完全敗北!?守れなかったもの
いつもありがとうございます。黒砂糖です。
更新が遅くなってしまい申し訳ありません。
今回から趣向を変えて短めで更新頻度を上げようと思います。
まだ手探りですが、よろしくお願いいたします。
今は戦いの真最中。
目の前にいるのは、前回は逃げることすら叶わなかった大男
しかし、今回は仲間もいるし両手も自由に使える。
盗賊を村から追い出すぐらいは俺でもできるだろう
正面からぶつかり合う形になった俺は大男の大ぶりの拳をしゃがんで避けた
俺はすかさず、カウンターの拳を繰り出す。
顔面に直撃した大男は、体勢を立て直したがダメージはあったようだ
「兄ちゃん、いいパンチ持ってるじゃねぇか!これならどうだ?」
男は体制を立て直したと同時にさっきと同じように大ぶりの拳を振るった。
今度はフットワークのように横へヒラリとかわし、カウンターを狙う
「・・・ッ!?」
しかし、完全に避けたはずが、頬に痛みを感じ後ろに飛んで体制を立て直す。
頬を伝う感触は、紛れもなく血だった。
完全に避けたはずが頬に傷を付けた。風圧が斬撃を起こしたのか?
「おっと。驚いているようだな。だが、まだまだ行くぜ?」
現状の把握をしているところを狙われ、連続のラッシュが襲い掛かる。
ガードをしても避けても俺の身体には切り傷が増えるだけだった。
まるで、刃物で連続突きされているような切れ味だ。
「くっ…!」
「おらおら!どうした!」
連続ラッシュは止まる気配はなく、ダメージは確実に蓄積されていた。
このままでは…。
「ピュゥイ!!」
諦めかけていた刹那、背中に隠れていた白イタチが鳴き声を上げると同時に俺の周りに蒼炎が立ち上った。
男は咄嗟に後ろへ引いたが無傷というわけにはいかなかったようだ。
メラメラと燃える蒼炎の勢いは一瞬だけで、すぐに小さくなり消えた。
「…お前がやったのか?」
「ピュゥイ!」
俺は肩に移動したイタチに目を向けた。
返事をしたように鳴く姿は先ほどまでとは少し違うものだった。
眼は蒼い宝石のように変り、毛が逆立ち炎のようにユラユラ揺れていた。
「このガキ!何しやがった!」
動揺を隠せない大男は俺を睨み般若の如き形相で言い放った。。
だが、俺も同じ気持ちで何が起こったのか…
「…魔王様。魔法使えるの?」
不意にモナが問いかけてきた。
モナを見つけると同時に周りを見ると、ザコと言わんばかりに大男以外の盗賊は地面で伸びていた。モナはもう戦いが終わっていたようだ。
「え?これが魔法なのか?…こいつがやったんじゃ?」
「…魔法はイメージ。…さっきの炎も、多分また使える。…イメージして。青い炎…」
俺は良くわからないが、浮かびやすいゲームのキャラを想像してみた。
手から炎を生み出す賢者
メラメラと燃え上がる蒼炎
俺はゲームのキャラさながらに右手を前に出し手を広げる。
手の上に炎が現れるようにイメージして。
すると、右手が少しずつ熱くなっていく。
そして、小さいながらも右手の上に確かに火種が現れた。
「ピュゥイ!」
鳴き声に呼応するように火種は大きくなり、バスケットボール並みの蒼炎がメラメラと燃え上がった。
…不思議と手は熱くない。術者には耐性があるのだろうか。
ヒューッ
「・・・ッ!!」
隙だらけの俺に吹き矢が飛んでくる。
俺は咄嗟に右手の炎で防ごうと、矢に合わせて身体を守る。
炎で受け止めた矢は炎に当たったところから灰に変わり、当たる前に全てが灰となった。
「チッ!吹き矢も聞かねぇか!」
発射元は、もちろん盗賊の大男。
矢が灰に変わるのを見て舌打ちをした。
…この炎、便利だな。
「…あとはあの人だけ。私に任せて…!」
モナが俺の前に出て杖を構える。
俺は、静かにモナの頭に左手を乗せて前に出る。
「…あいつは俺がやる。」
モナは不思議そうな顔をしていたが、潔く杖を下してくれた。
元をたどれば、一度はモナに救われている。
…今度こそ俺が守る
「…炎を扱えるぐらいで調子に乗るなよ。ガキが!」
男は、まっすぐと俺に向かってくる。
