測定装置は宝くじ一回分?
何とか邪魔者を排除して、無事にモモと二人で兄貴のいる研究室に着いた。
「よく来たねケンジ!先週はあれ以来変わった事は無かったかい?まあ、こちらのモニターにも異常は現れなかったから大丈夫だとは思っていたけれどね」
兄貴は、俺を見つけて直ぐに話しかけて来る。
「それでは早速で済まないが、僕と一緒に大学病院で精密検査を受けようか!終わったらちゃんとおごってあげるから、心配しないでくれ。約束は守るからさ」
そして、モモに向かって(少し)余計な話をする。
「モモちゃんにも、わざわざ週末の大事な時間をバカな弟のために浪費するわけだから、約束通り美味しいご飯をご馳走するよ」
俺とモモは、一旦兄貴と一緒に研究室の入っているオシャレな建物から外に出た。
「大学病院の検査室はそんなに遠くはないし、天気も良いから歩いて行こうか」
確かに研究室の入っている建物の3ブロック先にはすごい大きな、いかにも『大病院』という感じの入院棟が見え隠れしていた。
でも、俺たちはその入院棟の手前にある低層棟に入って行った。
丁度、入院患者や一般診察に訪れる人達の玄関からは見えない場所に低層棟の入り口があるので、俺たちがフラリと低層棟に入って行っても気がつく人は殆ど居ないだろう。
建物に入ると、そこにはキヨシ先生の友達である助教のタクヤさんがニコニコしながら待ち構えていた。
「やあ!こんにちは。ようこそ僕たちの施設へ!」
タクヤさんは、部屋の周りを手でグルリと示しながら話し続ける。
「ここは大学病院の検査室であると同時に、僕たちの研究室分室でも有るんだよ。一台一台の装置の値段が宝くじ一回分に匹敵するから、単独で持つよりも負担は軽くなるんだ。まあ、お互いに上手くスケジュール調整が出来るという前提なのだけどね」
「えー?一回300円の宝くじ料金で良いんですか?随分安いんですね、レンタルなんですか?」
モモがそこでボケる。
「おい!モモ!そこはボケるところじゃないだろ。宝くじの一等前後賞が当たった時の金額だよ」
俺は慌てて、モモのフォローに入る。
「あ!そうか、失礼しました。ペコリ。なんかこういう機械って金銭感覚がマヒしちゃうんですもん。これでお昼のお弁当いくつ買えるのかしら?」
モモはさらにボケる。
「まあ、確かに庶民の感覚からはかけ離れてるもんなあ。こんな物に数億円もするとは思わないもんなあ」
タクヤさんは、モモのボケにも一切動揺せずに、逆にフォローして来る。
測定室には大きめのモニター画面がいくつも並んでいるが、ガラス製の仕切りの向こうには白いプラスチック製の大きな箱が置いてあるとしか思えない。
真ん中には丁度人1人が寝転がれる簡易ベッドとベッドごとその箱の真ん中の穴に入るような移動装置がポツンと置いてあるだけだ。
これは強力な磁力を中止に向かって放射して脳の中身を輪切りにしながら脳の状態を細かく観測する機械だ。
磁力は電流に比例するから、一般家庭の電流の何万倍もの電流を流す。普通の金属では発熱して溶けてしまうので極低温で電気抵抗がゼロになる金属を電磁石として使っている。
この大きなプラスチック製の箱は実際は巨大な魔法瓶で電磁石を極低温に維持する為に必要になるのだ。
「強力な磁石になるから、これで測定される人は金属製の物を身につけていてはいけないんだよ。歯の詰め物とかはどうする事も出来ないが、アクセサリーは測定する時はご法度になる。だから、今は『はかる君』も外してくれ」
タクヤさんは、俺が付けている『はかる君』を指差す。
「一週間付けっ放しだったので、なんとなく親しみを感じていたはかる君ともしばしの別れか、あ、ベルトもダメなんだよな」
俺はベルトも外し始めた。
かちゃかちゃ。
「そこにあるガウンを着て、下着以外は全部脱いでくれ」
そう言って、タクヤさんは俺に籠を渡してくれた。
「それじゃあ、始めるよ……」
タクヤさんは、測定装置の前に座って色々な機械の電源を入れだした。
パチ、パチ、カチャ、カチャ。




