戻ってきたケンジ君
「質量波形確認、ケンジ君です!」
質量波形のモニターを見ているユミちゃんが安心した声で叫んだ!
モモちゃんもケンジ君が戻って来たのを感じているようだった。
「ケンジ! ケンジだね?」
「おお? モモか! なんだ、なんだ? 俺どうしてたんだ?」
スピーカーからは、安心したモモちゃんと不思議そうなケンジ君の会話が聞こえて来た。
「ケンジ! 戻って来たか!」
お兄さんのケンイチロウが安心したように、スピーカー越しに声をかける。
タクヤさんがケンイチロウの横から声をかけた。
「まだ、記憶が混乱しているんだろう。 ンファが一時的に書き込んだ記憶と、本来のケンジ君の記憶、そして、ンファと心を交換されてンファとして振る舞ったケンジ君の記憶、それらが彼の中で整理されていないんだと思うよ。まあ、むぎ茶でも飲んで気を落ち着けてから、ケンジ君の心の観点での体験を聞こうか。
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「ホントーは、実は、よく分かってないんです。今まで夢を見てて、目が覚めたらモモが目の前にいる! という感じで……」
スピーカー越しでも、ケンジ君の混乱が手に取る様に分かる。
「夢の中でも、モモが必死になって俺を呼んでいるのと、なんか兄貴がこの間のおごりの話をしてた? 後は、タクヤさんにめちゃくちゃ怒られてる感じだったんですけど……俺、タクヤさんになんか悪い事しちゃいましたっけ?」
「あー、ゴメンね。別に怒るつもりでは無かったんだよ。ある人の話し方が、人を見下してきた話し方をしてたので、その人の話の内容の矛盾点を細かく指摘してあげたんだ。それは、君の脳に残っている記憶だけど、ケンジ君本人が話した訳では無いから、気にしなくて良いよ」
タクヤさんは、腕を組んで考え込んでいる。
「そうかー。ヤッパリ、脳に残っている記憶が優先されるんだな。心に刻むほどの刺激が無いと、覚えてられないのかな……」
「あ! タクヤさん! 夢の中で更に夢を見たような気がするんです。時々あるじゃ無いですか、夢から覚めたらまだ夢で……あの感覚で、ちょっとだけ覚えている事があるんですけど」
「お! さすがケンジ君。なに? どんな事でも良いよ。教えてくれるかな」
「それが……なんかイスに縛られていて……周りには沢山の人が、ぼーっとコチラを見てるんです。別に危害を加えられてるとかじゃあ無いんですけど。なんか、イスが妙に硬くて尻が痛い? 尻がこそばゆい感じ? そんな感じなんです」
「いやぁね、ケンジ。レディーの前でお尻掻かないでよ」
モモちゃんの恥ずかしそうな声が聞こえる。
「その夢が覚めたら、イキナリ、モモが俺の顔に迫ってきて、俺がドギマギしてたら、兄貴が突然この間のメシの話を始めると、タクヤさんに怒られた……そんな夢を見てました」
「そうかー。夢の中の夢ね! 良い表現だ。言い得て妙、てヤツかな。でも、あいつの話では、丁重に扱う様な話しぶりだったけど、イスに縛り付けるのはダメだよなあー。多分記憶されていないだろうと、タカをくくってたんじゃないか?今度来た時は、しっかりその点を責めてやらないと!」
タクヤは、その点をシッカリとメモする事にした。
「でも、何れにしても我々とは違う世界の人間とのファーストコンタクトという事かな? 今の全ての記録と録音を持って、一応教授に報告してくるか……今後の対応方針も相談しなきゃあいけないしな」
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