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皿洗いと情報屋と疑念と

「やはり我が友は騙されやすいと思うのだがな?」


「そうかな?」


「うむ。名も知らぬ相手を信ずることを責める気はないが、多少は疑ってかかるのが常であろう」


「うーん……昔からすぐ忘れられていたからね。すぐ忘れるだろうからいいやって気持ちがあったかも」


「そこだ。我が友はそこが甘い。例えばこの我が唐突に裏切ったとしたらどうするのだ?」


「悲しいけど……仕方ないね」


なぜか大きなため息をつかれてしまった。


「ところでここは寝食をするところなのであろう? 我が友は何も口にしなくてよいのか?」


「うん。お腹は空かないけど、疲れを取るために寝ることはあるかな。そういう君こそ、何か食べないのかい?」


「我は元より魔力が主食。食したい時に勝手に食しておる」


「そこの色っぽい兄さんや、折角酒場に来てるんだからなにか召し上がってくんなよ」


女将が来てしまった。


「む、だが最近1文無しに近い状態になったところでな。精々この水くらいしか払えん」


「あらら。なら皿洗いでもするかい?」


「ふむ……ならばその皿洗いとやらの対価分だけ頂こう」


「あいよ」


いつこっちに目を向けるかヒヤヒヤしたけど、安心した。「いつも通り」だ。


「我が友よ」


「なにかな?」


「そこまで自らの存在を希釈する必要はなかろう?」


「これも呪いの1つでね。ボクは自分から話しかけない限り存在を認められないんだ」


ある意味便利な呪いだけどね。


「……そうか。我が友がそれでいいなら我は何も言わぬ」


「あいよ、お待たせ! うちの名物だ。まぁ皿洗いの対価だから1品だけだがね」


「ほう、これはこれは」


うん、楽しそうでなにより。






友が皿洗いをしている間ボクはこっそり酒場を後にした。

どうせしばらく出てこないだろうし、どこに行こうかな。


「さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! かの有名な勇者様と悪名高き魔王の戦いの最新情報はここ、出張情報屋でしか聞けないよぅ! さぁさ、おひとつ足をお止めになってお聞きなせぇ!」


勇者と魔王……


「まずは勇者様だが……なんと、かの大賢者様にお会いになるため海を渡り閉ざされた塔に向かったとの事だ! 信用性がないだって? 御安心を! ここから2つ離れたエルシアの国の港から出港なさったと、この情報屋しかと耳にしたんでな! 契約の呪文も付けたんでそりゃ信用性も高いってもんよ!」


契約の呪文。かけられた方が嘘をつけばかけた方にすぐ分かるっていうあの。


「そして魔王だが……少しずつ侵攻しているみたいだな。ついこの間カザテンの国に現れたって噂だ。流石にこの情報屋も命が惜しいんでな……そこは勘弁してくんなせぇ」


カザテンの国。火を噴く山の頂上に竜が封印されてるんだっけか。


「今回はこの辺でお開きだ! また新しい情報が入り次第またこうやってみんなに知らせるからな!」


そうして人々ははけて行った。

ボクはその様子を少し離れたところで見ていたけど、


「で、アンタは何がご入用だ?」


後ろからそう声をかけられた。


「……何とは?」


「またまたご冗談を。アンタの目は欲しがっている目だぜ?」


呪いが効いていない?


「何も必要ないかな。じゃ、約束があるんで」


そう言ってその場をあとにしようとして、


「『獣』の居所、知りたいでしょ?」


足を止めた。


「足を止めたってことは、知りたいってこと」


「何を言ってるのかさっぱり分からないね」


「アンタはこの情報屋の言葉に足を止めた。それが何よりの証拠、違うかい?」


「……仮にそうだとしたら?」


「タダで情報提供しようじゃないか」


……ふーん。


「何かしら裏がありそうだね」


「この情報屋、生まれてこの方嘘偽りなく情報を提供しているんだぜ? この口から出た言葉は一切嘘をついていない」


「じゃあ、タダで?」


「タダで。何一つ偽りなくタダで情報を差し上げよう」


「聞くだけ聞こう」


「アンタ、『獣』と一緒にいるだろ」


突然ぶっ込んでくるとはね。


「……」


「あぁ、答えなくていい。こっちは勝手に情報を提供しているだけだからな。その『獣』は本当に『獣』だと思うか?」


「どういうこと?」


「『獣』が契約に対価を求めるとでも?」


「……」


「奴らは神に反逆したんだぜ? その『獣』が契約するのに対価を必要と? しかも『獣』が契約? おかしいと思わなかったのか?」


おかしいとは思うよ


「どうしてそれを知っているんだい?」


そのセリフ。


「そこから先は有料だね」


「……せこい商売してるって言われない?」


「アコギな商売だなとは言われるよ」


コイツ……


「まっ、今回はここまで。疑問に思ったなら行動に移せばいいと思うけどね」


そう言って情報屋はその場でクルリと回転して消えた。


「契約……か」


ボクは情報屋が消えたしばらく後そこにいた。


本当に友は友なのだろうか。


情報屋の台詞が頭の中で渦巻いていたが、


「……そろそろ戻らないと」


踵を返して宿屋に戻ることにした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


仕事で忙しかった……!(言い訳)

まぁ、書く時間があったのに書かなかったのは私のせいなのですが。

次はもう少し早く投稿できるように頑張ります。


次回は……そうですね、ちょーっと面倒なことになりそうです。


それではまた次回。

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