はじめよう、ブリーダーのお仕事
私はセリカ・ロンド、冒険者をして生活をしている。
職業は、勇者。お父さんが勇者だった事で、私は、生まれながらに勇者になれた。
仕事では、採取が主な仕事で、討伐の仕事は、成功率0%の劣等生だが、生還率100%の優等生でもある。
討伐の仕事は、討伐の獲物を持って帰れば、成功、討伐ができなくても、撃退ができれば生還となる。
私は、撃退率が100%なのです。依頼人の要望は全て達成出来ているのです。偉いでしょ。
最低限の収入は得られているが、であれば、採取の方が、実は、収入が多い。びっくり(大げさ)
私は、実戦がまったく無いので、受けている討伐も、低ランクだから致し方ない。
高ランクの討伐なら撃退でも高収入だが、万が一、討伐に失敗すれば、その先はない。
今は、自分の能力が判明しているが、冒険するつもりはない、
違うよ、自分の生き死にを天秤にかける、一か八かの仕事はしないって事。
あくまでも収入は、推しの為、グッツの為、オシャレの為。
だからいつも通り、冒険者として、ダンジョンの散策をしていたのだが、ひょんな事で、
ドラゴンの始祖と名乗る、テュポーンに出会ってしまう。
テュポーンは、私に、ドラゴンブリーダーになって欲しいと伝え、私は、渋々ながら承諾したのだった。
少し脚色しているが、概ね間違っていない。大丈夫。訴えられることもないはず。
地下10階に行った事がバレたらお父さんに怒られちゃうし、お母さんはもっと怖い。
虚偽罪で逮捕状は、ほとんど出ないから逮捕もない。大丈夫、もっとヒドイ嘘をお父さんも言っている。
内心の気持ちを言うと、ブリーダーは魅力的な仕事だ。
しかも、ドラゴンなら、高額間違いなし、成長も早い、アホドラゴンの繁殖力も高いと
三拍子揃っている。お父さんなら、間違いなく、冒険者を続けていくよりもサポートしてくれる。
土地は、見つかったし、小屋も作成中だ、お父さんが頑張ってくれるから私も、働ける。
ちょっとお母さんが感づいていて怖いけど、多分なんとかなる、、、だろう、、、大丈夫かな?
私の部屋は、薄紅色の壁に腰高までの高さの縦板が貼られた6畳くらいの広さの部屋で、
様々な、趣味活の集大成と呼ぶべきグッツに囲まれている。非常に満足している。
最近は、映像のレコードが増えて困っているが、売る気はない。しかも買いたいレコードも沢山ある。
最近は、街にレコードキーパーが出来たので、買わないで済んでいるが、
推しのレコードは持っていたい。街では、常に新しいレコードの情報が出回っている。
この前は、ダンジョンの固定ボスのMゴーストの倒し方と、稼ぎ方が冒険者たちに売れていたそうだ。
私は、主に推しのパラディン様が出ている映像を集めている。一日中見ていられる。
そうだ、今日は、凱旋パレードの映像を見よう。お父さんは、私がいなくても、作ってくれる。
大丈夫、信じてる。お父さん大好き。
さてと、今日もパラディン様は、カッコよかった。何より声がイイ。心に響く声にドキドキする。
このテンションで、牧場に行こう。
お父さんは、ドキドキのテンションで行くと何故か喜ぶ。そしてお願いごとの進捗がよくなる。
私も、楽できるし趣味かつ出来るから間違いなくWINーWINだ。一方的な関係とは言わないはず。
日が暮れる時間に牧場予定地に卵を持って行くと。小屋は出来上がっていた。
何気にお父さん凄いよね。
卵は、意外と重たかったから、今度からテュポーンには、最初からここに置かせよう。私の部屋での
孵化なんて許さない。大事なものがいっぱいあるのだから万が一も起こらない方法を考えるのが、
私の使命だと思う。お母さんに見つかったら問い詰められるから猶更だ。
まだ3つ私の部屋に残っているが、こればかりはズル出来ない。一日、1個のペースで運ぼう。
ところでこの卵食べれるのかな?食通の納得出来る代物なら、市場で売るのも良いね。
増えすぎたときには、キャパシティに合わせて調節しないとね。テュポーンはアホでエロエロだから、
際限なく卵増やしそうだし。
昨日頑張りすぎたのか、今日は、一度も返事に出ない。一体化したらそもそも会話できないのかも
わからないから、とりあえずは様子見だ、明日も返事がなかったら、強制的に卵を市場に持って行こう。
『お父さんありがとう。』
牧場につくなり、お父さんに飛びつく。お父さんはデレデレだ。いつもの事だが娘に甘い。
『お、おう』
お父さんはシャイだ、ぎゅ~っと抱き着くとしどろもどろになる。顔はごついのにカワイイ。
最近では、ほっぺにチューをしようとすると恥ずかしいのか逃げ出してしまう。
逃げ出した当初はお父さんもモンスターだったのか?と思ったほどだ。
『まだ、仕上げが済んでいないが、小屋は出来たぞ。』
お父さんは、まず小屋からと言っておいたのでその通りに小屋を建ててくれた。
牛なら20頭くらい飼育出来そうだ。お父さんの能力を甘く見ていた。
『セリカが欲しい物があるって言ったからお父さん頑張ったけど、いったい牧場をどうするんだい。』
そうです。私は、お父さんにも詳細を話していない。でも作ってくれるのがお父さんの凄いところだ。
これからも大いに助けてもらおう。
『ちょっと、飼ってみたい動物がいるの。卵も既にあるの。』
卵を見せて説明する。大きな卵だから、牧場が必要だろうと理解してもらうには好都合だ。
『走り鳥の卵か、珍しい物を手に入れたな。最後までちゃんと育てるんだぞ。』
走り鳥は、ダチョウの更に大きな鳥で、人を乗せて走れる。
刀大好きギル〇メッシュさんのライバルで3つの世界を渡り歩いた勇者〇ッツさんの相棒として
世間に知られた鳥なのだが、この国では見たことがないくらい珍しい。
『走り鳥では、ないと思うけど、ちゃんと育てるよ。』
曖昧に返事をして話を終わらせる。
大丈夫、上手くいく。私は出来る子だ、テュポーンとは違うのだよ、テュポーンとは。
私は、お父さんが今日の仕事を終えたと行って先に家路に向かうのを見送った。
小屋は出来たてだからまだ飼葉も何も揃っていない、牛を育てる気にしか見えない小屋の
区切りの一区画に無造作に卵を転がして、私も今日は終わりだ、
頑張ったなあ私と自分自身を褒めてあたりを見渡す。
明るさの消えた空は、夕焼けと夕闇が空一面にグラデーションしている。
上ってくる月と沈む太陽が同時に見える幻想的な景色がまた一日の終わりを告げている。
薄く張っていた雲は、風に流されて消えてしまい。空の広さが際立っている。
いままでは採取などで地面ばかり見ていた私には気づきにくい雄大な景色に、
今まで、こんな風に空を見てなかったな。ちょっと勿体ないことをしていたなと後悔しつつも
テュポーンと出会って少し、何かが変わり始めたのではとワクワクする気持ちになるのでした。