事前準備、その3
「ふーん、ケンジ君の状態が悪い時には、ヤッパリ波形が歪んでますよね」
ユカが画面の何箇所かを、画面に指紋が残らないように画面に触らずに指でさしながら言った。
「そうねえ。そして、それ以前と最近の波形には歪みがないわね」
ユミ先生は、マウスをぐりぐり動かして、画面上に表れているカーソルを波形に沿ってぎゅいぎゅいと動かす。
「一応、波形が一定以上歪むと、その部分をマーカで表示する様に追加のプログラムを組み込んでみたけど」
ユミ先生は、マルチモニターの中の別の画面に表示されているプログラムを確認しながら呟く。
「以前のケンジ君の波形には、どこも歪みがないわね。フィルターをかけた影響で滑らかに見えるけど、綺麗なものね」
ユミ先生が、キーボードを使って過去の波形をどんどんと出しながら、自分が押している馬がダービーの最終コーナーを先頭で回って来た時ぐらい凄い勢いで画面を見続ける。
「……と言う事は、心を強制的に交換される前の事前準備として何らかの外部的な作用を受けていたと言う事かもね」
ユミ先生は、ケンジ達の方に振り返り、いまの話をまとめようとする。
「その影響で、彼の心と体のリンク状態が歪んだ状態になった。逆にその影響をケンジ君が受けてしまった。そう言うことかしら?」
「そうですね、そう考えると筋が通りますね。この件は、早速チーム・タクヤ内で共有すべき事です。今晩早速ケンイチロウさんのマンションを強襲して……」
そう言いながら、ユカは口元のヨダレをピンクのハンカチをスカートから出してそっと拭く。
「だからー、ユカちゃんは直ぐにソッチに話を持っていくんだもの」
「イヤイヤ、そんなに褒めないで下さいよ、ユミ先生」
「褒めてないわよ、呆れているのよ私は。ユカちゃん」
「だってユミ先生だって、女子高生の頃は毎晩一人で火照ってしまう体をどうしようか? と悶々としていたでしょう?」
ユカは、ユミ先生の目を覗き込むようにしながら、ささやく。
「私は女子高生の時はピアノレッスンの日々で、悶々としている時間はありませんでしたよ」
ユミ先生は、両の手のひらをあげて肩をすぼめる。
「ああ、そうですね。ユミ先生の実力はそこで磨かれたのですね。それじゃあ男子高校生と乳繰り合ってる時間は無いですよね」
「ユミちゃん、貴方本当はおじさんの心を持った女子高生なんじゃ無い? どうしてそんな『乳繰り合ってる』なんて言葉知ってるの?」
ユミ先生は、なかば驚きながら反応する。
「あのー、ユミ先生もユカも、ここは学校なんですからね。落ち着いてください。ユカもそんなに悶々としているのなら、週末にワタシの家で寝ないで大貧民してあげるから、それでガス抜きしましょう」
モモは、ユミ先生とユカを落ち着かせようと、二人の顔を相互にみながら話す。
「さすがモモ! ワタシとお揃いのセクシーパンツ買っただけあるわね。それじゃあ、お楽しみは週末に取っておいてと……」
「ああ、そうそう。ケンジ君も来るからね。ユカ」
「えー、そんなー。二人じゃ飽き足らず、三人で酒池肉林するの?」
「違うわよ、二人だと私が危ないから、ケンジ君にも参戦してもらうの」
「あら、それじゃあ私も参戦しちゃおうかな。お菓子も持ってくけど良いかな?」
ユミ先生も乗ってきた。
「なんだー、なんかそこまで大貧民の輪が広がっちゃうと、二人だけのお楽しみが出来ないじゃ無い」
ユカが膨れながら、悔しそうに言う。
「だって、ユカと二人っきりだと貞操を失いそうだもんね」
「何言ってんの、大丈夫よ私もまだ処女だから。二人でムフムフしましょうよ。ねえー、モモ」
「もうコレで終わりよ! ユカちゃん。貴方は頭が良いのだから、もう少し自分を大切にしなさいな。女子高生の看板は今しか無いんだからね。もう少し大切にしなきゃあダメよ」
「てへ、ユミ先生に怒られてしまいました。でもね、ユミ先生、ワタシは別に不倫をしたいとか、身体を売ろうとかしている訳ではないのよ。女友達ともう少し肉体的に深い仲になりたいだけなの。
それもダメなの?」
「ユカちゃんは良くても、モモちゃんはヤダって言っているのなら、その話は終わりでしょう?
高校生の二人が合意の上で何かをするのなら、ワタシとしては止められないけどね」
「そうなのよね、モモが拒否しているからこれ以上は進めないのよねー。うーん、仕方ない、今回はコレで手を打つか」
「分かりました、それでは週末四人で『組んず解れつ』で行きましょうか」
そう言って、ユミ先生は、紅茶のカップをかたずけ始めた。




