動物愛護!?守るべき物
いつもありがとうございます。黒砂糖です。
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俺は暗闇の中、左手を壁にあて出口を探してさまよっていた。
…あの時、玉座の下を落ちてから目が覚めると石のように固い床で寝ていた。
洞窟か何かだと思うが、ここがどこだか検討もつかない。
数十分は歩いたが少し登りの坂になっている所や曲がっている気がする道もあったが、分かれ道は確認できていない。
左手をついて歩いているため、右に分かれ道があった場合は気づかないが…。
「はぁ、このまま一体どこまで歩けばいいんだ?」
俺の体力は、トレーニングで問題なくついてきているが、気力が真っ暗闇で出口もわからない状態が続き限界だった。
だが、ずっと同じわけでもないようだ。少し前から手に感じる壁は湿ってきている。
水があるかもしれない。そう思い込んで踏ん張っていた。
ピチョンッ
水の音…上から下へ振り落とされる涙のような微かな音は確かに俺の耳へと届いた。
何かを追い求めるように俺は歩く速度を上げた。
一歩…また一歩と、歩を進めるごとに水の音は確かなものとなっていく。
ついには、滝のような激流の音が聞こえだした頃。そして、微かな光が木漏れ日のように差し込む滝の裏側へとたどり着いた。
マイナスイオンを全身で受け止めて活力がみなぎってきた。
「外の空気が気持ちいい!!」
滝を回り込むように出た先は、数十メートルはあろう樹木が立ち並び、歌声とも言うべき鳥のさえずりが木霊する平和な森だった。
さっきの滝といい、この森といい、パワースポットか何かなのか?
ガサガサッ
「…ッ!!」
平和な大地に安心する俺を目覚めさせるように、茂みがざわめいた。
俺は臨戦態勢を取りつつ音のする茂みのほうへ注意を向ける。
ガサガサッ
「…ピュゥイ」
茂みから現れたのは、真白の体毛に宝石のルビーのような紅眼が特徴の全長20㎝ほどの小動物だった。例えるならイタチだろうか。
しかし、その目は虚ろでひどく弱っているようだった。
俺は、動物愛護派なので放ってはおけない。
警戒されないように近づくが、渾身の力で威嚇をしてくる。
俺も負けじと警戒心がないことを伝えようとするが駄目なようだ。
だが、イタチは威嚇をしたまま目が弱まっていき遂には倒れてしまった。
俺はすぐに駆け寄り生死を確認する。…鼓動は手を伝って感じる。生きているようだ。
しかし、俺の手はもう一つの感触を感じとった。血だ。こいつは怪我をしているのか。
「…あいつ、どこ行きやがった?」
イタチのいた茂みのさらに奥から声が聞こえた。
とっさに茂みへ身を隠し、正体を確認する。
…どうやら3人組の男のようだ。バンダナに頬傷、小さなナイフ。
見た目は盗賊やゴロツキと言ったところか。
何やら探し物をしているようでナイフで草木を掻き分け文句を言っている。
「あの時、お前が仕留めときゃ大金持ちだったのによぉ」
「うるせぇよ!独り占めしようとか考えて邪魔したんじゃねぇのか?」
何かもめているようだな。俺は面倒を避けたいことと、このイタチを助けたい気持ちでこの場を離れる選択をした。
その前に、ゴロツキのリーダーであろう大男が仲介に入り話し始めた。
「…お前たち、いい加減にしろ!今回の獲物は特徴でもある紅眼が最高級な宝石として取引されるんだ。奪い合わなくても余るほどだぜ?」
「・・・ッ!?」
宝石の紅眼…まさか!
「…改めて探すとしようじゃねぇか!あの…白イタチを!」
「…お前たちがやったのか!」
俺は感情の赴くまま、イタチを抱きかかえて立ち上がった。
「…誰だ!」
「あっ兄貴!あのガキ、イタトを抱えてるぜ!」
俺に気が付いたゴロツキ達は、俺がイタチを抱えていると気づいた瞬間にナイフを俺のほうへと向け始めた。
「…さぁ兄ちゃん!そのイタチをよこしな。それは俺たちの大事なしょうひ、ペットなんだよ」
このイタチは死にかけてる。多分、そうしたのはこいつらだろう。
そして、渡せば紅眼狙いで殺されるだろう。…そんなことはさせない。
俺に何ができるか、付け焼刃の戦闘スキルで立ち向かうしかない!