この炎の力はまだまだ未知で、何が起こるかわからない。
でも、さっきと同じ炎だとすればダメージは与えられるようだ。
俺はさっきと同じように男の大振りを避け、次は炎を当てるように狙った。
単調な攻撃はサラリと避けられたが、炎が軽く当たった。
ダメージがあるようには見えなかったが、少しよろめいたのを俺は見逃さない。
すぐに、左拳でボディブロー。そして最後だと言わんばかりに、背中へ右手の炎をぶち込んだ。
炎は燃え広がることもなく、男の身体に吸い込まれるように消えていった。
そして、力尽きたように男はその場に倒れこんだ。
効果のほどはわからないが、大男は動かない。
「やった…のか?」
俺は、倒れている姿を見てもまだ信じられていない。
動かない姿は、勝利を物語っていたが自分の力は何なのか恐怖と疑問が入り混じっていた。
「魔王様…すごい」
「ピュゥイ!」
周りの声で我に返り、疑問を飲み込んで勝利を受け入れた。
しかし、勝利の余韻は長くは続かなかった。
「フフフッ!素晴らしい力だ!」
「・・・ッ!?」
どこからともなく不敵な笑みが聞こえた。
声の主はすぐに分かった。
盗賊が入ってきた入り口に、農村には似つかわしくない白い軍服のような恰好をした鋭い目の男が立っていた。
「…誰だ!?」
「フフフッ。あなたが知る必要はない。」
俺の問いを簡単に吐き捨てると、部下と思われる鎧の騎士が後ろから現れた。
軍服の男は、見下したように倒れている盗賊の大男を足蹴にする。
「…盗賊風情に任せたのが間違いだったか。お前たちに後は任せる。」
そう言って5人の騎士に指で指示をすると、すぐに出て行った
それと同時に、5人の騎士は村人たちの家を荒らし始めた。
畑を踏みにじり、家に無断で侵入し略奪。まさに地獄のような光景だった。
「…ダメ!止めて。」
モナが必死に訴えるが、騎士たちは止まらない
急な出来事で、状況を理解するのに数秒遅れてしまったがモナの声で我に返る。
俺は騎士たちを止めるため走り出した。
「やめろ!!」
俺は1人の騎士に殴り掛かった。
鎧は固く、拳はダメージを与えるに至らなかった。
騎士はゴミを払うかのように俺を押しのけた
「キャァァ!!」
「うわぁぁ!!」
「やめてくれー!」
俺が一人の騎士に手間取っている間に、他の騎士は他の家屋を襲撃している
何が起きているんだ?騎士は人を守るのが仕事じゃないのか?
俺は無力な自分に腹が立った。何度も殴り掛かったが簡単に振り払われた。
なぜか炎は使えなくなり、何度殴ってもダメージはない。
モナと村人も必死の抵抗を示したが勢いは収まらず、食料や金目のものは全て奪われた。
必要なものが揃うと、「また来る」と言い放ち騎士たちは去っていった。
残されたのは、数日と持たない食料と荒らされた畑。
そして、自分の無力さだけだった。
俺は無意識に過去の記憶を遡っていた。
小さいときはヒーローに憧れ、弱いものを助けていた。
幼くも守ることの大切さと守るべきものを理解していた
俺には大切な人がいた。今では、顔も名前も思い出せないが…。
なぜか、思い出す度に罪悪感と恐怖に襲われて記憶が途中で途絶える。
…だが、今ならわかる。
俺は、大切な人を守れなかったんだ。
その記憶を封印して忘れようとしている。
今は、まさに同じ感情。…また救えなかった。
守ることのできなかった罪悪感。大切なものが消える恐怖。
「…魔王様。私、みんなを守れなかった…」
隣で泣きじゃくるモナが言葉を漏らした。俺と同じ気持ちなのだろう。
いつものように頭を撫でて励ますが、かける言葉は見つからない。
俺は黙ってモナが落ち着くのを待ち、自分の不甲斐なさを噛み締めた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
1話は短めになりますが、その代わりに更新頻度を上げます。
また、やり方が変わるかもしれませんがご了承ください。
もし、良い方法などあれば教えていただければと思います。
これからも、よろしくお願いいたします。