暇人は仕事が欲しい
「ポン隊長、ちょっと提案があるんですけど」
「何かな?」
「ポーションの仕入れだけだと時間が余るじゃないですか。それで今は他の仕事の手伝いをしているわけですけどね。
どうせなら、本業でもっと仕事をしたいんですよね。
他のギルド相手に、ちょっとした小遣い稼ぎ程度の仕事をしたいんですけど、大丈夫ですか?」
「ふむ。まずは話を聞いてみないと何とも言えないな。説明してくれ」
「ありがとうございます。まずはですね――」
ノートンは新しいギルドに就職したが、残念ながら仕事があまりなかった。
就職先のギルドはいわゆる新興勢力であり、前職と比べると規模は2割未満である。
ポーションの消費量はギルドの規模に比例するので、仕入れられる量が圧倒的に少なかった。
このままでは経営が危ない工房が出てくるだろうと予測された。
知り合いが職を失うかもしれない。
それはギルドからクビにされたノートンにも理解できる恐怖あり、他人事とは思えなかった。
だから彼ら付き合いのある工房が潰れないようにするため、ノートンは知恵を絞った。
冒険者ギルドを大きくするのは不可能である。
冒険者ギルドに持ち込まれる依頼の数、それを増やさないと意味が無いからだ。
人だけ増やして仕事量が変わらないのであれば、人員維持のための経費が嵩んで今度はギルドが経営破綻をしてしまう。そして冒険者ギルドへの依頼とは、実力以上にコネが優先されるのでノートンではどうにもならない。
仕事を増やす方法を思いつかないので、この冒険者ギルドだけでは工房を救えないと、すぐに結論が出た。
自分たちだけでどうにもならないなら、他の連中を巻き込むのが最適解である。
そこでノートンが考えたのは、他の冒険者ギルドのポーション仕入れもやってしまう事だ。
別に不思議な事でもなんでもなく、ポーション専門の仕入れ担当がいるギルドの方が少ない。
規模が小さければ兼任でポーションを仕入れる。
兼任であれば成長の機会が少ないため、ノートンほどのポーション鑑定スキルを持てずに不良品を掴まされて大惨事になる事がある。
基本、ポーション販売をする工房では「不良品を掴まされた方が悪い」という考えの方が主流なのだ。
「高価な品を自分で買うなら、目利きが出来て当たり前」という扱いを受けるところもある。
そういったスキルを持っている誰かを雇えば済む話であったが。
ポーション鑑定に自信のない冒険者ギルドであれば、ノートンの提案は悪くない。
ノートンは複数のギルドを相手に、ポーションの品質保証業を始めるのだった。