「黙ってんじゃねぇ!早くよこしな!」
男の一人がイタチに手を伸ばした。
それに対応するため、片手でイタチを支えたまま相手の手より早く拳を叩き込んだ
「ぐぅえぇ!」
俺の拳は男の顔面にクイーンヒットし、茂みの中へと飛んで行った。
その状態に呆気に取られ停止していた二人はすぐに我に返り向かってきた。
「このガキァ!なめやがって!」
リーダーを残し、もう一人の男がナイフを俺に突き立てたが関係ない。
俺は手に持つナイフを蹴飛ばし、今度は腹に強烈な一発を叩き込んだ。
男はお腹を押さえて倒れこみ気絶した。
「おぉ。ただのガキではないようだな。俺はそこの雑魚共とは違うぞ。」
「・・・」
俺は男を黙って睨み、出方を伺う。
あまりモタモタしている暇はない。
ここは速攻で決めて近くの村を探さないと…。
「お前も一発で終わらせてやる」
俺は一歩踏み込み全力の一発を叩き込む。
しかし、避けられた拳の後に強烈なボディブローが迫っているのが見えた。
咄嗟にガードをしようとするが片手にイタチがいる。
俺は腕の位置をずらしボディブローをもろに腹に受けた。
「グフッ!…ゲホッゲホッ。」
続いて大ぶりのストレートが飛んできたが、これはさすがに回避。
少し距離を取って体制を立て直す。
「フンッ!そいつをかばったか。両手が使えていればカウンターできたものを」
確かにいつものような動きができない。
動物をかばいながら戦うのは初めてだ。揺れを最小限に抑えるためにも、パンチも本気で打てない。
カプッ
「・・・ッ!!」
手に針を刺したような痛みがした。
手元を見るとイタチが指に噛みついていた。
噛む力は弱く、最後の抵抗と言わんばかりだ。よほど人間を憎んでいるのか。
「なんだ?ハッハハ!お前も全然なつかれていないな!もうそんな奴おいて逃げたらどうだ?」
左手はどうせ使えない。噛まれたって構やしない。
でも、あんな奴に渡すわけにはいかない。
イタチはまた俺の腕の中で眠りについた。
…よし、逃げるか!
俺は滝とは逆の方へと走り出した。
「あっ!?こら、待て!」
男も俺に気が付いて追いかけてくる。
走るのは苦手なので足は遅いだろう。でも、どこかでこの子を預けられれば或いは
ヒュンッ
「うわぁ!」
何かが飛んできた。矢のような針のような。
俺は走りながら一瞬振り返る。…吹き矢だ!
あれに当たったら麻痺か眠りか…最悪は致死性の毒がお決まりのパターン。
これを避けながら逃げるのは難しい。
「…ッ!!」
矢は俺の足をかすめた。
しかし、問題はなく走り続ける。が、すぐに足に違和感が…。
俺はそのままバランスを崩し、イタチを抱え込むように体で覆うと、そのまま体を地面に引きずった。
「…やっと捕まえたぞ。さぁそいつをよこせ!」
おれは、さらに体を丸め込み男の手が届かぬように抱え込む
無理やりはがそうと、背中を何度も踏みつけられたが俺は離さない。
このままじゃ反撃ができない…。
ヒュォーッ
突如、突風が押し寄せる。
「ぐっ!なんだ!?」
男はバランスを崩し、尻もちを付いた。
大男の身体を倒すほどの突風。自然の者ではないだろう。
しかし、麻酔が効いてきた…。反撃は出来そうにない。
「…ここは…任せて」
「君は…!?」
麻酔がピークに達して焦点が合わない。
女の子の声で聞き覚えがある気がするが…。
そして俺は力尽き、眠りについた。
差し込む木漏れ日が、目覚めを促す。
川のせせらぎと爽やかな風が心地いい川のほとりに俺は寝ていた。
そして、隣では猫が一緒に寝ている。
猫と一緒に寝るなんて自宅を思い出すなぁ
…ん?ネコ??
