に備え付けられているクーラーと扇風機は、ゴーッとガーッと精一杯頑張っているが結果はあまり芳しくない。確か、今日は最高気温を到達したとか何とか言っていたが、まさかこんなに暑い何て。


 俺の部屋が少し狭いせいもあるだろう。汗を拭い、机に置いていた麦茶を一気に飲み干す。


 まあ、別にこんな暑さは俺にとっては大した事ではない。ああ、そうだ。大した事ではない。……問題はコイツだ。


 ここには狭い部屋をさらに狭くしている奴が居た。


「ねえ、ねえ、ねえ‼勇里‼そんな勉強なんてしてないで私と一緒に遊ぼうよ‼」


 夏に劣らない熱気で俺を遊びへと誘ってくる金髪の女。コイツの名前は栗原 風音(くりはらかざね)。俺の幼馴染だ。


 太陽に負けず劣らず煌めく金髪。腰まで伸びる長い髪を二つにまとめ、ツインテールにしている。モデルのような整った顔立ちで、黒い眼は純粋な黒、と言う訳では無く澄んだ黒色をしていた。


 服装は暑いせいもあってか、紺色のミニスカート、袖の短い青色のシャツと涼し気で、冷涼感がある。華奢な体つきと良く合わさっている。


 一言で言うなら美人だ。風音は美人な幼馴染だ。


 幼馴染、と言ってもコイツとの付き合いはそこまで深くは無い。


 仲良くしていたのは小学生までだ。その後、風音は海外に行ってしまい、何の繋がりも無くなってしまった。


 繋がりが無くなってしまったのだから、いつの間にか俺は風音を忘れてしまい、平凡な学校生活を送っていたのだが、偶然高校で風音と出会った。


 いや、出会ってしまった。と言った方が正しいかもしれない。


 その後、風音は良く俺に絡んでくるようになってしまった。まあ、それ自体は別に大きな問題では無かったのだが、問題はコイツ自身に会った。


「遊ぶって一体何すんだよ?ゲームとか?トランプとか?ウノか?」


「フフフ♪違うよ、勇里。それは勿論、あそこの勇里のベッドで一発‼」


「する訳ねえだろ」


 どうしてなのか、風音は海外からも戻った後、こんな風に下ネタを言う様になってしまった。度々俺を誘ってくる。


 ……まあ、恐らくその気は無いだろう。って言うか無いと信じたい。


「じゃあ私と結婚してください」


「俺達はまだ高校生だろ。そんなことできる訳ねえだろうが」


「じゃあどうか一発だけセクロスを……」


「しねえよ‼」


 本当にコイツはどうしてしまったんだろうか?確か、小学生の時はあんな風では無かったはずだが。


 小心者で臆病者、いつもビクビクとしていて俺の背中に隠れていた。何事にも驚く、怖がりな少女。それが風音だったはずなのに、


 なのに、こんなに積極的になって。


「え?ちょっと、どうして泣いているの?ねえ、どうして泣いているの?」


「いや、お前昔は全くそんなんじゃなかったのに、結構グイグイ行くようになって。成長してくれたんだなって」


「いや、何で親目線⁉」


 風音が何かギャギャーと喚いているが聞き流し、俺は再度夏休みの宿題に取り組む。……あっ、成程、ここはそうやって解くのか。


 黙々と俺が数学の宿題を解いているのを眺めてくる風音。どうやら俺が何を言っても無駄だと察したのか、不服そうな顔でこっちを眺めている。


 やっと分かってくれたのか、安堵の溜息を吐き、また問題にとりかかろうとした時、俺は手に持っていた消しゴムを落としてしまう。


(あ、ヤバイ。さっきの答え間違えていたのに。急いで取らなくちゃ不味いな)


 消しゴムは跳ねて、転がって、風音の足元に。嫌な予感がした。ゲッとした俺と反対に、風音はニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる。


「はい、勇里‼消しゴムだよ♪」


 風音はにこやかな笑みを浮かべながら、消しゴムを取って俺に渡そうとする。が、

「あっ、手が滑っちゃった!」


 わざとらしく消しゴムを落とし、自分の胸の谷間に消しゴムを落とす。


 ……っつ‼コイツ‼これが狙いだったのか


「ゴメン‼悪いけど、その、取ってくれ……ってキャア‼」


 きっとコイツは俺が恥じらいを持つと思っていたのだろう。だが、そう思い通りにいってたまるか、俺は一切の恥じらいを捨て、風音の胸の中から消しゴム取り出す。


 途轍もなく柔らかい感触を感じてしまう。だが、俺はそれに耐え、見事風音の胸の中から消しゴムを奪取する。


 うわっ、やった後に言うのも何だけど滅茶苦茶恥ずかしい。顔が熱くなっている気がした。アイツに見られなければいいんだけどな。


「ちょっと、勇里‼どうして恥じらいを持たないの⁉思春期の一般的な男性みたいに恥じらいを持ってよ‼もしくはデュフフフ風音ちゃん、って言いながらハァハァと息と鼻息荒くして取ってよ‼」


