【番外編】モナの修業
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
ついに、挿絵付きの作品が完成しました。
絵はT.ポテトさんに描いていただきました。
これは、俺がモナに魔術の修業をしてもらっていたときの話だ。
農村の手伝いの帰り、モナに魔法の修業をしてほしいと頼んだ。
モナは快く引き受けてくれてモナとの魔術修業が始まった。
始まりは、何故か肩に乗せている白イタチの名前の話になった。
どうやら、名前がないのは可哀そうで何て呼ぼうか気になっていたらしい。
そして、俺が命名した「サフィ」で名前も定着して今ではサフィは相棒みたいなものだ。
本格的な修行が始まる前に魔法の基礎を教えてもらった。
「ところで、モナの魔法は何ができるんだ?」
「…私の魔法は、自然の力。…森は力が使いやすい」
そう言って手を動かすと川の水が競りあがりモナの手の方へ集まる。
川の水は踊るように手の上で上下していて小さな噴水のようになっていた。
…これがイメージ。
「へぇ。便利だな。炎は使えないのか?」
「…火は特別。どこにでもあるわけじゃない。…私の魔法は、作ることはできない」
「そうなのか。じゃあ俺の使ってた炎は特別?」
冗談半分に聞いてみたが、モナは静かに頷いた。本当に特別なようだ。
「…魔法は基本、魔方陣を使う。私はこれがあるから…必要ない。」
そう言って手元の古い木でできたような立派な杖を見せてくれた。
それが媒体となり、魔方陣の代わりになるという。
どんなものか貸してもらったが、思ったよりも軽い。使いやすそうだ。
ただ、借りてる間は不安そうな顔をしていて、可哀そうなのですぐに返した。
すごく大事なものなのだろう。渡した後の安心した表情は幼子そのものだった。
「俺は何もなくていいのか?」
その問いかけに思い出したように俺の体をまじまじと観察する。
何かを探しているのか…?。
「…わからない。あの時、魔法が使えたのに…何も使ってない」
どうやら、俺がモナの杖のような魔法の媒体を使っていないか探していたようだ。
何も持っていないはずだが…。
一通り体を検査されたが、お気に召すものがなかったらしく困っていた。
俺も何かできないかと試しに炎を出そうとしたが、さすがに無理だった。
すると、何をしようとしたか気づいたようでモナがアドバイスをくれた。
「…魔法はイメージ。炎をイメージして」
俺は炎を出した時と同じように手を前に出した。
いかにも中二病な構えは結果的にイメージを膨らませることになった。
「炎のイメージ…。俺は魔術師」
まるで念じるように呟きつつ炎を連想する。
熱い炎。燃え上がる炎。揺らめく炎。
すると、手のひらが熱くなり小さな火種が現れる。
「ピュゥイ!」
またしても、サフィの鳴き声に呼応するように火は大きくなった。
だが、その炎はメラメラと燃え上がる紅炎だった。
前は蒼い炎だったような…?
「…キレイ。魔法は身体の一部。…動かすのもイメージ」
俺は炎が大きくなることをイメージする。
そして、イメージ通り炎は大きくなる。いや、大きすぎる!?
ドンドン大きくなり俺の気持ちとは裏腹に荒れ狂う炎の勢いに動揺を隠せない。
しかし、モナの咄嗟の判断に命拾いする。
「…消化!」
ジュゥゥゥ!
大きくなりすぎた炎にモナは川の水を頭から大量にぶっかけた。
火は消えたが俺もサフィもビチャビチャだ。
「…ぷっ、ふふ」
その姿にモナは耐えきれず吹き出したようだ。
サフィも体をブルブル振って水気を飛ばす。俺は風邪をひきそうだ。
…やはり、イメージと言っても難しい。調整しないとダメだな。
俺は小さな枝を集め、さっきのように大きな炎になる前に枝へ火を付け焚火を作った。
何とか体が冷える前に火を付けられたので服を脱ぎ乾かす。
モナは俺が服を脱ぎ始めたタイミングで席を外した。気を使ってくれたのかな?
