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能力覚醒!?秘められた力

続きを読んでいただきありがとうございます。黒砂糖です。

この作品は初作品になりますので至らぬ点があるかと思います。

よろしくお願いいたします。

魔王失踪から数時間・・・

俺は、魔王代理の適性判断のための試練を受けることになった。


試練…もとい拷問の詳細は聞かされていない。

今は何も聞かず、魔王の部屋を出て廊下の先にある小さな扉を開ける。


薄暗い狭い階段、どうやら階段を下るようだ。

まるで塔の中にいるようにグルグルと螺旋階段を下っていく。


数分、階段を下った先で扉を開け部屋に入る。

そこは、まるで城のエントランスのような大きなスペースが広がっている。

だが、誰もいない。広々とした空間に3人の足音のみが響き渡る。


よく見ると左右にはいくつかの扉があり、ここから様々な部屋へ行けそうだ。

すると、そのうちの一つの扉の前で足を止め、ゆっくりと扉を開けた。

ガチャッ。


中はこれまでの部屋とは違い妙に明るい。眩しいとさえ思えた明かりに俺は腕で目を守り、ゆっくりとその光に目を慣れさせた。


「あなたには、ここで試練を受けていただきます」


そういって手招きするように俺を部屋の中へと導いた。


「・・・ッ!」


目が慣れ確認したのは、息をのむ光景だった、

体育館並みの広い空間に、ゲームでしか見たことのないような怪物が何体もいる。

頭に小さな角が2本あり、体は青いものや緑のものがいる。この特徴は…オーガか?

そんな鬼のような魔物が10…いや20ぐらいはいる。


そんな鬼の視線は一斉に俺の方に注目が集まる。今にも食べられそうな恐怖の感情が俺を包みこんだ。

人間はこの世のものではないものを見ると絶句すると言うが、まさに今だ。


ただ、何より言葉を失ったのは鬼そのものではない。

鬼が…筋トレをしている状況であった。


象のように巨大なバーベルを軽々と持ち上げるものや、

パンチで鉄板をたたき割るやつ、

中には座禅で空中浮遊しているやつもいた。

そんな状況にこそ絶句してしまったのが事実だ。


「まさか、この方たちとスパーリングでもしろというんじゃないでしょうね…」


「フフフッ。それも楽しそうですが、少し違います。」


アイギスは楽しそうに笑うが予想は外れたようだ


「…悪いが、ベルゼはおるか?」


フェゴールは誰かを探すように呼びかけ、それに応えるかのように奥からひときわ巨体の大男が姿を現した。


「俺を呼びましたかな?ガハハッ」


2mはあろう巨体にやはり頭には2本の角。赤い皮膚が迫力を引き立たせている。

だが全力の笑顔と力強くも優しそうな声は、他の鬼とは少し違う気がした。


すると、アイギスが俺の手を引っぱり大男の前に引き寄せた。

大男と向かい合う形になったが目線は合うわけがなく、目の前には鍛え抜かれたうねる胸筋が存在感を放っていた。俺は、思わず目をそらした。


すると、大男が腰を落とし俺の目線に合わせて俺の顔をまじまじと見はじめた。


「うぅむ…。いい目をしている。見た目は太いだけで弱そうだけどな!ガッハハハッ!」


いかにも筋トレ好きの脳筋という感じだが…。正直1撃でやられる自信はある。


「…ベルゼ。事情は追ってお話いたします。今は何も聞かず、この者の素質を見定めてはもらえないでしょうか?」


「…アイギス様。それはどういうことですかな?見たところ、ただの人間・・・」


頭を掻きながら不思議そうな顔をして聞くベルゼだったが、何かに気付いたように表情が一変する。


「・・・ッ!!」


何かに気付いたベルゼはアイギスと俺を交互に見て状況を確認している。。

俺の顔になんか付いてます?


