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あなたは、だあれ?  作者: ぬまちゃん
被験者から観測対象者へ
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俺の脳は健康か?

 脳の検査が終わったー!


 簡易ベッドが動き出して、俺の視界から測定室の天井が見えた。どうやら巨大な円筒の中から抜け出たらしい。


 今更ながら閉所恐怖症で無くて良かったぜ。

 足の方は測定装置からはみ出ているのだろうけど、視界一面が真っ白なプラスチック製のカバーで囲まれているから、やっぱり狭いの嫌な人は怖いだろうなあ。

 そういう意味では大人でも、ヌイグルミは必需品かもな?


 ……


 ピー、「じゃあ、次の検査に行くからその検査着のまま出てきてくれるかな?あー私物や着替えはそのまま持ってきてね。多分次の人が検査室を使うはずだから」


 タクヤさんの無情な声が検査室にこだまする。


「えー!まだあるのですか?」


 検査室を出て、測定装置の前で機械を操作しているタクヤさんに愚痴をこぼした。


「うん?当然じゃないか。君に何かあったら困るからね。現時点で考えられる検査は一通りやってもらうよ!ただし、脳に関する検査だけだけどね。お腹の検査はいらないでしょう?見た目健康そうだもんね」


 タクヤさんは測定装置から必要なデーターを取り出しながら話を続ける。


「僕たちが心配しているのは、君の脳内に先天的な疾患が存在して、それが理由で君の特別な現象のトリガーになっているのでは?と言う事だ」


 タクヤさんはデーターを取り終わって、パソコンを小脇に抱える。


「もしもその場合、今回発生した事象は疾患による一時的なものである可能性が否定出来ず、今回のリンク実験の被験者リストから外さなければいけなくなる」


 外さなければいけない……と言った時に、タクヤさんは無意識に悲しそうな顔をする。まるで楽しいオモチャを取り上げられた時の子供の顔だ。


「長時間にわたって21グラムの減少が発現し、かつその時本人も体の自由を失った感覚を持った、と言う事実を個人的な事象から汎用的な事象に引き上げるためには、被験者が正常体である事を証明しなければいけないんだ」


 証明しなければいけない……の部分では言葉に力がこもっていた。

 ケンジは、タクヤさんと一緒に検査室から出る。


「難しい言葉で色々説明したが。まあ、要するにケチをつける奴は何処の世界にもいると言うことさ。そいつらが難癖を付ける為のウイークポイントを少しでも減らしたいだけなんだ」


 みんなでゾロゾロ歩きながら、タクヤさんはケンジに向かって次の検査を説明する。


「安心してくれ、次の検査はさっきのより簡単だから。脳波を測定するので電極のついたヘッドセットを被るだけだよ。目をつぶって楽にしててくれれば良いからね」


 俺はタクヤさんの説明を聞きながら、兄貴とモモと一緒に別の検査室に移動した。


 さっきの部屋ほど大きくはなくて、なんか普通の検査室の感じだ。ただし部屋の真ん中に不思議な機械が置いてある以外は。

 その機械はイスと頭にかぶるヘッドセットからなっていた。そのヘッドセットは、まるで美容院で女の人がパーマをする時にかぶる機械のようだった。


 ヘッドセットからぶっといケーブルが別のテービルの上に置いてあるパソコンに接続されている。パソコンのモニター画面の上に「脳波検査装置」と書いたプレートが載っていた。


「へー、パソコンなんですね。こんなので脳波検査するんですか……」


 俺がポロリと独り言を言うと、それに反応するようにタクヤさんが喋り出した。


「うーん、さっきの脳の断層診断検査装置もデータ処理や解析する部分はパソコンなんだけどね。ソフトウェアが違うのとデータ検出器自体の単価がべらぼうに違うだけで、どっちも検出器とパソコンの組み合わせなんだよね……まあ、さっさと済ませてしまおう。そこの椅子に座ってくれるかな?」


 椅子に座ると、イキナリ頭の何箇所かにポマードみたいなベタベタした液体を塗られた。


「ケンジ君ゴメンね、後でちゃんと拭いてあげるからね」


 タクヤさんはそう言いながら、さらにポマードみたいな物を塗りたくる。


「頭皮と検出器との接触を良くする為に、特別なクリームを塗る必要があるんだよね。国際10/20法という検査方法が標準になっているので、この検査で君の脳波に異常がない事を証明しなきゃあならないんだ」


 タクヤさんは、ポマードで汚れた自分の手をお絞りで拭きながら説明を続ける。


「研究室に行けば、高密度の256電極の脳波計があるんだけどその測定結果はまだ学会で正式に認められていないんだ。君の脳が健康である事の証明をするために、わざわざ標準的な病院の検査装置を使ってるんだものね」


 タクヤさんは、綺麗になった手で色々な機械のスイッチを入れて行く。


「後で研究室に戻ったら、チョット最新式の脳波計を付けて君の脳波パターンを取らせてね。そっちは髪の毛を汚さないタイプの検出器だからね」


 そう言ってケンジに向かってウインクする。


「さて、それじゃあ電極を載せるから肩の力を抜いて、目をつぶってじっとしててくれるかな?寝ちゃっても良いよ、ちゃんと脳波計で検査対象者の状態は分かっちゃうからね」


 そう言って、ケンジの頭にパーマに使う様なヘッドセットを被せる。


「じゃあ、測るぞー。はい、チーズ!」


 ジー

 ジー

 ジー


 うーん。チーズって言われても、俺チーズ好きくないし。タクヤさん的に緊張をほぐそうとしてくれているのだろうなあ……ケンジは心の中でそっと思う。


 ジー

 ジー

 ジー


 ガチャ


「はい、終わったよ。寝なかったんだね?ケンジ君。じゃあ、これで検査は終了したから研究室に戻ろうか?」


 タクヤさんは、ケンジの頭からパーマの機械を外す。


「詳細な検査結果がわかるのは少し先だけど、ざっと見た感じでは何かの疾患がある場合に現れるパターンは見えなかったので、ケンジ君の脳は健康だよ。良かったね!」


 うーん、タクヤさんに褒められてもなあ……



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