本当に大丈夫か俺
機械のある部屋と測定装置のある部屋はガラス窓付きの壁で仕切られているので、モモを測定室に残して機械のある部屋に入り扉を閉めてしまえば、余計な音は聞こえない。
部屋の中には、ガラス窓から着替える様子が見えないように視界を遮る為の衝立があった。衝立の向こう側には、病院で健康診断を受ける人が着るような薄いブルーのガウンが丁寧に畳まれて備え付けの机の上に置いてあった。
机の横にはロッカーもあるので、脱いだ上着はこの中にかけておけばいいんだろうな。
まな板の鯉状態になったケンジは諦めて下着だけになると、洗濯されプレスされているガウンを羽織った。
クッソー!こんなんじゃあ勝負パンツなんか履いて来ても意味ないじゃんか!可愛い看護師のお姉さんが着替えさせてくれるんじゃあなかったのか?全てセルフかい。
ピー、「もう着替えは終わったかい?着替えたら衝立の陰から出て来て、其処の簡易ベットに横たわってくれるかな」
部屋の何処かに付いているスピーカーからタクヤさんの声が聞こえてくる。
「あ!ここに可愛いぬいぐるみが置いてありますけど、これは何に使うんですかー?」
モモのトンチンカンな声も一緒にスピーカーから聞こえてくる。
付き添いだけの気楽なヤツは良いなあ。いつか逆の立場になったら、見てろよ!
「あー!それはね、別に僕たちが癒される為に置いてあるわけでは無いんだよ。大学病院から検査に来る患者さんて、別に大人だけとは限らないからね。小さなお子さんだって検査する必要がある時に、検査中は動かないように、なだめる必要があるからね。だから一通りのオモチャやヌイグルミが揃っているんだよ。子供達はお気に入りのヌイグルミをシッカリと抱いて、懸命に耐えているんだよね。健気だよねえ」
タクヤさんのモモへの説明がスピーカーから流れて来る。スイッチ入れっぱなしじゃん!
「そうですね……子供だって検査を受けなきゃならない場合がありますものね。可愛そうだけど、みんな頑張っているのね……ケンジも子供に負けないで、頑張って検査を受けるのよ!」
モモの声がスピーカーから聞こえて来る。
うわぁー、なんてこった、俺は子供と同じか?
まあ、確かに子供でも受けられる検査に高校生である俺がビビってどうするんだよ!頑張れオレ!
ピー、「じゃあ始めるからね!」
グォーん
ベッドがイキナリ動き出してオレの頭がプラスチックの箱に開いている穴に吸い込まれていく。
ピー、「最初は微調整だから上下左右にベッドが動くけど気にしないでね」
グイングイン、
確かにベッドが細かく動き出した。なんか酔いそう。
学校で冗談のつもりでフトシに頭を揺すられて感じ だ。
こんな状態で脳の中身を見ても、「アレ?正常な状態じゃ無いね!脳に障害が発生している様に見えるから、これはこのまま入院して精密検査を受けようか!」ってな事にならないよな?
ヤベーよお泊まりセットなんか持って来てこなかったし、兄貴の奢りのご馳走も食べ損なっちまう!
これは本当に子供でも我慢出来る事なのかよ?恥ずかしい話し、オレもヌイグルミを持って来れば良かったか?……
っと、少しパニックになりかかっていたら突然ベットの揺れが収まった。
ピー、「ハイ、調整終わったから、今から検査を始めるね」
タクヤさんの声が聞こえてきた。良かった、検査自体はこれからなんだ……
ピー、「検査中は結構大きな音が聞こえるけど気にしないでね!その音は電磁石を極低温に保つ為の冷却装置を動かしている音だからね。『がこん、がこん』て聞こえるけど壊れたわけではないからね。冷却用のコンプレッサーの動作音だから、我慢してね」
へー、そうなんだ。でも冷却器が付いてたら俺も凍っちゃわないのか?とか、どうでもいい事を考える。
やっと落ち着いてきたようだな……俺
ピー、「はい、じゃあ始めるからね!」
ブイ〜ン
がこん
がこん
がこん
あ〜うるさいなあ、まあそれ以外は特に痛くもかゆくもないし、体を触られている訳でもない。
強力な磁力線がオレの頭の中をスキャンしているのだろうけど、はっきり言って、全然普通じゃん。こんなの子供でも楽勝だよなって感じだ……
がこん
がこん
がこん
うーん、結構長い時間経ったような気もするし、全然短い時間なのかも知れないし、ただ寝転がっているのも苦痛になって来たぞ……やっぱりぬいぐるみ欲しいかもだ……
ピー、「はい、お疲れ様でした。検査と言うか測定終了〜!」
タクヤさんの声が、妙に明るいのが気になった……




