束の間の平和
「あーあ、つまんないなぁ。あと少しでケンジ君のお兄さんを落とせたのに!」
ユカは、そう言いながらミニスカートのすそを両手をブラブラさせながら歩く。
「ユカー、そんな事を街中で大きな声で叫ばなくても良いんじゃない?」
ユカに向かってたしなめるように、小声でしゃべる。
「大丈夫よ、それ以上の個人情報は口にしないから。周りの人には理解できないはずよ」
モモに向かって、人差し指を左右に振りながら答える。
「もー。ユカピーって、いつもそうなんだから」
口をすぼめて、ほほをふくらませるモモ。
「ウフフ。モモピーだって、叫んで良いのよ。ケンジ君としたいー、とか」
モモに向かって軽くウインクしながら囁く。
「え! やめてよ、恥ずかしいよ。ユカピー」
「何赤くなってるの? モモピー。私は別にモモピーとケンジ君がエッチな事をしたい、と言ってる訳じゃあ無いわよ」
ユカは、真面目な顔をして、右手の指を一つ一つおりながら、モモに向かって話す。
「例えば、一緒に買い物がしたいとか。勉強がしたいとか。色々あるでしょ? 結局は受け取る側のイメージの問題だもの。だから、あまり気にしないで発言しちゃうのよ」
そこで、一瞬間をあけて、悲しそうな顔をしながら話を続ける。
「こちらが、どう考えて発言しても、受け取る側がどう思うかなんて結局わからないんだもの」
「うーん。ユカピーっていつも言い方が難しいんだよね。結局、何を言ったって人は勝手に解釈しちゃうから、あんまり気にするな、という事かな?」
人差し指を口元にもってきて、かわいい仕草をしながら、ユカに答える。
「ピング、ポーン。正解! モモピーってさ、感覚的に理解するタイプなんだと思うわ」
ユカは、テレビのクイズ番組で使われる押しボタンを押すしぐさをしながら、関心したように続ける。
「私、そういうモモピーの事だーい好き。モモピーとなら、百合の付き合いしても良いわよ。あ! ダメか。モモピーにはケンジ君がいるものね。早くケンジ君と分かれて、私と百合になりましょう」
「またー。ユカピーだって、ケンイチロウさん狙ってるって言ってたじゃない。それなのに、私にも手を出すの?」
「うーん、難しい問題だよね」
ユカは右腕の人差し指をおでこに当てて、目を閉じて考えるポーズをとる。
「私は、好きになった人とは徹底的に好きになりたいタイプなんだと思う。ホントは、百合の気持ちとかは分からないから、モモピーと百合になりたいと思っているけど、実はそうではないかもしれないわ」
ユカはモモの目を覗き込んで、意味ありげにほほえむ。
「単純に、一緒に買い物したり、パンツを見せ合うだけで満足なのかもしれない。自分でも自分の気持ちを分析出来ないのよね」
ユカは、両手を背中側で結んで、首を斜め30度ぐらいに傾ける。
「やはり、人の心は難しいわよね。でもさ、その心と体のリンク状態を測定する機械なんて、すごい物を発明してるんだもの。その研究に、私達もかかわれると思うと、少し興奮しちゃうわ」
結んでいた手をほどいて、両手を上に上げて空を見上げている、ユミ。
「でもさ、ユカピー。その、向こうの人たちは、いきなりやって来て心が切り替わっちゃうんだよ。
いきなりそんな事されたら、こっちも怖いじゃん」
モモは、両肩を手で押さえて、恐怖心を表す。
「モモピーさ。心を乗っ取られるんじゃなくて、心を交換されられるんでしょう? と言う事は、うまくすれば向こうの世界の事を知るチャンスでもあるんでしょ?」
ユカは、モモの方に向きながら、諭すように言う。
「心は脳細胞と違って記憶容量は少ないかもしれないけど、夢からさめて直ぐにメモすればいいんじゃない? そうすれば、向こうの情報も得られるわけだからさ、お互いさまではあるよね」
左手に、右手で持ってペンで何かを書き込んでいるふりをする。
「うーん、そういう考え方もあるんだ。でもさ、ユカピー、本人もビックリだけど、周りはもっとビックリだよ」
モモはケンジの事を思い出しながら会話を続ける。
「そうだよね、モモピー。一番のキモは、突然切り替わる事でしょう? 予め10分後とか、明日の午後3時とか指定してくれれば心の準備とか出来るでしょ? そうすれば、もう少し心にゆとりが生まれるものね。ケンジ君の時は、前兆みたいな事は無かったの?」
「うーん、そうねえ? あ!そうか、アレかな?」
モモが少し考えた後で、意味しんな顔をした。




