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*寝顔にキス※

 目が覚めた。意識するまでもなく開けた視界に真っ先に飛び込んできたのは彼の寝顔だった。


 薄暗さの中見える端正な顔は目を閉じたままで、ゆっくりとした寝息がわずかに聞こえてきた。


 安らかな顔。


 無防備ともいえるその表情に私は思った。


 彼より早く目覚めてしまうことはあまりなくて、こうして寝顔を拝めるのは珍しいことだった。


 触れたい。


 彼の寝顔を見ていたらそんな思いがこみ上げてきた。


 昨夜もたくさん触れ合ったのに、今日も、しかも朝から発情してしまうのはどうなんだろう?


 我ながら何とも言えない気持ちになったが、無性に彼に触れたくなってしまった。


 まだ寒くない時節ということもあって、昨夜は身体を重ねた後、お互いに裸のまま布団だけ被って眠ってしまった。だから彼に近づくため布団の中を確認しつつ動くと相手の素肌も目に入ってくるわけで、平常時に見るとなぜだかとても頬が熱くなった。


 布団の中で彼に跨がると私は上から顔を近づける。そしてそのまま唇に触れる。


 柔らかくて気持ちいい。軽く甘噛みしてから私は唇を離した。


 すると目が合った。彼と。彼の瞳と。


 あれ? さっきまで閉じていたはずなのに……。


「したくなった?」


「!」


 目が合っただけでなく喋った。


「お、起きてたの!?」


「唇に何か柔らかいものが当たってるなって思ったら君がキスしてた」


 私のキスで彼は目を覚ましてしまったのだ。


 もっと軽く触れるだけにすれば良かった。舌を入れるようなディープなことはしなかったが、欲が出てしまい唇で軽く噛んでしまった。きっとそれがいけなかった。


「し足りなかった?」


「そ、そんなことない。昨日も私は十分満足したわ。本当よ」


 私は首を横に振る。昨夜もまた半ば快楽に浮かされたまま、幸せな気持ちで眠りについたのだ。満足できなかったとかそんなことはない。


 ただ、一晩経って体力が回復しまたムラッときてしまったのだ。


「うん。僕も昨日は満足したよ。けど今、君を抱きたい。してもいいかい?」


 彼はどこかとろんとした無防備な表情でそう言った。


 こんなストレートに甘えたように告げてくるのは珍しい。いつも私よりも早くベッドを出ているが、実はとても寝起きが悪いのかもしれない。まだ寝惚けている分、欲望に忠実に自分を曝け出せているのかもしれない。


 そんなことを考えているといつの間にか体勢が逆転していた。ベッドに身体を転がされ、彼がそんな私の上へと覆い被さる。


 カーテンから朝日が透過されてきているため、薄暗いながらも彼の端正な顔が、細く引き締まった逞しい身体がはっきりと見えた。これからどんどんしっかりと見えるようになるのだろう。


 こういうのもいいかもしれない。


 彼が私に唇を落としてきた。私はそんな彼の首に手を回し、応えるようにキスした。












END.





      

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