ゴシックロリータに赤いランドセル
壱-2
四月とはいえ、風はまだ肌寒い。
でも、平気。
寒いって感じるよりも、楽しみの方が何倍も勝ってるのだ。
どんな大学なんだろー。
実は私、自分が通う大学にまだ行ったことがなかった。
ネットで探して、適当に資料請求したら、なぜか一緒に住んでないはずの父親に、その大学の資料請求したことバレてて、それでもう、一ヶ月後には何もしてないのに入学が決まっちゃってた。
だから、ここに来るのは初めて。
とにかく、実家から離れた場所だったらどこでもよかった。
あと、女子大。
これは譲れない。
一度でいいから、女の園ってやつ、経験してみたかった。
それに女子大出身って、なんかブランド感あるし。
そんなわけで、進学する大学決めたのは早かったんだけど、困ったのが学科。
突然、父親の秘書が家に来たと思ったら、日文、英文、子ども教育、情報処理、心理学、さあ、どれがいいって選択肢を突きつけてきた。
私、特にやりたいことがあって大学進学選んだわけじゃないから、ぶっちゃけどこがいいとかなかった。
だから、消去法で、決めた。
まず、英語は論外。
日本語だってままならないのに、英語なんて喋れないし書けない。
子ども教育は、確かに子ども可愛いけど、純粋ゆえに残酷という点で、却下。
情報処理は、一時間以上パソコンとにらめっこしたくないってことでこれも却下。
んで、心理学は、別に他人の深層心理なんて知りたくないし、今以上に人間嫌いになりそうだから消去した。
そんなこんなで、最後に残ったのが日文だった。
別に本を読むことが好きってわけじゃないけど、日本語なら、なんとかなるんじゃないかなって。
「えっと、この角を曲がって……」
端末のアプリの地図眺めながら大学を目指す。
ふと、顔を上げると、私と同じくらいの女の子が大勢彷徨ってた。
今日は新入生だけのオリエンテーションだから、多分これみんな同級生なんだろうなあ。
それにしても、みんなお洒落。
……ん? よく見たら、みんな、デザインは違うけどおんなじような格好してる。
ブラウスに、ふわっとしたスカート。
やっぱり流行ってるんだなあ!
よかった、私ちゃんと馴染めてる。
と、ふいに私の横をすっと女の子が通り過ぎて行った。
シャンプーのいい匂い。
きっと美人なんだろうなって、その子の後ろ姿を眺めた。
ーーで、私、その子見て、思わず立ち止まった。
……その子、物凄い格好をしてたのだ。
えっと、あれ、ゴスロリ? っていうんだっけ?
黒と白のレースでふわっふわなドレススカート揺らして、悠然と歩いてた。
頭にはおっきなヘッドドレスつけてる。
ゴスロリだけなら、まだ、いい。
彼女、赤いランドセルを背負っていたのだ。
ーーもしかして、 私にしか見えてないヤツなんだろうか。
そう思って周りを見渡す。
すると、周りの視線は全て彼女に注がれていた。
ああ、よかった。
みんなにも見えてるらしい。
変な子もいるんだなあ。
私はその子の後ろ姿を遠くから眺めながら、再び歩き出した。