第2話 コミュレベル20達成で魔王を獲得しました
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俺の名はアキナリ。
33歳(この異世界では10歳は若返っている)、童貞、職業勇者だ。
この右手の甲に浮かび上がる水色に輝く紋様がその証だ。
相棒の名はルチア。
見た目は20代前半。
ただしハイエルフなので、実際の年齢は聞かない方向でいる。
剣技にも魔法にも優れた俺の頼もしい相棒だ。
この1週間、いろんなクエストをこなしてきているが、俺はほとんど役にたっていない。
そりゃそうだ。10年以上現実世界でネトゲ中毒の引きニートしてたのだからね。剣はおろか体力自体がないわ。
もっぱらモンスター討伐系のクエストはルチアにまかせっきり。
ただ中には雑用系のクエストもある。
たとえば、港の倉庫の荷物の運搬とか、老夫婦のお買い物の代行とか、町のドブさらいとか、農場の刈り入れの手伝いとか、そういうのは俺がやってる。
気が向いたときに、ルチアから剣技を教わったりはしてる。
「はじめてのクエストのときは、いきなしホブゴブリン瞬殺にできたんだけどなあ・・・うまく発動しないもんだなあ」
「逆を言えば、あんたの中で何が発動条件になってるかわかればそれは武器になるわ。まあ前向きに考えましょうね」
とかなんか言ってるうちにギルドの裏手にある換金所にやってきた。
「おっさん、ガイナもらいに来たよ」
「ほうほう、勇者アキナリ君にルチアさんじゃあありませんか。ちょうどよかったですじゃ、実はアキナリ君に大事な知らせがあったんじゃて」
「大事な知らせ?」
「これじゃよ、ほれ」
なんか店主のおじさんから小汚い袋を手渡された。
ほんときたねー袋だな。
中身なんだ?
「で、おっさん、これなによ?」
「ほうほう、これはじゃな、わしにもよくわからないのだけど、ネコネコ生放送のコミュニティレベルが20にあがったプレゼントらしいぞよ」
「へ?それどこから届けられたのよ?」
「ほうほう、それはじゃな、わしにもわからん。天からのお恵みかのう」
「なんで俺へのプレゼントってわかるわけ?」
「天の声かのう」
このおっさん、絶対俺の世界とつながってるよな。
まあいいよ。
そのうち化けの皮を剥いでやるからな!
とりあえずクエスト分のガイナを受け取り店をあとにした。
「つかなんであのおっさん、俺のネコ生のコミュレベルが20になってたあのを知ってるんだろう?」
「あんたがやってる魔法の鏡みたいなやつのことかしら?」
「うん。何者だ。あのおっさん。絶対この世界の住人じゃないよな」
「まあ、たしかにあの店主は謎が多い人らしいわね」
しかし、この袋は一体なんなんだ?
思い切ってひもを解いて開けてみるか。
ズドドドドドドドドド・・・
やばい!なんかがこの袋から発動しそうだ!
袋から巨大な魔法陣が浮かび上がってきた。
そして俺はすかさずネコ生を立ち上げて実況を開始する。
*なにかが発動して世界が終わるのですね、わかります
*お前、玉手箱とか絶対開けちゃうタイプだろ
*そんなのどうでもいいからエルフの尻みせろやks
一瞬、世界は真っ白に光った。
目を開けてみた。
へ?目に前には尻もちをついている幼女がいるし。
誰こいつ。
すげえ怯えた顔してるぞ。
「そちだな。わらわの眠りを覚ましたのは」
「へい、そうみたいです」
「そちはわらわのことをなんと心得る?」
「かわいい幼女、いや、俺好みの美少女ですね」
「しょ、少女だと?」
「ほら、こんな感じ」
ノートPCに映る幼女の姿を見せてみた。
「こ、これがわらわの姿か。こんなにも幼くなりさがっているではないか・・・かつて魔界を震撼させた魔王の面影がまったく残っていないではないか!」
「現実を受け入れよう、お嬢ちゃん」
「む、そなたの右手の紋様は、もしや?」
「あーこれ。なんか俺勇者なんだってさ」
「するとわらわを封印した勇者の末裔なのだな・・・かくなる上は」
「へ?」
幼女は立ち上がり、何やら魔法を詠唱しはじめた。
「開け!時空の扉!・・・ってあれ・・・マナが足りない・・・」
なんかもう涙ぐんでるよ、この幼女。
「もういいから、俺が復活させちゃった責任もあるから、恨みっこなしでいこう」
「そちは、わらわを、い、い、苛める?」
「いじめないよう」
「本当に、苛めない?」
「いじめないよ!」
*幼女で魔王か、ある意味テンプレ
*勇者と魔王で街づくりとかしちゃうんですね、わかります
*まおたん はぁはぁ
*この幼女、苛められっ子属性ありそうだな
*ちゃんと養ってやれよ
「ってなわけでプレゼントの中身は魔王だったわけだけど、ルチア、この子も仲間に入れてもいいよな」
「構わないけど、その子と話してるアキナリ、すごい笑顔」
「んなことはないぞ」
この世界ってロリコンってやっぱりドン引きされるのかな?
実は俺引きニートであって二次元専門のロリリコンでもあったわけで。
「そうだ。魔王じゃ呼びにくいから名前教えてよ」
「わらわの名は、メルフェディール。そちには特別にメルと呼ぶことを許そう!」
「メルちゃん、よろしくね」
「うむ、苦しゅうないぞ」
ニコ!
やっぱり美少女は笑顔のほうが似合ってるね!