そして、ベルゼの疑問に答えるかのように小さく頷くアイギス。


「…では、後のことは頼みました。フェゴールと私は少し調べることがありますので」


そういって、アイギスは早々に部屋を後にした。

残されたのは屈強な男たちと満面の笑みを浮かべるベルゼの姿だった。


ここから地獄が始まることは想像に難しくなかった。

アイギスが出ていくと同時に鬼たちの視線は一層険しいものになった。

俺の人生はここで終わるのかもしれない…。


「じゃあ、早速だがお前の力を見せてもらうぞ!」


そういってバーベルに指をさすベルゼ。


まず、俺の体以上の大きさのバーベル…。もちろん上がるわけもなく撃沈

グハッ!


次にランニングマシン…。10分と持たずに撃沈

ガハッ!


さらに、腹筋、背筋、腕立て、スクワット!…撃沈

ゴフッ!


その他もろもろ、ロクな結果が出ない。

まぁ引きこもり続けてこの体系、仕方ないといえば仕方ない。

鬼たちの馬鹿にした笑い声や陰口が聞こえるが疲労でそれどころではない。


<測定結果>

総合力…5

筋力…1

体力…1

脚力…1

腕力…2


ここにいるものの平均は約180らしい

とても太刀打ちできるレベルではない。


「ガハハッ!これはまた、驚くほどに一般人の能力値だな!」

笑われた。馬鹿にされるのは慣れているが別の意味で心が折られているので再起不能だ。


「はぁ、それで?試練ってのは…何ですか?」


「試練か!それは俺を倒すことだ!今のお前では無理だがな!ガハハッ!」


こいつを倒す?この筋肉バカは一生かかっても勝てないだろう

それに試練なんだから時間かけて倒したんじゃだめだろうし…

もう積みだわ!終わったわ…


「だが、安心しろ!俺がお前を鍛えてやる!」


ドヤ顔で歯を光らせたイケメンスマイル。

いかついおっさんだからあれだけど…


「俺を鍛える?試練なのに鍛えて大丈夫なのか?」


「ガハハッ!細かい事は気にするな!お前にはな、秘めたポテンシャルを感じる。きっと強くなるさ!」


こうして、意味も分からぬまま鍛えられることになった。

体育会系の部活に入っていたらこんな感じだったのかな?入らなくて良かった…

そのせいか、周りの鬼たちが不良の先輩に見えてきた気がした。


それからは、がむしゃらに目の前の課題に挑戦し始めた。

体力アップのためのランニング

筋力アップの筋トレ

戦闘スキル向上のためのスパーリング


これが地獄の拷問か!休む暇もなく、筋肉痛でもお構いなし。

体力と精神力をギリギリまですり減らし、拷問とも言うべき毎日が繰り返された。。


俺は疲労と戦い続けて時間感覚がわからない。数か月は頑張っていたのではないだろうか。

部屋からの外出も禁じられていたため外の様子も見ていない。

俺はいつまで続けなければいけないのだろうか。


そして、今日の試練…。筋トレがまた始まった。


「今日は俺が相手をしてやる。さぁかかってこい」


ボクシングのリングのようなロープに囲まれた白い舞台の上で腕を回しながら挑発をする青い鬼。俺は慣れた手つきでロープの間を潜り抜けリングに上がる。


緊張で心拍数が上がり相手の睨みに震えが止まらない。

ゲラゲラと笑うヤジも今はそれどころではない。


カンッ!

ゴングの甲高い音が鳴ると同時に青鬼がすごいスピードで懐に入ろうと向かってくる。

俺もそれに合わせて臨戦態勢に入る。


…変な感覚だ。相手の動きは早いはずなのによく見える。

額をこぼれる汗。右手を振りかぶった顔面を狙う拳。

背後で声援かヤジか、声を張り上げる鬼たち


相手の動きに合わせて拳を握りしめる。不思議と拳の震えは止まっていた。

俺はパンチの打ち方は知らない。素人同然のへなちょこパンチだ。

だが、拳を振り終えた時には青鬼はロープまで吹き飛び気絶していた。


「やるじゃないか!やはり俺の見込みは間違っていなかったようだな!ガハハハッ!」


呆然と立ち尽くす俺の背中に強烈なビンタで祝福してくれたのはベルゼだった。

どうやら、俺は勝ったようだ。

自分でもこの力には驚いたが、今倒したのはこの中でも弱い鬼らしい。


「いやぁ、まぐれですよ。俺は元々、ヘタレのオタクですから・・・」


「・・・よくわからんが、まぐれではないぞ。お前は気付いておらんかもしれんが身体は十分仕上がっとる。こんな成長が早い奴は初めてだ!」


そう言ってニッコリといつものスマイルを見せると、おもむろに大きな鏡の前へと立たされた。鏡を見たことなんてなかったが、少しやせたか?


