最後の乾杯
あれから何日経ったのだろう。
私がこんなになったのは。
最後に一言だけ
ありがとう
これだけ言えば私は天国に行けるのかな。
虫一匹潰せない人は自分の弱さを知っている。私は唯一母親にははっきりと感情が伝えられた。
私は一人っ子で家は農家をやっている。わたしが家を継がなければ実家は廃業してしまう。しかし私には夢があった。私は音楽でご飯を食べていく。そう言って家を飛び出し、東京の渋谷で10年間暮らしていた。酒タバコギャンブル、いろんなことをした。かっこいいバンドマンはすべての遊びを知っていなければいけない。そう思い込んで。
ある日、親戚から母の訃報を知らされた。知らされた時にはもう家は農家をやめ、家は売り払われていた。
正直どうでもよかった。実家が廃業しても私はまだバンドマンの夢を諦めていないし、まだまだ伸び代はある。
仕方なく母の墓参りに行った時、私はどんだけ苦しい生活をしていたかを知ることになった。母の墓にはいたずら書きをされており、借金取りらしい人々が親戚の家を何度も訪れては暴れ散らかしていた。母の訃報をくれたおじさんにあった。母の遺書を私に渡してきた。それはそれは力がこもっていない字をしていた。
あなたは弱い子だった。静かでひとりぼっちでいつもかわいそうだった。でも音楽に出会ってバンドを始めて弱い子ではなくなった。でも強さを履き違えている。弱い子は弱い子らしくしないといつか本当に強い子にあったときに潰されてしまう。だからあなたはよく考えて強い子になりなさい。
母の遺書の意味はわからない。私は最後に音楽を作り、母への怒り、憎しみ、そして愛情を歌にした。
静かなる乾杯という歌を。
10年も経ち、始めて母と乾杯をする。それは母の墓て私が作った曲を聴きながら。
私は静かに一杯お酒を飲み干し、最後の戦いに行ってくる。私の人権は失ってしまう戦いに。
母の借金を返しにきました。私の体で返します。