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あなたは、だあれ?  作者: ぬまちゃん
次への備え
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生物室で

「もー、せっかくモモを落とせるところだったのに。ユミ先生ったら……」


 ユカが少しつまらなさそうな顔をする。


「まあまあ、早くいらっしゃい。廊下で騒いでると、他の生徒達に見つかっちゃうからね」


 ガチャ、ガチャ。生物室の扉を閉めると、ユミ先生は内側から鍵をかける。


「これで、邪魔者は来ないかな」

で、話って何?


 ユミ先生は興味深々にユミとモモに尋ねる。


「実はですね。並行世界の人達がやって来る兆候を知ることが出来るかも? と言う話です」


「えー、本当? それが分かったら、すごい事じゃない!」


「実はケンジ君が入れ替わる少し前から、ケンジ君の状態が変だったという話をモモから聞いたのです。ケンジ君の波形はずいぶん前からモニターしていてその記録は残っているはずですよね?」


 ユカは、心のリンク状態をモニターするパソコンが置いてある、生物室の奥の部屋を指さす。


「ならば、モモが気になり始めた時期から並行世界の人に入れ替わる時を含めた前後の波形を調べてみたらどうかな?と思ったんです。多分、向こうの人達だって行き当たりばったりで、心の交換を行っているわけではないじゃないですか。であれば、絶対に何回か事前のアクセスがあっても良いと思うんですよね」


 ユカは、身振り手振りを混じらせながら、ユカのアイディアをユミ先生に話す。


「だから、ケンジ君の波形を再調査して見慣れないパターンを見つけるのが良いんじゃ無いでしょうか?」


「まあ、ユカちゃん、凄いわー。そうよね、事前に入れ替わる事が分かれば、十分な対策を打てるもんね。チョット待ってね? 今データを大学のサーバーからダウンロードするから」


 ユミ先生は、パソコンの前に座るとその体型からは想像出来ないほどの素早さでキーボードを打ち始めた。

 ユミ先生の指は、まるで有名な演奏者がピアノを弾いているように滑らかで無駄のない動きだった。


 カチャ、カチャ

 カチャ、カチャ


 普通は、マウスを使ってパソコンの画面上のアイコンを動かすのだけれど、ユミ先生はほとんどマウスを使わなかった。

 滑らかな指の動きだけで、必要な操作が全て完了して行くのは、「ショートカット」というパソコンの技を知らない人から見ると魔法のようだ。

 ショートカットとは、予め決められたキーの組み合わせで、マウスで実行する機能と同じ事が出来る方法だ。マウスを使うと操作が雑になるし、作業も無駄な動作が増えて遅い、というのがパソコン上級者の言い分だ。


 ユミ先生は、まさにその上級者の仲間なのだろう。ユミやモモ、ケンジがアレよあれよと見ている間に、必要なデータを全てダウンロード出来たようだった。

 ユミ先生は、側にある紅茶のカップをとって紅茶を少しだけすすった。


 それから、おもむろに後ろを振り返って、モモに尋ねた。


「モモちゃん、ケンジ君が調子悪くなったのはいつ頃だか覚えてる?」


「ハイ、私ケンジの状態観察するために、ノートを付けているのでそれを見れば分かると思います」

 なぜか、モモは少し恥ずかしそうに言った。


 ユカはそれを聞いて、ちょっとだけショックを受けた。


「モモー、あなたそんなにケンジ君の事が好きなのね。私が入る隙は無いのかしら?」


 ユミは、少しショックを受けたように、モモに問いかける。


「ユカがそう言うの分かってたから、恥ずかしくて言いたく無いけど、ケンジ君のためだから仕方ないわ」


 モモが、顔を赤くしながら答える。二人の会話を聞いているケンジは、あえて聞こえないふりをした。


「えーと、確か×月○日です。この日から、ケンジ君時々ボーッとする事が多かったの」


 モモは日誌らしいノートを見ながら答える。ノートには細かい文字で何やらびっしりと文字が並んでいる。


「ああ、あの日の事か……。なんか風邪でも引いたのかと思ってたんだよね。そうしたらあんな事件があって、すっかり忘れてたよ」


 ケンジは、すこしとぼけた調子で答える。


「ケンジ君、アンタがそんな事じゃ、ユカをまかせられないわ。ユカの身柄は私が預かるから……」


 ユカがケンジに向かって少し怒ったように言う。


「ホラホラ、ここで痴話喧嘩はしないでね。三人ともチーム・タクヤの貴重なメンバーなんでしょ? じゃあ、チョット待ってねその日のデータを画面に出すからね」


 カチャ、カチャ


「えーと、時間で言うと何時ごろかな?」


「確かお昼休みが終わる少し前だったから、13時の少し前です」


「えー! アンタ達、昼休みも二人でラブラブしてたの! もうこうなったら実力行使しか無いわね」


 ユカがキレ気味に叫んだ。


「おー、あのツンデレのユカが冷静さを失っている姿を初めて見たぞ」


「ケンジー、そんな事言ってないで何とかしてよ。私はユカとお友達でいたいだけなんだからさー」


「モモちゃんー、お友達以上の関係になってみたいでしょ、私と」


「ゴメンねユカ、今はおふざけに付き合ってあげられないの。あの日は、お昼休みにケンジ君のところに先生に頼まれた資料を届けに行ったから覚えていたのよ」


「ああ、タクヤ先生のお友達の生物の先生から資料を受け取った時か!」


「何だー、良かった。もう、モモとケンジ君が学校で昼休みにラブラブしてたかと思うと、パンティがグシャグシャになるところだったわ」

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