ケンジ君とモモちゃん
「ケンジー! もー! ほっんっとっうに!
心配したんだからね」
モモが俺の胸を、ゲンコツでバンバン叩いた。
でも、モモの目が涙目になっているから、俺は全然痛みを感じなかった。
「なんか、よく分からないけど……心配かけてゴメンよ。
ホント、しばらく夢を見ていた感じなんだよなー」ケンジは未だボンヤリしている様だった。
モモは思った。
タクヤさんは「俺があそこまで強気で攻めたから、アイツはしばらくケンジ君を乗っ取れない筈だから。しばらくは大丈夫だからね」って言ってくれた。
ケンジ君のお兄さん、大分オロオロしてたみたいだけど「研究室のモニターでシッカリと見張るからモモちゃん大丈夫だよ」と気丈に振る舞ってた。
みんなが、私達の事を気遣ってくれると思うと、少し安心できた気がする。
連絡装置による通話が切れる前に、タクヤさんは私にこう言った。
「モモちゃん、ケンジ君が一番大変な状態なんだから、あまり精神的に追い込まないでね!
今起こった出来事を、ケンジ君に聞いても、彼は答えられない筈だから。
多分、ケンジ君が、自分に起きた事を一番理解出来ていないはずだから。
今回の件に関しては、僕達周りの人間の方が本人より理解していると思っているぐらいだから。
いつものモモちゃんでいて上げるのが、ケンジ君にとっては、良いリハビリになる筈だからね。
あ! でも、安心したからって、チューとかオッパイタッチとかはダメだよ。ケンジ君興奮しちゃうから!」
「タクヤさん! もうー、やだなあー。
私とケンジは、そんな関係では無いですよー」
モモは、恥ずかしさで顔を少し赤らめながらタクヤに反論していたのだ。
―――
「でも良かった、いつものケンジに戻ってる。安心したよー。
タクヤさんから、チューは駄目だよって言われたけどしたくなっちゃうよね……
あ! 好きな男の子とかじゃなくて、小さくて可愛いネコにチューしたくなる感じでよ!」
まだ赤みの残っている状態で、タクヤに聞こえないようにモモは小さく言った。
「えー? 何それ? 俺ってネコ並みって事。
なんか、もう少し慰めの言葉はないのかー。
例えば、ケンジ君が元気が出るように、私のオッパイにタッチしても良いよ!とかさ……」
ケンジは、モモに向かって少し冗談じみて話す。
「何言ってんの? 全く、タクヤさんと同じ発想しか出来ないの?
男子って、年齢関係なくみんなエッチなのね」
モモは、少しあきれ顔でタクヤに言う。
「え? なになに、タクヤさんのお許しまで出てるの?
それじゃあ、ここはオッパイタッチするしか無いじゃん!」
ケンジは、両手をもみもみさせながら、モモの胸を触る仕草をする。
「イヤー、そんな事で私の大事な所に触らないで!
だって、本当のケンジかどうか分からないし」
両手を交差させて、胸を隠すモモ。
「え? って事は、本当のケンジなら触らせてもらえるの?」
ケンジは、少し驚いて質問する。
「本当に、本物のケンジなら……タクヤさんが『やれ』って言ってたし。
それで、ケンジが元気になるなら……でも一回だけだからね!
慌てて走って来たから、少し汗臭いかもしれないし……
本当に、ホントに、一回だけだよ!」
モモは恥ずかしさで下を向きながら、ボソボソと答える。
「うおー! やった!
元気百倍だよ、もう涙ちょちょぎれちゃう。
ありがとな、モモ!」
ケンジは軽く飛び上がって喜ぶ。
「あ! でも、クラスのみんなには内緒だよ」
少しピンク色に染まったホッペが、モモの本気を物語っていた。
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