はかる君2号機
「色々と新しい経験をして疲れただろう?
最後にコレで終わりだからね」
研究室に戻って来て、タクヤさんが出して来たのは怪しそうな被り物だった。コレも内側に電極らしき物が付いているけど、電極の数が半端なかった。
「えー何ですかコレは?さっきの測定器よりも検出器が異常に多いじゃ無いですか!」
「あー、コレがさっき言っていた256電極の脳波測定器だよ。病院で使っているものより、より細かい情報が取れるんだ。ただし、医療業界での標準では無いので、あくまでも検査の補助にしか使えないけどね」
タクヤさん、こんなのふつーだよ、と言う感じで話し始める。
「元々は、脳内のシナプスによる電気的な刺激を巨視的な電圧変動として外部から観測するものだから、初期の頃はそんなに測定箇所を細かく分ける必要は無かったんだ」
怪しい被り物に何十本もの線が束ねられたケーブルを指しながら、話は続く。
「そもそも、脳に直接電極を打ち込んで測定出来る訳でも無いしね。頭蓋骨を通して得られる電圧変動を記録して、その電圧変動を周波数成分に分けて周波数成分ごとの動きを調べると、脳疾患の患者さん固有のパターンが見られる事が多いから、医療用にはせいぜい21個の検出器で充分なんだ」
ケーブルの片一方は、チョット大きめなパソコンの様な機械に接続する。
「ただ、研究者にとってはより細かい部位での反応を見たいので、少しでも沢山の検出器があった方が良いんだ。まあ、それでも一つの検出器辺りにシナプス数百万個とか言うレベルだけどね」
接続が終わるとパソコンの親玉みたいな機械の電源を入れる。
「とにかく、僕たちにとっては脳はまだ未知の臓器だよ。もしかしたら、脳の何処かに心を司る器官があるかもしれないしね。たまたま、僕たちの世界ではまだ見つかっていないけど、遠い未来の世界では普通の話かも知れないよ」
タクヤさんは遠い目をしながら、僕たちに説明してくれた。
「まあ、そんな夢の様な話は置いておいて、僕たちは僕達で出来る事をしようか!取り敢えずこの機械でちゃっちゃっと脳波を測ったら、今日の目的の一つは終了さ」
「そうですね、あとは兄貴の奢りのご馳走だけですね」
俺が嬉しそうにタクヤさんの話に合いの手を入れたら、タクヤさんは怪訝そうな顔をして俺の顔を覗き込んだ。
「あれ?お兄さんから聞いてないの?今まで付けていた『はかる君』バージョンアップしたので、そちらの機械調整をする話があるんだけど?」
タクヤさんは、想定装置の調整をしながらケンジとケンイチロウの顔を交互に見る。
「えー、また兄貴に騙されたかな?兄貴、俺はそんな話は聞いてないぞ!」
「ゴメンゴメン、ケンジ。実はそう言う事なんだ。安心してくれ、ご馳走はするからさ。ただし、その前に『はかる君2号機』を付けるための調整をして欲しいんだ」
ケンイチロウは手を合わせて、弟のケンジを拝む様にして話を続ける。
「今度の機械は、測定分解能が格段にアップして、マイクログラムまで測定出来るんだ!しかも時間分解能もミリ秒のままだよ。その代わり、今までのミサンガ状の様にフラフラした形では無くて、ガッチリした指輪状のものなんだ」
そう言いながら、ケンイチロウは指輪をケンジの前に置く。
「えー、俺指輪なんか出来ないよ!チョー恥ずかしいじゃん!指輪なんかして学校に行ったら良い笑いもんだぜ?っていうか、学校側でそんな装飾品付けてたら、不良だとか言われて退学になるんじゃ無いか?」
「まあまあ、一応タクヤさんの親友がお前の学校にいるらしいから、校則に関しては大目に見てもらえる事になってる」
「えー既に外堀が埋まってるのかよ?」
「後、モモちゃんにも同じ指輪をしてもらうから、それで少しでもお前に注意が向かない様にするからさ!」
「イヤイヤ、それって俺とモモがステディな仲になったって学校中に言ってるようなもんじゃないか!それこそヤバイよ。モモもやだろう?」
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