「いや、お前色々とおかしい自覚あるか?」


 何だよ?デュフフフ風音ちゃんって。俺、そんなキャラじゃねえし。っていうか、風音の奴俺が恥ずかしかったこと気付いていなかったのか。よかった。


 まあ、何はともあれ消しゴムは取り戻せたわけだし、俺は再度夏休みの宿題に取り組む。うっ、何かこの消しゴム少し生暖か……気にしないでおこう。


 風音は頬を膨らませ、構ってくれない事に怒っている、が勿論無視だ。


 そして、どれ位の時間が経過しただろう。俺が宿題に取り組んでいた時、集中が途切れてしまっていたせいか


「何かムズムズするな」


 と何となく呟いてしまった。


「え?ムラムラするって⁉」


 風音が嬉しそうな顔で俺に詰め寄る。言ってねえよ一言もそんな事。


 歩く淫乱辞典は俺に詰め寄ってくる。それはもう詰め寄り過ぎる位。何故かハァハァと息を荒げる。


「おい、落ち着け、お前、何かキモイ」


「一発、一発、だけでいいからさ。もし、それが駄目なら私、オカズ用の写真持って来ているから、それを使ってくれても、って流石にここで行為に及ぶのは恥ずかしいよね。でも大丈夫。私がちゃんと見守ってあげるから」


「いらねえし、しねえし、見守るんじゃねえ‼お前の頭の中は、年中ピンク色のハッピーセットなのか⁉」


 いつの間にか手には写真を持ち、俺ににじり寄ってくる。……美少女に迫られているのに全くもって嬉しくない。


「まあ、まあ、ちょっと私が持っている写真見てみてよ‼」


 そう言って、嫌がる俺に写真を押し付けてくる。嫌々ながらも見た写真に写っているのは、目元を隠し、カメラに向かってピースしている金髪の女子だった。しかも全裸。


 もう一つの写真はもっと強烈なものだった。


 ………。


 風音はニコニコしながら俺を見ている、きっと写真の感想を待っているのだろう。しかし、俺はアイツに写真の感想を言わない。


 机の引き出しを開け、その中からマッチを取り出し、容赦なくその写真を燃やした。


「ちょっ‼一体何をするの⁉せっかく頑張って取ったのに、さっきの奴どれもとるの大変だったんだよ‼」


「知るか‼さっきの情熱をもっと別な所で使え‼っていうかお前、どうするんだよ。あんなの他の奴に見られたら。大変なことになるだろうが‼」


「安心して。私のお母さんに見られたけど、フフフうちの娘もお年頃なのね、ってにこやかに見守ってくれてたよ」


「違うだろ‼笑うとかじゃなくて、見守るとかじゃなくて、もっと別にする事が。普通止めろよお母さん。あんたの娘だろ‼」


「なんか勇里に見せるっていたら、母さんOKしてくれたけど」


「畜生、俺の周りには俺の味方は居ないのか!」


 写真だった残骸を捨て、俺はベッドに寝転がる。さっきの騒動で集中力が失せてしまった。息抜きを兼ねて少し寝ようかと思った時、


 ズシンと俺の腹部に重量感を感じた。よく見ると俺の上に風音が跨っている。


「何もしないし、する気もないぞ」


「え?てっきり騎乗位がお望みなんだと」


「んなわけないだろう。……やるならもうちょっと清い交際というモノをだな」


「つまりあそこの毛を剃れと?……はっ!まさか全裸になれっていう事⁉まって、それは流石に私でも興奮しちゃうじゃん‼」


「……どうしよう。お前と俺との会話が成立していない」


 顔を覆い、変わりきってしまった幼馴染に俺は涙する。もしも、風音が小学生の性格のまま成長してくれたら、もっとまともな性格だっただろう。


 しかし、現実は残酷だ。昔の面影など、容姿を覗いて一切ないに等しい。コイツ、いったい海外で何があったんだ?


