学校での会話
「「おはようございます! ユミ先生」」
モモとユカが、同時に朝の挨拶をする。
「あ! おはようございます。モモちゃんとユカちゃん」
教育実習生の名目で学校に潜り込んでいる、ユミが挨拶を返す。
「ユミ先生、学校で『ちゃん』はよろしく無いのでは?」
ユカが、笑いながら、突っ込んできた。
「あらそうかしら? 生徒を親しみを込めて呼ぶ、と言う事よね」
ユミは、ユカの突っ込みを笑いながらあっさりと返す。
「そうよ、ユカ。実習生はそのくらいの方が生徒に受けるんじゃないかしら」
ふーん、生徒との垣根は低くすべし、と言う事ね。メモメモ、と。
「あら、ユカちゃん、何メモしてるの?」
ユカがメモ帳に書き込んでいる姿をみて、ユミは不思議そうに質問する。
「これは、ユカの秘密メモです。色々と書き込んであるので、誰にもお見せ出来ませんよ。ウフフ」
そう言いながら、あわててメモ帳をしまうユカ。
「えー見たいなあ、そうゆう風に言われると」。
チラチラと覗き見をするふりをしながら、にこやかに笑うユミ。
「ダメですよ、ユミ先生に言うとみんなに広まっちゃいますから」
口をすぼめて、ちょっとだけ困ったようなそぶりを見せるユミ。
「あ、そうだユミ先生、実は例の件で思いついた事があるんです。放課後に生物室に行っても良いですか?」
ユカは、思い出したようにユミと約束をかわす。
「良いわよ、ユカちゃん。モモちゃんも一緒かな?」
モモの方を見ながら、ユミが聞き返す。
「ハイ、多分私も一緒です」
モモも声を出す。
「良いわねー女子高生って。おトイレも同じかしら?」
会話の流れで連れトイレの話をするユミ。
「イエイエ、トイレは別です……」
ユカは、両手を振りながら、そこは強調して否定する。
「個人の体調まで合わせる必要は無いと、私は考えてますから。何もオシッコしたく無いのにトイレまで付き合わせちゃダメでしょう?」
「そ、そうよね。さすが、ユカちゃんね。並の女子高生では無いわ」
ユミは、感心して言った。
「それじゃあ、放課後に伺いますね」
そう言いながら、ユカとモモとユミ先生の三人はそれぞれの教室の前で別れた。
***
そして、放課後。ケンジ君とユカちゃんは生物室の前でモモが来るのを待っていた。
「ごめーん、待った?」
そこへ、モモが息を切らせて走って来た。
「モモちゃん、廊下は走っちゃダメダメよ!」
ユカが人差し指を左右に小さく振りながら、少し可愛く言った。全然注意になってない。
「えへへ。チョット急な用事で捕まっちゃったの」
頭に手をあてて、テヘ笑いをして遅刻をごまかす、モモ。
「またー、そんな事やってるとケンジ君は私がもらうわよ?」
腕を組んで、すこし怒ったようにモモに告げるユカ。でも、目は笑っていた。
「えー、俺は物じゃないぜ!」
ケンジが、驚いたように、ユカとモモの二人を交互に見る。
「何言ってんの。私達からしたら物よ。でも、大事な、大事な、物なのよ」
ユカとモモは、ふたりそろってケンジに意見する。
「何だそれ? よく分からないなあ」
「ケンジ君の意思は関係ない、と言うことよ。君がどう思うかは、私達の闘いには一切関係ないと言うこと。全く考慮されないと言えば良いかな」
「恋の戦いの勝者に贈られる優勝カップには、意思は不要なの!」
「えー! ユカってば、私を優先してくれるって言ってたじゃない」
「えー、モモ、それ何の話し?」
ケンジは興味津々でモモに聞いてくる。
「あ、そそれは、……えーと……。そうそう、今度ユカと行くチケットの話しよ。私を優先して予約するって言う事……。ね?そうよね、ユカ」
「モモー、もう良い加減諦めて、ケンジ君の事大好き! って言っちゃえば? そうしないなら、私がもらい受けるわよ」
「何だそれ、もらい受けるって? やっぱり俺は物かい……」
「女子の会話に口を挟む男子なんて、最低って言われちゃうわよ。私はねえ、モモの事が大好きなのよ。そのモモが煮え切らないから、ますますイライラしちゃうの!」
ユカが、イライラした調子でモモに詰め寄る。
「告白して、ダメならそれは仕方ないの。私が夜通しベッドの上で慰めてあげるから。二人で一緒にお風呂に入って、背中もお胸も洗いっこして。それからパジャマに着替えて、二人で夜通し女子トークしましょう! そうすれば、嫌なことなんかスッパリと忘れられるわよ」
自分で話ながら少し目元がうっとりしているユカ。
「あのー、なんかモモがフラれる方向で話が進んでいませんか?」
ケンジが、二人の会話に入ろうとする。
「良いの、ケンジ君は。話に入ってこないで、もーッ」
本気で怒っているような顔をするユカ。でもなぜか顔は上気しているようでホホが赤い。
「ねえねえ、生物室の前で痴話喧嘩してちゃダメよ。早くお入りなさい。美味しいケーキとあったかーい紅茶があるわよ!」
ユミが生物教室のトビラを開けて、三人に声をかける。