俺は手探りで猫の正体を探る。
俺の大勢からは頭が見えるだけで猫耳がわかるだけで、全体がわからない。
とりあえず頭を撫でて触ってみる。
「んぅ…みゃー…」
本当に猫のようだが声には覚えがある…。
「…魔王様…起きた?」
俺の方を向いた顔は屋敷であった猫娘のモナだ。
さっきのゴロツキから助けてくれたのか?
「あ、あぁ。ありがとう。何があったんだ?」
俺は重い体を持ち上げて起き上がった。
くっつくように寝ていたモナも一緒に起き上がった。
「…魔王様、見つけた。この子…庇ってたから助けた」
モナの指さす先にはさっきの白イタチが嬉しそうに寝ていた。
傷は見当たらず、どうやら大丈夫だったようだ。
「モナが頑張ってくれたのか。ありがとう。その子も治してくれたのか」
俺は褒めるように頭を撫でた。気持ちよさそうにして喜んでくれているようだ。
本当にネコみたいだな…。
「…少し違う。…この子の傷は助けた時に…治ってた」
「えっ?」
俺の反応に不思議そうに首を傾げるモナを見ながら記憶を呼び出す。
あの時は、確かに酷い出血ですぐに治るようなことはないはず…。
まぁ助かったのなら良かったか!
「それより、モナは何でこんなところにいるんだ?」
「…それはこっちのセリフ。魔王様は、城にいたはず」
「えぇと、それは…。」
俺は、城の隠し通路について話そうとしたが、長くなりそうなので止めた。
モナに出会えたわけだから帰れない心配もなさそうだ。
「そっそれより、この子どうしたらいいかな?盗賊に狙われてたみたいだし」
俺は話をはぐらかすためにイタチに気をそらした。
モナは不満げそうに俺を見ていたがイタチを抱きかかえた。
「…この子は、珍しい動物。…みんな殺された」
モナは悲しそうな表情を浮かべる。
まるで自分の事のように悲しむ顔を見て放っておけないと動物愛護本能が悟った。
「…村か街を探そう!どこか世話してくれるところがあるかもしれない」
「それなら…いいとこ知ってる」
モナは立ち上がり、俺の手を引いた。
早くしろと言わんばかりに手を引っ張り、川を渡る。
どこへ行くのかと聞くと、近くにモナが世話になっている集落があるという。
そこは、みんな優しくて畑がたくさんあるらしい。
自然と共に生活する平和な風景が浮かんだ。そこなら大丈夫そうだ。
すると、モナの手の中でイタチが目を覚ました。
俺に気付くと俺の肩に飛びつき、首の周りをグルグルと回った。
さっきまで威嚇していた姿とは違い懐いているようだ。
カプッ
「痛っ!」
撫でようと手を近づけると指を噛まれてしまった。
…やっぱり懐いてはいないのか?
「…あそこ」
森を抜けて道が開けたところから下に集落が見えた。
大きくはないようだが、人の姿が確認できる。
俺たちは山道を下り、集落の入口へと向かう。
ラコー村。農村という言葉が最初に浮かぶ小さな集落だ。
すれ違う人は暖かい笑顔で「ようこそ」と歓迎してくれた。
俺はモナに連れられるまま村の奥へと連れていかれた、
足が止まったのは1件の小さな家だった。
すると、モナは手を放して扉の中へと入っていった。
俺も遅れて扉の中へ入った。
「…ばぁちゃん。来たよ」
扉を入るとモナは椅子に座った老婆に寄り添っていた
「…おぉ。その声はモナかい?久しいね」
老婆はモナに気づくと微笑んで頭を撫でていた。
すると、俺に気づいたのかこっちを向いた。
「そこに誰かいるのかい?」
「…ばぁちゃん。あの人が新しい…魔王様。」
「そうかいそうかい。あなたも近くにいらっしゃい」
老婆は手招きして俺を呼び寄せる。
俺は言われるがまま近づいた。
「あなたはいったい…」
目が悪そうで手探りで俺を探していたが目線は確かに俺を捉えていた。
モナも安心しているようだし悪い人ではなさそうだ。
だが、魔王と聞いて驚かないのは不自然だ。
そんな疑問を感じていると老婆は俺の居場所を見つけて顔に手を当てた。
ピリッと電気が走るような痛みが脳に感じたの気のせいだろうか。
「…あなたが異世界の人でしたか。少し記憶を見せてもらいました」
「・・・ッ!?」
記憶を見られた?どうやら何かの能力があるらしい。
さっきの痛みはそのせいか。
俺は少し距離を取る。それをモナは不思議そうに見ていた。
「大丈夫。事情も少しは知っています。」
俺の警戒に気づいたのか、柔らかい笑顔を浮かべた。
どうやら魔王のことも俺のことも隠すことはできないようだ。
この人は何者だ?