そして、火の近くで服を枝に引っ掛けて、ハンガーの要領で服を乾かす。
サフィは体を火に近づけて丸まっていた。
俺は、ボーッと火を見つめながら記憶を探っていた。
「…何か眠くなってきたな」
すると、森の方の草むらがガサガサッ揺れ動いた。
俺は警戒を強め音の方へ振り替える。
「…何だ、モナか」
森の中から現れたのは腕いっぱいに枝を抱えたモナだった。
どうやら、焚火のための枝を集めてくれていたらしい。いい子だなぁ
「…枝。これで足りる?」
そう言って手に持った枝を焚火の近くで下ろす。
そして、俺の隣へと座る。
「十分だよ。ありがとう」
俺は、横に座ったモナの頭を撫でて呟く。
そして、気になったのが…
「…この耳って本物?」
確認するように耳を触ってみるが暖かいし柔らかい。本物のようだ。
さらに、くすぐったそうに耳を抑える姿から見ても本物のようだ。
「…魔王様。獣人って、知ってる?」
「え?半分動物みたいなやつ?」
突然の問いかけにいい言葉が出てこなかった。
「…少し違う。でも、合ってる。私は、猫の獣人。」
そこから、モナの過去について少しずつ話を聞いていった。
獣人は元々、魔力の強い種族で魔法を使える者も多いらしい。
その中でもモナは才能に恵まれていた。
そんなある日、獣人の里が襲われ逃げ延びた所を前魔王に拾われたと…。
その記憶は思い出したくないらしく俺も深くは聞かなかった。
でも、友達も家族もいない状態で寂しかったんだろうな。
話し終える頃にはすっかり日が落ち、モナも眠りに落ちてしまった。
俺も思い出したくない過去がある。でも何を思い出したくないのかがわからない。
モナも小さな体で苦労してきたんだろうな。
そして、気付くと俺も眠りに落ちていた。
しかし、すぐに目が覚めたようで辺りはまだ暗く月明かりで照らされていた。
焚火の火は揺らめいていて暖かい。
「…モナ?どこ行った?」
最初に気になったのは隣で寝ていたはずのモナがいないことだった。
心配はないだろうが、放っておくわけにもいかない。
俺はすぐに起き上がり周りを見渡す。
近くにはいないようで少し散歩をすることにした。
月の明かりは思ったよりも明るく視界は良好。迷子の心配はなさそうだ。
特に人の気配も感じない。
そして、気付くと川の畔へ行きついた。
そこに人影が見えて咄嗟に呼び掛けた
「おーい。モナ!」
声に反応するように振り返った姿はまさしくモナだったが…。
「…あっ?!」
水浴びをしていたようで、隙だらけの透き通る肌がさらけ出されていた。
モナは顔を真っ赤にして反射的に体を隠す。
その姿は、月明かりに照らされて、あどけなさの中に美しさを備えていた。
「…いつまで、見てるの!」
怒ったモナは、ありったけの水をかき集め俺めがけて放出した
「…ち、ちょっまっ…」
もちろん避けることなどできず直撃した。
尻もちをついて倒れこむ。服はまたもやビチャビチャ。せっかく乾かしたのに…
そして、タオルを巻いた状態でモナが俺を睨む。
さらに目が合うと「ベーっ!」と舌を出して怒っていた。ちょっとかわいい…。
しかし、その夜は口を聞いてくれず寝るときに仕切りまで作られた。
小さくても女の子なんだな。明日謝ろう。
少し体が冷えてしまった。火が消えないように薪をくべ丸くなる。
服が温まるまで待ち、寝るころには少し明るくなっていた。
あまり眠れなかったが、明るくなると心地よい日差しと風が気持ちの良い目覚めを誘う。
モナはもう起きていて、相変わらず拗ねているようだ。
「モナ。昨日は…」
「…もういい。それより、今から村に戻る」
もういいという割にはトゲがあるような…。
まぁ今は様子を見るとしよう。
「わかった。用意するよ」
俺はサフィを起こして川で顔を洗う。
用意といっても特に何もないのですぐに村へ向かう。
村に着くと、農村は朝が早くもうにぎわっていた。
最初に声をかけてきたのは、お世話になっている農夫だった。
「おぉ。帰ってきたか。朝飯一緒にどうかね?」
「ありがとうございます。」
畑の端で丸太を椅子にして座る。
朝ごはんは、おばさんのおにぎり。塩加減が絶妙でおいしい。
「こいつを一緒に食うとうまいんじゃが、そのためには火を起こさんとな」
農夫は野菜を串に刺したBBQのような物を取り出す。
そして、薪を集めて焚火の形にする。
「おっ!ここは任せてください。」
俺は、昨日の焚火を思い出し魔法を使ってみることにした。
農夫は不思議そうな顔をしていたが任せてくれた。
「…昨日もやってるんだ。できるはず。」
俺は薪の枝に手をかざし火をイメージする。
あまり大きくならないように火種ぐらいで留める。
すると、パチパチと音を鳴らし火が付いた。
「ほぉ。こりゃたまげた」
農夫も驚いていたが嬉しそうに串野菜を焼き始めた。
すると、隣から元気な男の子の声が聞こえた。
「すげぇ!兄ちゃん、今のどうやったんだ?」
「これか?俺の魔法だ」
「炎の魔法なんて初めて見たよ!もっと見せてくれよ」
そういってキラキラした目をした少年の瞳に応えないわけにはいかない。
俺は立ち上がり手を前に出す。
「見てろよ?これが俺の魔法だ!」
俺は調子に乗って手の上で炎を燃やす。
少年も「すげぇ!」と楽しんでくれたが案の定、火の調整は出来なかった
「あっしまった!」
手の上の炎は大きくなり近くの家の屋根を焼く。
慌てて手の火を消そうとするが消えない。
燃え広がる寸前でモナのナイスアシストで消化された。
「…調子に乗ったら、ダメ」
「…ごめんなさい」
ハプニングは起きたが少年の期待は変わらず「また見せてくれよ!」と嬉しそうに走っていった。
そして、ご飯を食べ終わった後に焼けた屋根の張替えを自ら行いました。
それからは、幾度となくチャレンジ、消化、ファイア、消化の繰り返しで、毎日のようにずぶ濡れになってコツを掴んでいった。
炎の出力の調節。飛ばすことも出来るようになった。たまに調子に乗って失敗するが…。
しかし、気がかりなのは何度イメージしても蒼い炎は作れなかったことだ。
あれは、何だったのだろうか?
「…魔王様、天才。…覚えるの、早い」
モナが褒めてくれた。少しハプニングもあったが、どうやら機嫌は治ったようだ。
「モナが教えてくれたおかげだよ。毎日ずぶ濡れだったけど」
俺は、いつものようにモナの頭を撫でた。
いろいろあったが、魔法のすごさはよくわかった。
モナのおかげで戦う力も身に付けた。次こそは村のみんなを守る。
こうして、気持ちと力を切り替えて新たな試練に立ち向かう。
信頼できる仲間とともに。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今後も挿絵の作品を不定期に作成する予定です。
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