ケンジ君の語り
ケンジの語り……
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正直、よく覚えていないんです。突然体が動かなくなった所まではハッキりしてるんですけど。
その後は、なんかモヤモヤしてて…
はかる君の通話機能で、タクヤさんに話した通りです。
なんか硬い椅子に縛られている様な、なんか病院のベッドに縛られている様な、ああそうか薬臭い匂いもしました。なんだろう、良く金縛りにあうとか言うじゃあ無いですか。頭で意識して手足を動かそうとするのですけど、自由が効かないんです。体が痺れている様な、全身を何かで押さえつけられている感じで。
その後、です。
突然自分の体が自由になったと思ったら。目の前にモモがいて、心配そうにこちらを見てたと思ったら、一点して不思議そうな顔になり、最後は俺の事を始めて会う人間の様に扱い出すし。
それから、モモが自分の指輪に話し始めたと思ったら、その指輪を俺に向けて来て、とにかく、会話して!って言い出すし。なんか、兄貴は飯屋の話と自分の名前を持ち出すし。トドメは、タクヤさんに怒られるし。
なんか、最悪の夢でしたよ。
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例の事件があった翌日、タクヤさんの友達で、生物部の先生の計らいで、タクヤさんと兄貴は、俺らの通う高校の生物教室にいた。
俺とモモは、お昼休みに生物教室に呼び出されて、こうやってインタビューを受けていた。
週末まで待っていたら、ケンジ君の記憶が曖昧になるから、出来る限り直ぐに会いたいと言うことになった結果だった。
タクヤさんや兄貴は、生物教室に荷物を届ける業者と偽って入り込む。最近は、防犯上の理由から、外部の人間は学校に簡単には入れないからだ。
タクヤさんも兄貴も、よく見かける運送屋さんの作業着を着て、生物学教室に怪しい教材を運んで来た。まあ、あの研究室は生物分野に属するわけだから、生物学に関する教材なんか腐る程あると言うわけだ。
ただ、タクヤさんは、教材以外にも怪しい機械も持ち込んで来た。例の質量測定器のデータを受信するサーバーの簡易版の様だ。ケンジ君が学校にいる間に何かあっても、直ぐに駆けつけられる様に、ここに観測装置を置くのだ。
また、例の指輪の臨床実験と偽って、ここに大学院生のユミちゃんを生物学教室の教育実習生として配置する作戦だ。
ケンジの自宅の方にも、同じ機械を設置して、研究室から遠隔操作するらしい。ネコミミの様な中継器経由だと、はかる君の測定値に微妙なズレが生じてしまうんだそうだ。ただそれは、表向きの話であって、実際には常駐の研究員をそばに置く事で、緊急事態に対応出来るようにするためだった。
当然、ケンジが自宅にいる時は、自宅のサーバーで監視が行われ、異常事態が起こったら、モモちゃんのスマホとタクヤさんと兄貴のスマホに緊急メッセージが通知される仕組みになっている。
次に、彼が来たら、今度は直接対話するんだとタクヤさんの入れ込み方は半端では無かった。




