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あなたは、だあれ?  作者: ぬまちゃん
平行世界の彼ら
43/74

ンファの思い

 

 ンファの語り……


 ―――


 はーあ。今回の人間入れ替え作業は、失敗だった。まさか、心と体のリンク率の変化を、波形として測定する技術があるとはなぁ。でも、そんな技術が開発されているなんて、公式にはどこの研究機関も報告してないんだがな。やはり、まだ極秘に開発中の物なのだろう。


 しかも、その技術の被験者を入れ替え対象者に選ぶなんて、なんて運が悪いんだろう。多分、あちらの被験者も、他の人間に比べて心と体のリンク変動が高い部類に属しているのだろう。今回遭遇した研究機関のグループも、彼の特異性に気が付いたから、開発中の機械の被験者として目を付けたのだろう。


 彼らにも説明してしまったが、我々が心を入れ替えるターゲットにする人間も、心と体のリンク率変動が高い人間でなければならない。結局、そうなると彼らの被験者とぶつかる可能性が高いな。今後は心の入れ替え対象者を決めるのに、もう少し慎重に行動しないといけないな。


 彼らは、僕らがこの世界に拠点を持っているのに気が付いてしまった。まあ、僕もまさか心を入れ替えて、周辺に馴染む前にイキナリ詰問されるとは思わなかったからな。彼らに話した内容は、かなり誤魔化したが、それでも一部分重要なヒントを与えてしまった。僕らとしては、もう少し拠点を強化して手法が確立されてからでなければ、迂闊な情報を提供する事は出来ない。


 もしも、相手がある程度信用に値する研究者チームだとしてもね。


 取り敢えず、今回の失敗の件はレポートにしたら、僕の心に刻みつけて向こうの世界に持って行かねばな。


 ―――


「お疲れ様でした。お茶をお持ちしました」


 この世界で彼らの拠点として使用しているマンションの一室で、ンファがこの世界で仮に使用している人間に対して、彼の助手がお茶を持って来た。


 並行世界の間で移動できるのは、心だけである。また、移動するのでは無くて、心の交換になる。そのため、こちらの世界に来る時に、あちらの世界に残した自分の体には、元々こちらの世界の体についていた心が移動しているのだ。


 突然別の世界に飛ばされたら、誰だってびっくりするだろう。それに友好的な人間とは限らない。

 そのために、並行世界の向こう側のンファの体は眠らされている。そうすれば、こちらの世界で、ンファと心を交換した人間は、あちらの世界に移動しても身動き出来ない。


 身動き出来ないと言うよりは、眠っているだけだ。だから、自分の心が並行世界の向こう側に移動している事を覚えていない。向こうの人間は、ンファが戻って来たかどうかを知る手段を持っている。

 その手段を使って、ンファが並行世界から戻って来たのを確認したら、ンファの身体を眠りから覚ます。


 その時並行世界のこちら側では、ンファが使っている身体に、元の心が戻って来る。その彼から見ると、自分は寝ていたつもりだけど、知らない間にお茶を飲んだり、何か自分が知らない事をした様な気分(実際には、ンファが活動している)になっているわけだ。



 ンファがこちらの世界で使っている体の持ち主の語り……


 ―――


 自分の心としては、行った事は無いはずなのに、脳の記憶としては行った事がある。

 まるで、自分が夢遊病者になった気分だ。


 自分が知らない間に、仲間が増え。

 自分が知らない間に、お金が増え。

 自分が知らない間に、マンションを買い。

 自分が知らない間に、何かの活動をしている。


 でも、お金が増えてマンションに暮らせるなら、それでも良いかな?


 どうせ生きていても良いこともないし、世間は冷たいし、全て流れに身を任せて漂っていれば生きていける今の生活でいいじゃあないか、彼はそう思っていた。でも、最近は寝ている時間が段々と伸びている気がする。仲間も何かよそよそしい。


 もしかしたら、オレはやばい事に手を染めてるんじゃあないか? 最近は、その思いが強くなって来ている。最後には、何かとんでもない事に巻き込まれるのでは、という恐れを感じることも多い。しかしながら、結局は破局を迎えるまで、今の生活を捨てる事が出来ない、そうも感じていた。



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