凡人同盟?
「タクヤさんだって、医学博士じゃあ無いですか…」
「それは別に医学部に行けば、そうなるだけだからさ。イジイジ」
「そんなにすねないで下さいよー」
「医学部出のエリートな医者だったんでしょ? タクヤさんも、既にその時点で凡人じゃ無いですよ! 勉強しても医学部に入れない高校生なんかウジャウジャいるんですよ? 受験生のピラミッドの頂点に君臨しているんですからね、医学部受験生は」
「ウーン、でもなあー。いまいち実感ないんだよな……成績はいつも真ん中編だったしなー」
「そんな見えすいた嘘はダメですよ。クラスの平均的な点数しか取れない受験生は、医学部には普通入れません。断言できます」
「だって……ケンちゃんなら僕が嘘をついてない事わかるでしょう……?」
「タクヤさんが嘘をついてないとしても……平均点しか取れないのに医学部に入れる学校なんて日本に数校しかないですよ……。え! まさかタクヤさんて出身は関西でしたっけ!」
「そうだよ、関西弁は出ないけどね」
「まさか……あの、超有名な名門校ですか。神戸の酒屋の姉弟のために作られた、中高一貫の私立……卒業生は東大か医学部しか行かないという、伝説の超名門校……」
「うん、ウチから一番近い学校なんだ。だからモノは試しで受けたら受かっちゃってさ。でも、あの学校の生徒は小学生低学年の時から塾に通って入ってくるから、みんな頭良いんだよ。もう、僕なんか凡人だったよ」
「タクヤさん、その話をあの高校生三人の前でして下さいね。三人ともタクヤさんを見る目が変わりますから。タクヤさんがそこで、『僕も凡人なんだ』って言ったら、100%総スカンを食いますよ。僕が保証しますよ」
「そうよね、ケンイチロウ君。そういう人は、凡人同盟には入れませんよ」
ハナコさんは、焼き立てのケーキと引き立てのコーヒーを二人の前に置きながら、チャチャを入れて来た。
「取り敢えず、フォロワー30万人の人が作ったケーキを食べませんか? タクヤさん、ケンイチロウ君」
「ありがとう、ハナコさん。僕はフォロワーが100人だろうと君のケーキは美味しいと思うからね」
「バツイチのタクヤさんに褒められてもねえ?、ケンイチロウ君……」
「ハナコさん、そこで私に振るんですか? ここで一言上手いことまとめられるほど、私はボキャブラリーが豊富なわけじゃあないですからね。人間なんて、みんなある意味凡人で、ある意味天才だと思ってますから、私は……」
「おー、人の心が分かるケンちゃんが言うと、重みがあるねえ」
「タクヤさん、そこで冷やかさないでくださいよ。私は人の心が読み取れる超能力者じゃあなくて、単純に今までの行動からその人の心の中を推理しているだけです。今風な言葉で言えばプロファイリングですよ。だから、初対面の人間の気持ちは流石に分からないです。ある程度会話したり、接している事でその人の行動から、その人の内面が見えて来るんです」
「えー!もしかしてケンイチロウ君、私の気持ちもわかっちゃうの?」
「ほらー、そういう風に思われるから、今まで黙って来たんですよ。自分の気持ちがばれてたら、誰だってイヤでしょう? 私の今までの経験から言うと、凡人なんてこの世の中にはいないんです。みんな天才ですよ」
「じゃあ、凡人同盟改め、天才同盟、で良いんじゃない?」
「天才同盟か、なんか変な感じだなアー。まああ、ハナコさんの美味しいケーキに免じてそれでいくか……」




