ンファの語り
「うーん、どうもタクヤさんは突っ込みが鋭いなあ。説明に時間がかかるので、ある程度はしよって説明しているのですが、それが結果的には隠していると思われてしまうのですね」
ケンジ君の体を借りている、ンファは、苦笑いをしながら言った。
「だから、急がなくていいです。ゆっくりと、筋道を通して話して下さい。話の中で矛盾が出てしまって、そこで戻る方が、僕らにとってもあなたにとっても有益にはならんでしょう?」
タクヤさんは、少し怒った風な口調で言った。
さらに続けて、タクヤさんは話す。
「はっきりと言って、今回のあなたの出現方法自体が胡散臭いんです。貴方は、その部分を理解していない。貴方は、僕たちの懐疑心を取り除くような説明をすべきなんだ。それを、はしよるから、猜疑心が増すんです。貴方は、単純に研究の一環で通そうとしているが、そうであるならば、もう少し慎重に行動すべきだ。こちらの世界に表れる下準備をしていながら、さも偶然にここに来てしまった、という言い方は良くないと思いますよ。少なくとも、僕たちの前では通用しません」
ンファの言葉には、少し不安が混じる。
「そうですか。分かりました、確かにおっしゃる通りですね。あなた方から見たら、私はこの世界を混乱に導く謎の異星人ですからね」
タクヤさんは、頭を掻きながら、ンファの話にイライラしているようだ。
「いや、異星人だとはおもっていませんが、少なくとも共通な世界観を持ちえないと思いました。それが、あなたのいる世界の標準的な考え方なのか?それとも、単純にあなた自身の考え方によるものなのか?僕達には判断出来ないという事です。あなた一人の語りでは、あなたの世界全てを語っているか、分からない! といっているんです」
タクヤさんの独壇場は続く。
「だから、とりあえず理解できる事としては、平行世界という処からあなたがやって来た、という事だけです。そのあなたが、平行世界に関して個人的な意見を述べているだけだ、という認識でいます。逆にこちらから質問します。どうして、この世界を選んだんですか? 偶然という嘘は通じませんからね」
タクヤさんは、まだ怒っていた。
「分かりました、それでは私の意見として説明しましょう。この世界を選んだ事自体は、本当に偶然です。私達には、まだ平行世界を自由には選べません。ただし、平行世界の中で、心を入れ替える対象は、ある程度の選択が可能です。選択が可能というのは、心を入れ替えるのが楽な個体と、心を入れ替えにくい個体があるんです」
ンファは、そこで一瞬考えこんだように間を開ける。
「私達は、ある種のセンサーを使って、心を入れ替えやすい個体をこの世界で探していました。ケンジ君は、その点非常に優れている個体でした。私たちのセンサーに真っ先に反応してくれたのです。
もちろん彼自身は、全然意識していないと思いますが。それから、ケンジ君の身辺調査を行い、質量観測自体は行われているが、まだ我々のレベルに達していないという結論に達したのです。それから、ケンジ君の心を入れ替えるために、彼の心のリンク状態をモニターし始めました。また、私の記憶を彼に転送する準備も始めた、という訳です」
ンファは、タクヤさんに問い返す。
「どうですか、タクヤさん。これで、納得してくれましたか?」
「そうですね、かろうじて及第点は差し上げましょう」
タクヤさんは、不満を隠さずに答えた。
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