はかる君とネコミミ
「はあ~、結局兄貴のお願いを拒めずに、例の質量測定装置『はかる君』を付ける羽目になっちまった。モモはさっきから物珍しそうにこちらを見てるけど、結構恥ずかしいんだぜ」
ケンジは恥ずかしそうに自分の頭に乗っているネコミミを触りながら、モモに言った。
まったく誰が作ったんだか知らないけど、これってどう見てもネコミミの形をしたヘッドフォンなんだ。
兄貴が言うには、ネコミミ部分は単なるワンポイントではなくて、5G携帯のアンテナの役割をしてて、このネコミミのおかげで、被験者が何処にいても正確な質量を送ってこれるんだそうだ。
まったく、なんでこんな得体のしれない機械を作ったんだよ。恥ずかしくって、街中なんか歩けないじゃないか。
仕方ないから、兄貴の研究室帰りの途中で帽子屋さんに寄って、大急ぎで適当な大きさのベレー帽を買っちまった。
ヘッドフォンんだけなら、まあ一日中してても特に問題はないけど、流石にネコミミ付きはシャレになんないぞ。
今からコミケに行くわけでもなし、おいおい、学校行くときはどうするんだよ?
こんなの付けたまま学校に行ったら、それこそ笑いのネタにされちまう。どーすべ。
モモは、ベレー帽からチラチラ覗いているピンク色のネコミミが気になって仕方ないみたいだ。
「ねえ―、ケンジー、帽子なんか被ってて暑いでしょう、そろそろ脱いだらどう~?その帽子私が持ってあげるわよ!」
とか言いながら、帽子を脱がそうとして狙っているし。
「まあ、でもごめんなモモ」
「なあにケンジ?」
「せっかく都心に出てきたのに、こんなの被ってたら何処にも行けないもんな。この償いは必ずするからな!」
「あらっ!それはケンジ君からのデートのお誘いと受け取っていいのね?まあ、うれしいわああ。次回はもっとお洒落してこなきゃあ~!」
きゃぴきゃぴ。
(心の声)
しまった、何か俺はやばい事言っちまったかな?
モモって結構学校では人気があるから、変な噂になっちまったらどうしよう?
まあ、あいつも結構喜んでいるみたいだから、良しとしようか。そういえば、最近あいつとはあまり話す時間もなかったしなあ……
プルンプルン、
プルンプルン、
そんな事を考えていると、俺のスマホが振動して着信がある事を伝えてくれた。
ちょうど自宅がある駅に着いて、電車から降りたところだったから留守電になる前に電話に出る事が出来た。
「はい、俺だけど!」
電話の相手は兄貴だった。
「ああ、一つ言い忘れた事があるから伝えておくね」
別に、そんなのメールで一発なのに何でわざわざ電話するんだろうなあ?
「お前に渡したネコミミヘッドフォンだけど、あれは質量測定器の測定データを中継する機械だから学校に行くときにはカバンや手提げにいれておけばいいぞ」
「ネコミミのヘッドフォンなんかして学校に行く前に、変態だあとか言われてつかまってしまったら何にもならないからな」
「ネコミミとは別にもう一つ渡したミサンガもどきの腕輪があったろう?あれが測定装置の本体だから、そちらを身に着けてればいいぞ」
腕輪の名前が「はかる君」で、ネコミミの方は「ネコちゃん」だ。
また兄貴の長い説明が始まった。
……
私の工学部の親友が発明した超精密重力検出器をベースにした試作品なんだ。
一般的に、質量のある物からはその質量に比例して重力波が放出されている。
この間、重力波を検出する重力波天文台で銀河系の超新星から放射された重力波を検出したとか話題になったよね。
彼の検出装置は超微小な重力波を精密に検出し、それを近くにあるネコミミ形の中継器を経由して研究室のモニターに送って来る機能があるんだよね。
地球天文学部の親友に、工学部の彼の発明品の事を話したら彼は腰を抜かしてビックリしてたけどね。
最初に声をかけたのはこちらなので、こちらの要望に則って試作品を作ってくれたんだよ。
多分、これをメーカにお願いしたらタワーマンション買えるぐらいのお金がかかると言っていたっけ。
あっ、言っておくけど、ネコミミは私の趣味じゃなくて工学部の彼の趣味だからね。




