組んず解れつ
学校の放課後の検討会で、新しい事実が発見された事は、すぐにタクヤ先生のいる研究室にも連絡された。
ユミさんの作成した特別プログラム付きだ。
「うーん、確かにこれを見ると、事前に向こうの世界からの干渉が起こっていると考えていいなあ。現時点で、はかる君がモニターしている被験者全員をチェックしてみようか。そうすれば、第二のケンジ君候補を見つけられるかもしれないからね」
タクヤは、画面上の波形を見ながら独り言をいう。
「これは、ユミちゃんにも週末研究室で作業して欲しいなあ…」
「あ、でも今週末は、モモちゃんやユカさんと『組んず解れつ』の作業があるのでダメです、ってさっき連絡有りましたよ」
ケンイチロウが、忙しそうにキーボードに向かって作業をしながら、タクヤに言った。
「何だよ、その『組んず解れつ』って? また、ユカさんに何か吹き込まれたのか?」
タクヤは、ケンイチロウに向かって声をかける。
「彼女、僕達よりチョット発想が斜め上だからなあ」
タクヤは、両手を頭の後ろに組んで、椅子を思いっきり倒す。
「アハハは、まあ最近の女子高生を少しパワーアップした感じですよね」
ケンイチロウは、あいかわらずキーボードを叩き続ける。
「だって、ケンジ君やモモちゃんは、僕達の冗談に上手くハマってくれてたけど、ユカさんは、その上を行っちゃうから、僕達も御しきれないんだもの」
タクヤは、少し悲しそうに独り言をいう。
「チョット、危なっかしさがあるよなー」
遠い目をしながら、タクヤは続けて言う。
「タクヤさんの年齢だと、そういうのは小悪魔とか言うんじゃないですか?」
「まあねえ、そうなんだけどさ、結局こっちが振り回されて終わっちゃうんだよね。疲れるだけさ」
「へー、そう言うもんですかね」
「大丈夫、ケンちゃんも僕の歳になれば嫌でも分かるようになるからさ。あの時タクヤが言ってた事はこれだったのかー、ってね」
「まあ人間って色々有りますからね」
「お!ケンちゃん、何?その覚めた態度。そりゃあ君は相手の気持ちが読めるスーパーマンだけどさ、普通はそんな気持ちなんか考えている余裕はないんだよね」
「タクヤさん、何、ケンイチロウ君に喧嘩売ってるんですか?そんな事する暇があったら、論文書いてくださいよー。いつも、私に押し付けるんだから、もうッ」
助手のハナコさんが、ケーキと紅茶を持ってきながら、タクヤさんに文句を言う。
「ハイハイ、分かったよ。最近、女性陣のパワーが増しているのは、気のせいかなー?」
「今日は、パワフル女子軍団がいないから静かで良いなあー」
「何言ってるんですか? 女子軍団が居ようが居ないが、いつもサボってるじゃないですか」
ハナコさんはテーブルにタクヤとケンイチロウのテーブルにケーキと紅茶をおく。
「ハナコさんも最近厳しいなあ。なんか、ユカさんに刺激でも受けたのかな」
「タクヤさんばかり楽しそうなのを見て、私も少し暴れたくなっただけですよ」
ハナコさん、タクヤさんに向かって腕をグルグル回しながら答える。
「研究者には女性が少ないから、どうしても控え目に振る舞っちゃいましたけどね。ユカさんを見てると、なんかどうでも良いかな?と言う感じがしたんです」
今度は手をヒラヒラさせながら、喋り続ける。
「お菓子作りの趣味と一緒ですよね。美味しくて、見栄えが良ければ、結果は付いてくるものですよね」
「え? 何どう言う事?」
「ハナコさんのお菓子は、他の有名ケーキ屋さんを凌駕しますからね。僕はこの間ハナコさんのSNSを見せてもらいましたけど、凄いですよタクヤさん。だって、《ハナコ洋菓子店》のフォロワー数が30万人ですよ。知ってました?」
「え!マジ? 3000人じゃなくて、30万人!」
タクヤさん、急に神妙な面持ちでハナコさんとその手を交互に見る。
「そうですよー。うちの研究室の女子は皆んな優秀なんです。ユカちゃんは、この間のピアノコンクールで全国3位だし。知ってますかユカちゃんのピアノのテクニック凄いですよ。超絶技巧協奏曲なんか聴いてて震えちゃいますから」
ケンイチロウは、両手でピアノを弾く真似をしながらタクヤさんに語りかける。
「ヘイヘイ、それに比べて男子はねえ…あ! ケンちゃんは全国1位だっけ」
「タクヤさん、やめて下さいよー、その話は」
「こうなったら、ケンジ君やモモちゃんと三人で凡人同盟でも作ろうかな…」




