はかる君1.5
「出来たよー、ケンイチロウ君!」
例の工学部の天才君が『はかる君1.5』の試作品を待ち合わせの喫茶店に持って来てくれた。
「遅くなっちゃってゴメンね。
この間のアニメファンクラブの集い、発表資料を整理してたら、つい夢中になっちゃってさ。それと今秋の新作アニメの事前公開が重なって結構忙しくてね。ここ一週間は、睡眠時間3時間を切っちゃったよ。本当は毎日8時間寝たい人なんだけどね」
そう言いながら、彼はアニメの女子キャラが書いてあるピンク色の紙袋をテーブルの上に置いた。
「ケンイチロウ君のご要望通り、時間分解能はそのままだけど、質量の分解能は0.1ミリグラムまで精度を落としたよ。この精度で良ければ、ご希望通りリストバンドに出来るので『はかる君1.5』はリストバンドにしてみたんだけど。どうこんな感じかな?」
紙袋の中から、アニメの魔法少女キャラが書いてある可愛いパッケージの箱を取り出す。
「これで良ければ、製造ラインにゴーをかけちゃうけど。ちなみに、予算は初代のはかる君並みだよ。出血大サービス!」
パッケージを開けると、複数のリストバンドが、ちょこんと置いてあった。
「おお! ありがとう。結構いい感じだね」
ケンイチロウは、リストバンドの一つを箱からそっと取り出して手に取って眺める。
「製造ラインへのゴーは、ちょっとまってね。お金関係は、私の自由には出来ないから、助教のタクヤさんに確認してから、改めて依頼するから……」
手に取ったリストバンドをしげしげと眺めながら、工学部の彼に話し続ける。
「お! ワンポイントも入っているんだ。君はセンス良いなあ!」
「うん! 単一色だと飽きちゃうだろうから、ワンポイントを入れてみたんだ。因みに、このワンポイントは『はかる君』のイメージキャラクターなんだ。SNS仲間に絵師さんが居るんだけど、彼に二頭身のゆるキャラを作ってもらったの!」
「え? はかる君は一応公にしないでね、ってお願いしたじゃない? 大丈夫?」
「うん、そこは注意してるから大丈夫! 架空のイメージを教えて、絵師さんに依頼したんで、はかる君が本当は何か伝わってないよ」
「お! さすがだね、ありがとう。このキャラも可愛くて良いじゃん!」
「あと、一応ご要望通りの防水だから、水洗いもオッケーだよ!」
「ありがとう! さすがだなあ。ところで、中継器は?」
「うん、ネコミミちゃんもバージョンアップしてある。これは、はかる君シリーズ全ての測定器に対応出来てるよ。一応両耳立ちと片耳だけ閉じたパターンの二種類用意したから、飽きたらもう片方を使うと良いよ!」
「お、おう! そうか、そちらは想定外かな……でも、有難う。助かるよ、上位互換のネコミミちゃんか。確かに『はかる君』もこれだけバリエーションが増えると互換性が心配だからね」
ケンイチロウは、紙袋に入っていた別のパッケージから『ねこみみ』の両耳立ちバージョンを自分の頭に付けながら、工学部の彼に質問する。
「カラーはピンク色だけ? ブルーも好きな女の子、いるんじゃないか」
「あ! そうだね、さすがケンイチロウ君。そうだよね、女の子イコール、ピンク色はダメだね。
僕も修行が足りないなあー。もっと、アニメの勉強をしなくちゃぁ! でも、睡眠時間は削れないしなあー、悩みどころかな?」
「大丈夫だよ、急がなくても! 君が優秀なのは、私が保証するよ。女の子イコール、ピンク色の基本さえ押さえておけば、あとは応用だから」
「ケンイチロウ君は、応用問題が得意だったもんなあー。ボクなんて基本を突き詰めるしか出来ないもの……」
「何言ってんの! こんな凄い測定器を作れるぐらい基本を突き詰める事が出来るのは、君がその道の天才だからだよ。私は、君の親友で良かったと心から思うよ」
「ケンイチロウ君、ありがとうね。僕も、大学生の時に君と知り合えて、人生に感謝しているんだ」
「じゃあ、この試作品は研究室に持って帰って、皆んなの意見を聞いてくるね」
「うん! ケンイチロウ君、お願いします。研究室の皆んなも気に入ってくれると嬉しいなー!」
「あ! ここのコーヒーとケーキ代は、私が持つからね」
ケンイチロウは、工学部の天才君から、複数のリストバンドとピンク色の可愛いネコミミちゃん、それとコーヒーとケーキの伝票を持って、大学内のカフェテリアで精算を済ませた。
それからユックリと満足そうに(チョイと恥ずかしそうに)、研究室に向かって歩いて行った。




