魂の重さは21グラム
「よう、今日も元気そうだね。若いっていいなあー。肌もつやつやしてるし」
兄貴は俺を見つけると嬉しそうに話しかけてきた。
「おや、今日はモモちゃんも一緒かい?モモちゃんも艶々……っといけない、女性にそんな言葉をかけたらセクハラだよね」
幼なじみのモモは兄貴も良く知ってるから軽い冗談で笑いを取ろうとする。でもそれはオヤジギャグだぜ兄貴。
「入れたてのコーヒーでも飲むかい?それともウーロン茶の方がいいかな?あ!最近手に入れたスペシャルブレンド麦茶もあるよ」
緊張しないように、久しぶりに会った弟や弟の幼馴染にニコニコしながら声をかけてくれる。多分めちゃくちゃ忙しいはずなのに、嫌な顔一つせずに迎え入れてくれる。
週末になって、俺は兄貴が入り浸っている大学の研究室にやってきた。
自宅から大学まで結構離れているのと、今やっている研究が佳境に入っているとか、研究する時間が惜しいとか、色々と理由を付けて、兄貴は大学の近くに安いマンションを借りている。
だから兄貴に相談する場合は、こちらから出向いた方が手っ取り早いんだ。
最初は俺一人で行こうと思っていたのだけど、モモのやつが今回の件に興味深々なのと、久しぶりに俺と一緒に都心に遊びに行けるチャンスと見て取ったらしい。
「ぜったーい行くの!」と駄々をこねられてしまった。女子高生に上目遣いで懇願されて、断れる男性なんかいないだろう?そう思うよな?
明るい色柄のワンピースに、ミニとは言えないけど少し短めのスカートをはいて、標準的なポシェットを持てば、どこにでもいる御登り女子高生の出来上がり。
とはいえ、俺も黒のシャツにグリーンのジャケットを羽織って、黒のチノパンを履いてる、完璧な御登り男子高校生だよな。てへへ。
***
兄貴の研究室は大学の裏手の新しい建物の中にある。一階はガラス張りで、外見も白とアルミを基調にした有名な建築家が設計したんだろう的な、今風の建物だ。
企業の研究室とは違って、俺らみたいな学生がふらふらしてても、だれにも注意されない。なんかよくわからないけど、さすが国立大学だぜ、金かかってるぜ、って感じだ。
兄貴の研究室は3階の角部屋なので、エレベータに乗るより階段をあがってしまった方が早い。モモのスカートは短めなので俺が先に階段を上がる。そこはエチケットだよな。
なんで女の子って恥ずかしいくせに短めのスカートをはいたりするんだろう、いつも不思議に思うけどね。
……
で、早速この間起こった不思議な出来事を話したんだ。
そしたら、兄貴はいきなり「魂の重さは21グラムなんだぞ、知ってたか?」と聞いてきた。
兄貴の研究室は生命機能研究と言って、脳科学の先端分野をやっているらしいんだけど、なんで脳科学者が「魂」とか非科学的な話を持ち出すんだ?
兄貴も研究で疲れて「ムー」の世界に行ってしまったのか?それとも、「セイントお兄さん」の世界か?
どうしよう、俺にはついていけないかも。
それより親父や御袋に来てもらって、「あちらの世界に行かないで、家族のもとに帰ってきておくれー!」
とか説得してもらおうか……




