会議の結論
―― 最初にC案 ――。
確かに、数ヶ月程度冷却期間を設けるのは有効だと思います。ただし、今の我々の状況を考えると立ち止まる事は許されないはずです。並行世界の向こう側の事ではありません。我々自身が無気力に落ち込んでしまう危険性をはらんでいるからです。
数ヶ月間の予定が、数年間になり、最後は探検対象外になる。その危険性を我々自身否定出来ないところに、我々の種としての問題があるのです。
だからこそ、探検を延期するべきでは無い。
―― 次にA案 ――。
我々には時間が無い。だからこそ、自分たちの理由で選り好み出来る余裕は無いはずです。いつか滅んでしまうから、もうこれ以上続ける必要は無い?
滅びる確率が高いA系列の並行世界なのに、A305が未だにしぶとく破滅しないのは何故ですか? 今までの報告では、破滅の道を巧みに回避しているように見えています。これには、我々が考えが及ばない様な、何か秘密があるのでは無いでしょうか?
我々はその秘密を見つけ出すまでは、諦めず、しぶとく、探検するしかないのでは無いでしょうか?
このプロジェクトの目的はそれにあるはずなのですから。だからこそ、並行世界A305から撤退してはいけないのです。
以上、これは私のそれぞれの案に対する意見です。私の意見に反対される方がいるのであれば、ぜひ反対理由を挙げて下さい。誰が発言したかの秘密は完璧に保持されます。
……
誰も意見はないのですか?
……
それでは私が提案しよう。
―― これはD案としてもらいたい ――。
チーフのおっしゃりたい事はよく分かった。今の我々の世界が瀕死の状態である事は否定しない。それを回避する手段が世界規模で行なわれている事も認識している。
このプロジェクトは、その破滅回避プロジェクトの中の一つである事もだ。このプロジェクトで得られた手法が、我々の世界で通用するかも含めて、とにかくどんな手段でも良いから情報を収集する、それがこのプロジェクトの目的である事も十分に理解している。
そこで、A305の探索はこれからも継続して行うことには異論はない。しかし、向こう側の状況が変わったのも事実だ。
相手を怒らせる、怒らせないと言った感情論とは異なり、A305の人間達は、我々とは異なる考え方をしている。
戦いに秀でた世界の人間である事を考えれば直ぐにわかるはずだ。彼らから見たら、我々は侵略者そのものでは無いか?
今まで密かに活動して、バレてもしばらくはシラを切り通した訳だ。これでは、向こうの人間の思考としては、侵略者による事前調査にしか見えない。
このまま、再調査を続けても、今回のチームに鉢合わせする可能性が高いだろう。それならば、いっその事我々の状況を正直に説明して正しい認識を持ってもらい、我々の協力者になってもらうのが良いのでは無いか?
いくら戦いに明け暮れた世界の人間でも、話し合いによる相互認識の手段を放棄している訳ではあるまい。
戦うだけではなく、話し合う事も出来たから、まだ破滅せずに生き残れているのではないだろうか。我々としては、そこに活路を見出せると思うのだ。
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