無力な勇気
突撃する小さな体はその丈で振るうには少し重い木刀を振り上げている。
その無謀な突撃に対しカウンターを狙うリザードマンは木刀より遥かに重いであろう鉄の縦を掲げる。
もし盾に当てればこの即興作り木刀は砕け散ってしまうだろう。
なので・・・
「うおぉぉぉぉ!!」
上に振り構えていた木刀。
その方向に、つまり頭を守るように盾を掲げるリザードマン。
横腹は空いている。
盾を左手、剣を右手に持っている。
狙うはこちらから見て右側。盾の死角、剣の防御範囲外。
「てりゃぁっ!!」
甲高い声と共に振られる木刀。
バカァァッ!!
それはリザードマンの予想を反し、その脇腹にくい込んだ。
その衝撃で木刀は柄を残して砕け散った。
リザードマンというのは全身を鱗で覆っている。
しかし、脇や肘、腹、膝の裏側部分など頻繁に擦れ合う所などは多少柔らかくなっている。
着ている鎧もその鱗に頼り薄型。
木刀でも陥没させる位はできるのだ。
リザードマンの左側の脇腹には鎧がめり込んでいる。
『ゴクゥゥ…』
そりゃそうだ。痛いであろう、そうであろう。
これで盾を持つ左手の動きは多少にぶるハズ・・・
ブォンッ!と風を切る音と共にリザードマンの剣が水平に切りつけてくる。
それを視界の端に留めていた幼女は紙一重でその斬撃をかわし、後ろに飛び跳ねた。
「あっぶな!!うへぇ・・・マジかよ。アレでもスグに動いてくるかよ。」
状況は絶望的だ。
全力の一撃を確かに決めた。
そして木刀は使い物にならない。
相手は脇腹に鎧がくい込んでいる。
人間ならきっと動けないはず、なのに目の前の人外は平気な顔でこちらに歩みを進めて来る。
これが今の限界だ。
逃げるしかない、流石に相手は鎧のせいで走りにくいハズだ。
僕はもう1度後ろに飛び跳ね、そのまま走った。
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森の木々をかわした。身の丈以上の草むらの中走った。
息が切れて呼吸が出来なくなっても走った。
しかしあの人外は木をなぎ倒し、草むらをなぎ払い、息も切らさずに走ってくる。
その剣の切っ先が幼女の首元を捉え、切りつけようとしたその時・・・
弾けるような金属音とともにその剣は空で止まった。