未定
俺はエレノハ王国の小さな村で育った。幼い頃に両親を亡くした俺は村の大人にも子供にも腫れ物のように扱われた。しかしそんな俺にも仲のいい二人の幼馴染がいた。一人は村一番のイケメンでありながら凄腕の剣術を身につけている少年カイン。もう一人は、村一番の可愛さを持つ少女エリン。
俺はいつもこの二人と一緒にいた。遊ぶときもご飯を食べるときも寝る時は流石に各々の家のベッドで寝るがそれ以外はずっと彼らのそばで楽しいを過ごした。
だが、そのような時間は長くは続かなかった。この世界では16歳になると成人となり、教会で選定の儀、つまり称号を授かる事になっている。この称号というものは所謂その人間の価値となる。
ジョブには偏りがなければ遺伝的なものもなく、神の気まぐれとまで言われるほどに法則性がない。例外として公爵などの貴族や国王などは継承される。
「カインお前の称号は…なに!?」
俺たちも16歳となり皆と同様教会で選定の儀を受けていた。そして、カインの番となった時突如として神官のお爺さんが声を上げた。
「この者の称号は勇者じゃ!」
「お、俺が勇者?」
神官がそう言った瞬間周りの者たちがざわめき始める。勇者、それは神々によって選ばれた人類最強の存在。
曰く、聖剣を持ったその一振りは岩をも砕くと。曰く、その肉体はいかなる攻撃も貫かさせないと。曰く、その光はいかなる闇も払いこの世に平穏をもたらさんと。
故に最強、故に絶対。人類の幾千もの月日を守ってきたのが勇者と言われている由縁がそれだ。
「さすがだなカイン!」
「俺はお前のような奴が勇者になると思ってたぜ!」
「さすがカイン君!」
「私もカイン君みたいな人が勇者になるって信じてた!」
今まで彼が特別エリンと仲が良いからと嫉妬していた男共や彼がイケメンだからと付き纏っていた女共が揃って褒めちぎっていたが、その表情には下心が丸見えであった。
『ああ、知っているよ…』
そして彼の前にエリンが進み出てきて華やかな笑顔を見せながら「おめでとう」っと言った。
勇者の称号の発現によってざわめいた教会だが、まだ選定の儀の途中ということもあり勇者の称号が発現したことを本部に伝えるのはすべての選定の儀が終了してからということになった。
「では、選定の儀を再開する。次のもの前へ」
そう言われるとエリンが前へ進み出ていく。そう顔は強張っており緊張しているのが丸わかりであった。一歩進むごとにその緊張が増しているのか余計に強張っていく。
しかしながら選定の儀ということもあり誰も彼女に声をかけることができないでいた。ただ、一人を除いて、
「エリン!」
「えっ?カイン?」
「そんな緊張せずに気楽にいこうぜ!今から緊張してたらぶっ倒れちまうぜ。」
「カイン…。うん、わかった♩ありがとうカイン!」
「おうよ」
緊張しているエリンにカインがそう激励を贈ると一瞬困惑したような表情を浮かべるが、それが自分を励ますための言葉だと理解すると頬を紅潮させ、華やかな笑顔でお礼を言った。
その笑顔を見たカインも同様に顔を赤く染め、気恥ずげに返事をした。
『あぁ、知っていたさ。この恋が実らないものだなんて』
そう、俺は主人公ではない。
「なんと!この者の称号は聖女じゃ!」
主人公はカインでヒロインはエリン。そんなことはとっくの昔からわかっていた。それが間違っているとは思わない。むしろ正しいのだろう。
エリンの聖女の称号の発現により、場は先ほどよりもますます喧騒が大きくなっていく。最後に俺が残っているというのに皆まるでもうすでに終わったかのように大騒ぎしている。
「知っていたさ。俺がとるに足らない存在だなんて」
カインという少年はかっこいいだけではなく勇敢で心優しくそして何より彼は決して裏切らないし見捨てない。対して俺はどうだ?臆病で嘘つきで誰も救わない。そんなクソ野郎が一体どうして好かれる?彼が好かれ、そんな彼のそばにいる俺は疎まれる。それはきっと当たり前の結果なのだろう。
そう、この結果は必然だった。それはきっとこの村にいる誰もが理解していたのだろう。しかし、俺はそんな世界を認めない。俺を否定する全てを認めない。俺を拒絶するものを認めない。
俺は未だに騒いでる教会から外に出る。それなりに人数(俺を除いて)がいたからだろう。外はもう暗くなりあたりはもうすでに真っ暗になってしまっていた。
そのくらい中俺は唯一自分に残された亡き両親の家の前に立つ。もう古びていてかなり汚くボロボロだ。しかし、ここがあるから俺はこの村の一員でいられた。こここそが俺がこの村の住人であるという鎖だ。
「…もう、そんなものはいらない。」
俺がそう言いながら指を鳴らすと親の唯一の形見…いや、俺をここに縛り付けていた物がものすごい勢いで燃え上がる。俺は、自分が一体なんの称号を得たのかを知っている。traitorそれこそが俺の手に入れた称号。
「さぁカイン、始めようじゃないか。君の物語を!」
俺は燃え盛る自分の家の前で吠えるように、そして嘆くようにそう言った。。
だが彼は知らない…そんな彼の頰に涙が伝っていたことに。
は〜いどもども知っている人もいるかもしれないけどピエロを投稿しといて絶賛失踪中の弥惠ちゃんだよ〜。
今回はしっかり失踪しないように頑張るからよろしく〜♩
???)あっ。これ失踪するやつだ。
⚠️今回主人公の名前が出ていませんがこれはミスではないのでご安心ください。次回ちゃんと出ますのでそれまでお待ちください。