「さぁ服を脱いでみろ!」


「えっ!?」


俺は突然の事で驚いてベルゼの顔を見ると、着ていたシャツを持ち上げられ無理やり脱がされた。


「・・・ッ!!」


俺は鏡に映った自分の姿に驚いた。

引きしまって6つに割れた腹筋を中心に腕、胸、肩と脂肪が筋肉に変わっているのがわかった。自分でも見とれてしまうようなキレイな体に仕上がっている。


身長も少し伸びた気がする。横に立つベルゼの身体は相変わらずデカいが、最初よりは少し近く感じる。実際、身長は20㎝ほど伸びていたらしい。


だが、筋肉量では確実に敵わない。どんな鍛え方しているんだろう?

特に筋肉には興味はないが筋肉好きな人の気持ちが少しわかった気がした。


「お前には元々、秘めたるポテンシャルを感じておった。この1週間でここまでの身体になるとはな」


「1週間!?まだそれだけしかたってないんですか?」


「ガハハハッ!そうとも!お前に課したトレーニングは普通の人間だと1年はかかるハードなものを詰め込んだからな。」


そんなハイレベルなことをしていたのか。道理で毎日が拷問のような毎日だったわけだ。


「そして、これも気付いておらんだろうが、お前には特殊な才能があるようだ。…言うなれば超再生能力。」


「超…再生…能力?」


「そうだ。毎日スパーリングでボロボロになっても傷1つない。毎日の常人では耐えられない筋トレも続いている。おかしいとは思わないか?」


「・・・!!」


俺は、体中を鏡で確認し傷を探すが見つからない。

確かに言われてみればそうだ。打撲や打ち身、骨折をしていてもおかしくないほどに殴り合っていたはずだ。


筋トレもそうだ。終わった時には、筋肉痛でもだえ苦しんでいたが次の日には何ともなかった。最近までは少し自転車に乗っただけでも筋肉痛で数日動けなかったはずなのに…。


「俺も初めは半信半疑だった。再生能力なんてのは、滅多に見ない珍しい能力だ。だが今回は、体力も筋肉も超再生によって限界まで痛めつけることができた。久しぶりに筋肉がうずいたってもんだ!ガハハハッ!」


「…なんで、そんな能力が俺に?」


「そんなことはわからん。俺にもお前はただの人間に見える。アイギス様が言う素質ってやつなのだろうな」


「アイギス・・・」

俺は久しぶりに聞く名に頭の中の引き出しを開けまくる!

そうだ、魔王の娘。…全然見に来ないんだな。


「そうだ!俺の試練はどうしたんだ?」


「・・・試練?あぁ、忘れておったわ!ガハハハッ!」


本当にこの人は大丈夫か?

俺は元々ここに試練を受けに来ていたんだ。拷問だったかな?

