私はワタシ
「ケンジ君、君のクラス全員指輪をつけてるだろう?」
タクヤさんは聞いた。
「それってなんで付いてるかも教えたよな?」
「やだなあー、タクヤさんまだ僕を疑ってるんですか? 僕はケンジですよー。この指輪は、身体の質量を精密に測る機械でしょう? 僕とモモちゃんの二人だけに付けるわけにはいかないから、クラス全員にプレゼントしたんじゃないですかー。そんな事、今更聞いてどうするんですか?」
「ケンジ君、君には教えていなかったけどね、その機械で質量を精密に測定すると、身体と心がどれだけ深く結び合っているか判るんだ。まあ、一言で言えば、心と身体のシンクロ率みたいなものだな」
タクヤさんは、そこで一瞬間を置いて、相手の反応を伺う。
「ケンジ君なら分かると思うけど、心と身体は強固に繋がっている訳では無いんだ。だから、そのシンクロ率は時間とともに変動する。その変動をグラフにすると、人それぞれ独自のパターンがあるんだよ。ケンジ君、僕が今君に説明している意味、分かるかい?」
「やだなあー。タクヤさん、そんな事常識じゃあ無いですか。でも、その個人間のシンクロ率を比較出来るほど精密な測定器なんてまだこの世界では無いはずですけどね……」
――― ケンイチロウが突然割り込んできた。
「おい! そこに居るオマエ! オマエは誰なんだ? 一体何の話をしているんだ? 何なんだよ!
『この世界には無いはず』って?」
タクヤさんがケンイチロウを制して言った。
「そこにいる、ケンジ君もどき君! ケンジ君の兄貴は、ケンジ君の事になるとムキになるから気をつけてくれよ。君は随分と脇が甘いなあー。ほんの数分間話しただけで化けの皮が剥がれちゃったじゃないか! せっかく、その君たちの世界で言う所のシンクロ率を比較した結果を突きつけてあげられたのになあー」
タクヤさんは、スピーカーの向こう側のケンジ君もどきに言い放った。
「君のシンクロ率は、僕たちの世界のケンジ君の物と波形が全然違うよ! 僕たちを騙すなら、もう少し勉強してきてほしいな! この世界を舐めないでくれたまえ!」
タクヤさんも、ケンジ君もどきの喋り方の甘さに、チョットだけイラッとしたのか、いつもより強い調子でケンジ君もどきに問いかけた。
「実の兄や恋人が違和感を感じるのは仕方ないとしてもだ、、、第三者にも明らかに別人だと思われる喋り方は駄目だなあ。肉体的にはケンジ君その物だから、油断したのかい?」
そこで、モモが会話に入る。
「えー? アタシ、ケンジ君の恋人じゃぁありませんよ。幼馴染なだけですッ!」
「あ?そうだっけ、ゴメンねモモちゃん。まあ、そんな事は良いとして、この世界に来るならもう少し勉強してきて欲しいなあ。さっきも言ったけど、この世界を舐めてもらっては困る。確かに半年前なら、シンクロ率の波形測定までは思い至らなかったし、そこまで優れた測定器も無かった。でもね、技術の進歩は早いんだ。君達が気がつく前に、僕達もどんどん前に進んでいるんだよ!」
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