 やっぱり昔の方が良かったな。


 何となく俺は風音の顔を見る。澄んだ黒目、煌めくような金髪。モデルのような整った顔立ち。華奢な体つき。


 風音はどうしたんだろうと首を傾げている。うん、何処からどう見ても美人だ。


「コイツ、普通に可愛いんだけどな」


 そう、俺はぼそりと呟いた。


 そう言ったと同時に、風音は何故かベッドから転げ落ちる。瞬間ドンッ、床とぶつかる大きな音が響く。


「……痛っ‼」


 腰を痛そうにさする風音。流石に可哀そうと思った俺は、ベッドから立ち上がり倒れた風音に向かって手を差し出す。


「おい、大丈夫か」


「あ、その、ありがとう」


 初々しく、俺の手を握る風音。何故か、若干頬を赤らめている。どうしたんだろう?コイツは一体。俺は思わずドキッとさせられる。


「おい、大丈夫か?何処か痛めてしまった所とか無いか?」


「え?あ、うん、その、大丈夫だから。……心配しないで」


 俺が風音の顔を見ようとすると、風音は顔を逸らし、俺と顔を合わせようとしない。何故か恥ずかしそうにしている。


 どうしたんだコイツ?風音の今の様子はとても大人しい。さっきまでの騒がしさが嘘のようだ。


 しばしの沈黙。俺も風音も何も言葉を発することなく、その場に佇んでいた。聞こえてくるのは蝉の音と、扇風機とクーラーの駆動音のみ。


 どうしよう。何故かとても気まずい雰囲気になってしまった。……あれ、俺何かしたっけ?何もしていないような。


 そんなしばしの間、物思いの俺がふけっていると、風音が俺たちの周囲に渦巻いていた沈黙をぶち壊す。しかし、最悪の方法で。


「さて、勇里‼夜の営みでもしよっか♪」


 青色のシャツと紺色のミニスカートを脱ぎ捨て、下着姿で俺に詰め寄ってくる。下着は派手な装飾は無い、涼しそうな青色の下着だった。


 健康そうな肌を顕わにし、顔を真っ赤にしながらも俺に詰め寄ってくる風音。クソッ目のやり場に困ってしまう。


 下着の隙間からちらちらと見えてしまう胸や、妖艶さを放っている肢体。直視するのは流石に不味いと思い、俺は後ろを向く。


「あれ、どうしたの勇里?まさか恥ずかしがっているの?かっわいい。でも、流石にこんな状況で女の子に手を出せないって、ヘタレだと思うんだよね」


「いいから、お前。さっさと服を着ろ‼」


「やーい、やーい、ヘタレ、ヘタレ」


 俺が何を言っても風音が言う事を聞かない。下着姿で俺を何度も、何度も煽ってくる。……ああ、もう我慢の限界だ。


 俺は煽っていた風音に詰め寄る。ズンズンと前に風音が居るのもお構いなしに前に進み、壁越しに追い込む。


 そして、ドンッと大きな音を出し、風音の後ろにある壁に手を押しやる。風音もこれには予想外だったようで、思わずビクッとし、怯えたような顔をする。


 さっきまでは勝気な顔をしていたのに、今では怯えたような顔をしている、正直言って可愛かったが、俺には間違いを犯すつもりは無い。


 俺はそのまま勢いに任せ、風音のおでこにキスをした。風音の温もりが、唇越しに伝わってくる。


「……へ?」


 自分が思っていた事とは違う事をされた事に驚いていたのか、風音は素っ頓狂な声を挙げる。予想外だぞ、と言う顔をしている。


「ほら、どうだ。お前にキスしてやったぞ。どうだ、ヘタレなんかじゃないだろ」


 ヤベェ‼滅茶苦茶心臓バクバクしている。鼓動音が高らかに鳴り響き、顔はとても熱くなっている。だが、風音に見られない様に、後ろを振り向き平静を保つ。


 風音は腰を抜かしたのか、床に座り込んでいる。


「あの……勇里」


「んじゃあ俺、台所から麦茶取って来るから。お前はその間に服着ろよ」


 俺は部屋から逃げ出す。よしっ、普通だったはず。何の違和感も無く、やり過ごしたはずだ。多分大丈夫だ。部屋を出た後、俺はガッツポーズをした。




 風音の心臓はドキドキとしていた。けたたましく鳴り響く鼓動音。本当に自分の心臓なのだろうか?と錯覚してしまう程だ。


 風音は床に座り込んでいる。さっき自身の身に何が起こったのか、まだあまり理解できていなかった。


 確か、恥ずかしさの余り大胆な行動に出てしまった事は覚えている。今思えば、流石にアレはやり過ぎた。風音は反省する。


 勇里に壁ドンをされた時は、不安と期待。そのどちらも感じていた。勇里が自分に手を出してくれた、という喜びと、それに対する不安だった。


 しかし、彼が取った選択はそのどちらでも無かった。勇里は一ノ瀬のおでこにキスをした。唇ではなく、おでこに。


 瞬間、途轍もない嬉しさが、風音の中から溢れ出た。失望だとか、ヘタレだとか侮蔑や、侮辱、そんな感情は無く、只々嬉しい。


 その感情が彼女を満たしていた。


「ハァ、やっぱり好きだな」


 恍惚とした表情を浮かべ、そう呟く風音。


 そう呟いた彼女の顔は、勇里がいつも見ている彼女の顔では無かった。彼すらも見たことが無い、恋をする乙女の顔。


「でも、やっぱりオデコはヘタレだね。せめて唇だったら……」


 口惜し気にそういう風音。そこに先程までの恋する乙女の顔は無かった。いつもの彼女の顔。やがて、二ッと彼女は笑い、勇里の元へと向かう。


「ちょっと、勇里。私を置いて先に何処か行かないでよ‼」


感想、よろしくお願いします。

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