天才同盟…
「それじゃあ、天才同盟の次回集会は次の次の週末か」
タクヤが遠い目をしながら、少し寂しそうに言った。
「あ、今週は『組んず解れつ』ですからね」
ケンイチロウが、寂しそうにしながらケーキを食べているタクヤの顔色を見ながら同意した。
「良いなあー、僕もそれに参加したいなー」
タクヤは心底羨ましそうに、口走った。
「タクヤさん、今変な事考えてるでしょう? タクヤさんはバツイチなんだから、女子高校生や大学院生女子の会合には、参加しちゃあダメですよ!」
ハナコは、タクヤがケーキを頬張りながら彼らの会合が心底から羨ましそうに言っているのを見て、牽制の意味を込めて少し強い口調で言い放つ。
「そんな事言わないでよハナコさん。僕だってまだまだ青春を謳歌したいよ」
タクヤは、捨てられた子犬が拾って欲しそうにするように、少し涙目になってハナコの方を見ている。
「イエ、タクヤさんの青春は終わっているのです! そろそろ現実を見て下さい」
可愛い子犬なら揺れてしまうだろう乙女心も、さすがにケーキを頬張っているおっさんの涙目ではピクリともしない。
「もーハナコさんたら厳しいんだから。ケーキは美味しいのになぁ」
ケーキの最後の一口を食べてから、フォークについたクリームも舐めている中年の仕草丸出しのタクヤ。
「タクヤさん、駄目ですよおだてても。何も出ませんからね」
綺麗になったケーキ皿を中ば強引にタクヤの舐めていたフォークと一緒に取り上げるハナコ。
「仕方ないなあ、この美味しいケーキと紅茶を飲んだら、気の乗らないデータ整理をケンちゃんと二人でやるか……」
ケーキ皿は取り上げられても紅茶カップを必死に庇うタクヤと空のカップも取り上げようと虎視眈々と狙いをつけるハナコ。
「ハイハイ、わかりました。後片付けが終わったら私もデータ整理を手伝いますわよ。三人いればはかどるでしょう? 幸い学会報告用の資料はひと段落ついてるから今日は時間もあるし」
遂に諦めてタクヤの軍門に降るハナコ。
「うわぁー、さすがハナコさん。なんか後光がさしている様に見える。まるで女神様か観音様か…」
庇っていた紅茶カップから手を離して、助教という立場を捨てるかのように、ハナコに向かって手を合わせて祈る仕草をするタクヤ。
「タクヤさん、観音様はチョットおじさんポイントですよ。ハナコさんに感謝するのなら女神様だけで十分ですよね?」
タクヤがハナコに向かって祈っている横で、ケンイチロウがケーキの最後の一欠片を口に入れながら言った。
「よーし!なんか元気出てきたぞ。ヤッパリハナコさんのケーキは強力だよ。凡人同盟改め天才同盟の作業を頑張るか」
タクヤの何処にあるか分からないやる気スイッチがヤット入ったようだ。
それからしばらくして、三人は被験者が付けている『測る君』から送られてくるデータの解析を黙々と続けることになった。




