キヨシ先生の秘密?
「君のお兄さんとはあまり会話した事は無いけど、凄い優秀らしいね……」
えー俺の兄貴の事も知ってるのか?兄貴は優秀だから俺と同じ公立高校には行かずに私立の有名な進学校に行ってたはずで、キヨシ先生と面識は無いはずなんだけど?
キヨシ先生は、そこから俺にトツトツと話し始めた。
……
まあ、タネを明かせば簡単な話なんだけど。君のお兄さんが所属する研究室で助教をしているタクヤって言うのと僕は親友なんだよね!
これは、ここだけの話にして欲しいんだけど。僕が彼と知り合ったのは、ある大学の医学部でなんだ。僕も彼も医者になるつもりで医学部に入って死に物狂いで勉強したんだ。医者になるのには本当に覚える事も技術的に学ぶ事も多いから大変なんだよね。一応6年間の期間はあるけど全然時間足りないよ、ほんと。
医学部を卒業して医師免許を取って研修医にはなったんだけど、結局は医者にならずに別の道に進んじゃったんだよ。
僕はもう一度大学に入って教員免許を取って先生になったし、彼ももう一度理学部に入りなおして今じゃあ脳科学の研究室では結構有名な所の助教だからね。まあ、助教って言っても、助教授じゃなくて、助手に毛が生えたような感じらしいけどね本人の弁によれば。
医者って言うのは、なぜ?を求めるのではなくて、どうしたら直せるの?を考える職種なんだ。どうしてこの病気になったかを色々と考えるより、今までの治療方法のなかからどれを使うのが最も良いのかを瞬時に判断して対応するために、膨大な経験と知識と技術が必要な業種だ。
なぜ、どうして?を考えていても患者さんは治らないからね。考えている暇があったら手を動かせ!なんだ。
世界中の研究者が作り上げてきた、症例とそれに対応する治療法を瞬時に判断して、患者さんに実践するのが医者という職業だ。ある意味、究極の人を治す「職人」とも言える。
ところで、昔からある言い回しで「病は気から」ってあるだろう?色々な場所で言われてきているよね。紀元前の中国の書物にも表れるそうだから、まあ嘘では無いはずだ。「気」については見える物でも無いしよく分からない所もあるので医療関係者としては真面目には考えていない。まあ、患者さんに声をかける時の一般的なフレーズみたいなもんかな。
実は僕たちは、その触れてはいけない領域に足を踏み込んでしまったんだよ。
手を動かさずに考えだしちゃったんだ。人を治す前に、人が自分の意思で治るのが一番いい事だからね。ただし、そうなると医者はあがったりさ!
その結果、まあ僕たちは医者の世界からドロップアウトだ。まあ、僕はこうやって教育の道に進んだけど、彼はまだまだ「気は病」を追い続けているんだよ。
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