やばかった!
人間、本当にヤバイ時には軽くパニックになって、どうでもいい事ばかり考える、って聞いたことがあるけれど、今がまさにその状態だ。パニックど真ん中!
そんな明日の試験の事なんかより、今この瞬間の対応をどうしたら良いか考えなきゃいけないハズなんだけど、なんかどうでも良い事ばかりが浮かんでくる。
今日のモモは可愛かったなあー、とか。
モモと食べたランチセットは今一つだよなあ、あの金額であのクオリティでは若者はだれも入らないぜー、とか。
明日の試験範囲は数学の教科書何処までだっけ?とか。
明日の昼飯は、食堂に行こうか生協でパンを買おうか?とか。
俺って、考える事はそこじゃないだろう!っていう事しか浮かんでこない。
まあ、実際の所全然苦しい訳でもないし、なんか緊迫感はないんだよな。
もしも溺れたりしたら、それこそ夢中で体を動かしたり、何かの動作を体が反射的に行っている中でのパニック状態だろうから、世間で言われているように走馬灯が俺の人生の色々な事柄を映し出してくれるんだろうなあと思うんだけど。
実際問題として、全然困っている事はないもんだから、パニックになってはいるのだけれど、なんかトンチンカンな方向に俺の走馬灯は走っている感じなんだよな。パカっパカっ。
バタバタ、バタバタ、
遠くの方から誰かがものすごいスピードで近づいて来る音が聞こえた。
バタンっ!
俺の部屋のドアがすごい勢いで開く音が聞こえた瞬間、いきなり俺の体が誰かに揺さぶられた。
「ケンジ、ケンジ!、ケンジ!、大丈夫?、あたしの声聞こえてる?」
モモがすごい勢いで俺の体を揺すりながら、耳元で大声で俺の名前を呼んでいる。
それと同時に、いきなり自分の体が自分になったように感じた。
さっきまでは、モモが体を揺さぶっているのを外から眺めていた感覚だったが、
突然内側から揺さぶられる感覚が現れてきた。
たった今、自分の体と自分自身が繋がった!という感じだ。
「うるさいなあー、大きな声を出さなくても聞こえてるよ、モモ」
少し間延びした返事をしながら振り返って後ろに立っているモモの顔を見ると、彼女の目には大きな粒が光っているのが見えて一瞬ドキッとした。
「本当にっ、どうしたの?ケンジ!、あんた、今ここで変な格好で固まってたのよ!」
「このまま、何かあったらどうするつもり?、あんたがいなかったら、あたしが困るじゃないっ!、もうっー」
「ごめんな、モモ。そして、ありがとうな、モモ」
実際の所、モモが来てくれなければどうなっていたのか分からないんだもんな。
ここは、十分お礼をするところだよなあ。うんうん。
でも、なんでモモが俺の異変に気が付いて、俺の部屋に飛び込んで来れたんだろう?
まあ、モモの家と俺ん家は歩いても5分とかからないし、走ればアッという間ではあるんだけど。
異変に気が付いたこと自体が不思議なんだよな?
もしかして、愛の始まりなのか?
とか馬鹿な事を考えれる余裕も生まれてきた。
まあ、いづれにしても元に戻れて良かったよ。




