モモとユカ
「ケンジ、最近、なんかバタバタしてるわよね」
「まあ、あんな事があったからな。モモ」
今日は、タクヤさんの取り調べが無いので、生物室で、久しぶりに、二人でまったりした昼休みの時間を過ごしていた。普段は、生物室でケンジ君とモモちゃんの波形をモニターしているユミさんも、研究室の用事があるとの事で、お休みだった。
「また、何か怪しい事を考えているんじゃ無いか? あそこの研究室……」
「まさかー、私達を守るために、色々と考えてくれてるんじゃない?」
「最近は、キヨシ先生のお情けで、ずーっと生物室に入り浸ってるけど、流石にしょっちゅうだと怪しまれるよな。俺のクラスのユカなんか、俺がモモと一緒に廊下を歩いていると、スゲー顔で睨んでくるんだぜ」
「うーん、そうね。最近は忙しくて、ユカちゃんと遊んでないから、彼女もストレス溜まってるんじゃない? だって、ケンジなんかお兄さんに合わせるって約束したのに、そのままでしょう? そろそろ、二人でお兄さんの研究室に行って来たら?」
「イヤ、ユカは俺が好きなんじゃなくて、モモが好きなんだよ。だから、行くとしても、モモと俺とユカの三人で行くしかないと思うよ」
「じゃあケンジ。今度三人で、お兄さんの研究室に行きましょうよ。今までのお礼も兼ねて、久しぶりに研究室に行ってみたいわ」
「分かったよ、モモ。それじゃあ、兄貴に連絡しとくから、ユカにはモモから伝えてやってくれよ」
「えー? ケンジ君がユカちゃんに伝えるのが筋でしょ、この場合。間に私が入ったら、ますますユカが勘ぐったりしないかしら?」
「え? 何を勘ぐるって?」
「え? え?って何よ。だから……、私とケンジが付き合っているって事よ!」
「付き合ってる」の言葉を行った時に、チョットだけモモの耳たぶが赤くなるのを、ケンジは見逃さなかった。
ガラガラ!
突然、生物室の扉が勢いよく開いた。なんとそこには、たった今噂をしていたユカが立っていた。
「モモとケンジ君、やっと見つけたわよ! 貴方達、最近コソコソしていると思ったら、こんな所で密会を楽しんでいたのね? もうー、イヤらしいんだから。どうせイチャつくのなら、学校の外でやりなさいよ! キスでも、セックスでも、外ですれば良いのよ。学校なんかでするから、イヤらしく感じるんだから」
ユカの目が怒りに燃えている。しかし、「セックス」といった時に、一瞬だけ間が空いた。それにホホが少し赤らんだ気がしたが、それが怒りによるものなのか、恥じらいによるものなのか、ケンジには判断出来なかった。
「オイオイ。ユカ君、セックスとか、そんなの乙女が言う言葉じゃないぞ……」
となりの生物準備室から、生物の先生であるキヨシ先生が書類の束を手に持って現れた。
「モモ君と、ケンジ君には、ここしばらくは僕の用事をお願いしていたんだよ。しばらく前から、大学の研究の一環として配った例の指輪。あれは、モモ君とケンジ君の二人のクラスにしか提供されていないだろう? だから、そのデータ解析のために、ここにあるパソコンにデータ入力を頼んでいたんだ。ユカ君も、彼らと一緒にデータ入力を手伝ってくれるかい?」
「イ、イエ。私、パソコンは苦手ですから……、それに……。疑ってごめんなさい。すいませんでした。失礼します!」
モモとケンジに対して、セックスしていると言った事に対する、後ろめたさと恥ずかしさからか、ユカは顔を真っ赤にして、凄い勢いで生物教室から出て行った。ユカが遠くに走り去ったのを確認してから、キヨシ先生は教室の扉をユックリと閉めた。
「廊下は走っちゃいけないんだがな……、ユカ君も可愛い所あるじゃないか。顔が真っ赤だったぞ。でもまあ、バレずに済んで良かった。君たちには、迷惑な話だよなあー。変な誤解を招いちゃうし。タクヤには、今後は大学の方でヒアリングする様に言っておくよ。おお、そろそろ昼休みも終わりだから、もう教室に戻りなさい。午後の授業が始まるぞ……」