確か初めにベルゼを倒せと言っていたはずだ。


「おぉ坊主!今日のパンチはすごったぞ」


後ろから不意に声を掛けられ反射的に振り返る。

さっきの対戦相手をしていた青鬼だ。

うれしそうに笑っている。悔しくはないのだろうか


「あっありがとうございます」


「今度は負けねぇように鍛えておくからよ!またやってくれや」


「一発で伸されたやつが偉そうに!」

青鬼の後ろからすかさずヤジが飛んでくる


「なんだと?お前だって俺と変わんねぇだろ!」


そういって後ろのヤジと喧嘩を始めた

止めないでいいのかと思ったが皆笑顔で楽しそうだ。

どうやらじゃれあっているようなもんだろう


これまで見つからなかった自分の居場所を見つめたような気がして俺は自然と笑顔になっていた。

そして、どこか懐かしい気がして何の記憶かもわからない幼少期に3人でじゃれあっている風景が頭に浮かんで目の前と重なった。


「よぉし!お前たち。その辺にしておけ!トレーニングを続けるぞ!」


全員がピタッと動きを止めて各々の筋トレを始めた。

しっかりと統率が取れていて軍隊のようだと思った。


その後も筋トレも続け、スパーリングも戦い続けた。

そして1週間もしないうちに全員を打ちのめすほどになっていた。


その間には友情が芽生え、みんなとはすっかり仲良くなっていた。

拳を打ち合ったものは友だ。俺も脳筋になりそうだ。


毎日が楽しいと思えるのは久しぶりだった。

見た目は違っても仲良くなれるのだと実感した。

俺に足りなかったのは一歩踏み出す勇気だったのかもしれないと考えるようになっていた。


「よし!そろそろ俺と戦う時が来たかな?まぁ負けんがな!ガハハハッ!」


「相変わらずの高笑いですね!いつまで笑っていられるかな?」


「ガハハハッ!言うようになったじゃないか!さぁリングへ上がれ!」


ベルゼは嬉しそうにリングの方へと視線を移す。

それに応えるように笑顔を返す。


リングに上がる二人を周りの鬼たちが大歓声で盛り上げる。

これが卒業試験のようなものだ。全力で戦ってやる。

そして戦いのゴングが鳴り響く


カンッ!


ゴングが鳴ったと同時にベルゼが拳を振り上げる

それに合わせて俺も拳を握る。全力の力を籠める。


そして、拳が交差する瞬間にお互いの拳は寸止めで止まる。

理由は勢いよく開けられた入り口の扉だった。


会場は静まり返りさっきまでの熱は瞬く間に冷めていった。


「誰だ!!トレーニング中だぞ!」


温厚なベルゼが試合を止められた事に怒り、まさに鬼の形相で入り口を睨みつけた

それに呼応するように俺を含め皆が入り口の方へと視線を移す。


「…トレーニングの邪魔をしてしまって申し訳ありません。」


その声は、久しぶりに聞く美しい声、アイギスの声だった。

かぶっていたローブのフードを外して顔を見せる

久しぶりの再会だが表情は曇っていて俺たちは振り上げた拳を下した。


「アイギス様でしたか。これは失礼いたしました。大事なトレーニング中でご無礼を…」


「いえ、気にしないでください。私も突然の訪問でしたので・・・。あら?そちらの男性はもしかして…?」


アイギスは俺に気付くと、目をパチクリさせて正体を確認した。


「はい。アイギス様が連れてきた彼です。見違えたでしょう?ガハハハッ!」


ベルゼは俺の肩を引っ張り自慢するようように自分の元へと引き寄せた。

俺は不意の事に抗えず、人形のようにベルゼに扱われた


「ウフフッ!本当に見違えました。ベルゼに預けたのは正解だったようですね。」


ベルゼの誇らしげな顔とアイギスの微笑みに挟まれ、俺はこれまでで一番赤面していたのではないかというぐらい恥ずかしかった。


「…アイギス様、そろそろ本題の方を…」


横にいた聞きなれた声の老人、フェゴールがアイギスを我に返らせた。

この二人はセットでいることが多いのか?


「そうですね…。ベルゼ、申し訳ありませんが少し時間をもらえますか?」


そういった彼女の目が変わった。

それを察知したのか何も言わずベルゼはリングを降りた。

周りの鬼もボヤきながらも続行が不可能と分かったのか各々のトレーニングを始めた。


俺はどうしようかと悩んでいるとアイギスは出ていく直前振り返り俺を見た。


「あなたも来てください。大切なお話があります」


「え?俺ですか?」


アイギスは静かに微笑むと扉の外へと出て行った。

俺は焦って後を追いかけると扉の外で3人が待っていた。


「お待たせしました。どこへ行くんですか?」


「詳しいことは歩きながら話します。ベルゼも聞いていてください」


俺はアイギスの表情から緊急事態を予感して覚悟を決めた。

この世界の事はまだわからないことが多い。それについても聞けるチャンスだ。

俺は2週間過ごした部屋を後にし、アイギスについていくことにした。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

続きを書くにあたって、改変・修正が入る場合があります。あらかじめ、ご了承ください。

以上、感想など貰えると助かりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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