「少しお話をしましょうか。昔々…」
世界を創った3人の神がいた。
一人の神は魂を生み出し育てていた。
一人の神は肉体を作り生命を生み出していた。
一人の神は死者の魂を浄化して導いていた。
世界は、魂の生誕・浄化・転生を繰り返し生まれた。
世界は、人類が生まれて数千年をかけて進化を繰り返した。
世界は、全知全能の「創造神」によって形作られた。
「神に祈りを捧げよ。オリンポス聖教会は進むべき道を示す」
「・・・」
「…王都ファレミスを中心に世界中に広まっているオリンポス教会の教えです。貴族や領主のほとんどは、オリンポス教会の信者で神を崇めています。この村は、そんな協会の教えに付いていけなくなった者たちが集まってできた村なのです」
「付いていけなくなったって…協会は何をさせているんですか?」
「協会は…」
その後も世界の事情について質問を繰り返した。
モナはすぐに飽きてしまい寝てしまった。
大体まとめると…
神の加護を受けるためと言って、無茶な納税を強要している
信教派の民は神の加護を信じて待ち続けている。
暴動を起こしたものは、処刑される。
そして、耐えるか逃げるかしか方法はなかった。
この村は自然が豊かで食糧には困らない。
その反面、盗賊や山賊に襲われることも多く苦しんでいた。
そこに、前魔王が現れて村を救ってくれた。
それ以来、村は魔王様を慕っていて冥界の皆とも仲がいいらしい。
そして、話はモナの話題になった。
「…あの子は捨てられていた所を村で保護したの。そして、数年前に魔王様に付いていくといって村を出て行ったの。それからは時々、村に帰ってきて盗賊たちをやっつけてくれる。優しくて強い子だよ」
「そうだったんですか…。俺もさっきは助けてもらって頼りになります。」
「…でも、あの子も悲しい過去を持っている。あの子を守ってやってください。新しい魔王様として…。」
俺は老婆にモナを託された。
少なくとも城までは送り届けないとな。
「…ところで、魔王様。肩に乗っている生き物は?」
俺の肩をジッと見る老婆は見えていないようで特徴を簡単に説明した。
そして、盗賊に追われている所を助けたので保護してもらおうと思っていたことを話した。
だが、老婆は驚いた表情で話を続けた。
「…ほぉ。それはまた珍しい生物を助けましたな。その生物は聖獣と言われて伝説にもなっている生物です。まだ子供なのでイタチのように見えるでしょうが、いつか魔王様の役に立つ事があるでしょうな」
「へぇ。お前そんなすごい生き物なのか」
カプッ
!!また指を噛まれた。もう何が不満なんだよ。
痛がる俺を見て笑っていた老婆は見えないまでも状況を把握したようだ。
「しかし、聖獣は人間には懐かないと聞きます。魔王様には何か特殊な才能があるのかもしれませんな。」
「キャーーー!!」
村の入口のほうから悲鳴が聞こえた。
俺は反射的に振り返り状況を確認するために声の方角へ走った。
入口には数人の盗賊が畑や家を荒らしていた。
その中には見たことのある顔もいた。
「よぉ、兄ちゃん。また会えるとはな。それに…俺の獲物を連れてるとはなぁ!」
大男が俺を確認するとすぐに叫びだした。
そう、この聖獣を追っていた大男だ。モナが倒したんじゃなかったのか?
「…魔王様。あの人たち…追い出す!」
俺の横ではモナが臨戦態勢に入り、想いを宣言した。
同じく臨戦態勢を整えた大男とその仲間もやる気は十分だ。
「あぁ。今度は本気でやってやる」
俺とモナは戦う気持ちを確かめ合い頷くと盗賊に向かって走る。
それに合わせるかのように大男も走り出す。
お互いの拳がぶつかるとき、戦いの火ぶたが切って落とされる。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次の話で主人公の戦闘スキルが開花する予定なので楽しみにしていてください。
モナちゃんとの共闘も必見です。