第5話 初クエストは清掃なんですが、波乱があるのはそのときは知らなかった
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クエストを選んで俺とルチアは、現場の農場にやってきた。
クエストの内容は、『ゴブリンに荒らされた農場の清掃業務』というものだ。
うん!いかにも俺向きの内容だ。
ルチアとしては『洞窟に巣くうウェアウルフの群れを討伐する業務』を選びたがってたけど、戦闘が皆無のこっちに俺が決めてやった!清掃なんて余裕だぜ!
てなわけでネコ生を起動する。
タイトルは『初めてのクエスト』
しかし、やっぱり来場者数もコメント数も少ない。こんなんじゃネコネコポイント貯まらないなあ。
「しっかし!腰がいてえ・・・」
1hも立たずに腰痛でギブアップ気味。引きこもり生活長いからなあ・・・あ、ルチアのアマ、干し草の上で寝てやがる。
「おい、ルチア、お前も働け!さぼるな!」
「このクエストはあんたがやるっていって決めたもの。だから感知しないわ」
くそー。こんな広い農場の清掃を一人でやんなきゃならんのか!1週間はかかるぞ・・・
ふとあたりを見渡してみる。
耳を澄ませてみた。
さっきまで鳴いていた鳥のさえずりが聞こえない。
農場の番犬が異常に吠えている。
なんかがヤバイんじゃね、って思う。
素人判断だけど、直観でやばさが伝わてくる。
「来るわ」
ルチアは立ち上がり、手を剣に当てた。
ルチアがどことなく殺気だっている。
これはマジで何か起きるな。
なにやら怪しげな鳴き声がしてきたぞ。
ギィギィと嫌な声。
しばらくすると、森のほうからすごい大群のゴブリンが押し寄せてきた。
「コブリンの群れよ!アキナリ、武器を手に取って!」
ルチアは剣を取り、ゴブリンの群れへ向かっていった。
先鋒のゴブリン何匹かと切りあうルチアが格好いい。
見とれてしまう。
俺が手に取ったのは剣ではなくノートPC。
勇ましくゴブリンたちと戦うルチアを映すことに決めた。
*エルフ娘TUEEEEEE
*もうちょいでぱん2見えそう
*異世界ってぱん2あんの?
*もっとローアングルplz!
*見えた
うおおおお!すさまじくコメントが走りまくる!と同時にネコPがどんどん投げ込まれるし!
これだよ!これ!俺が望んでいた異世界生活!俺はとにかく、ローアングラーでルチアの尻を追ってる感じ!
そんなとき、ルチアがひらりと身をかわした。
一匹の赤いホブゴブリンが、すんごい形相でこちらへ向かってくる。
やべえ!ルチア、なにやってるの!
「あら、一匹そっちいっちゃったわ」
ちょ、おま、こんな怖そうなモンスターどうやって倒すんだよ!
とりあえずルチアからもらった結構年代物の剣を取り出して、突進してくるホブゴブリンを迎え撃つ姿勢をとる。
まじこええええええ!これは絶対にヤバイ。マジで死ぬし!
刹那、右手の甲の紋様が激しく光った。
何故かわからんが、俺はホブゴブリンを打ち取っていた。
*剣の達人じゃんwww
*まじか、ぱねえっす
*異世界も大したことないな
*それよりエルフたそ見せろよ
*農場の清掃は終わったのか?
「うふふ。作戦大成功!」
ルチアはそう言い残すと、なにやら詠唱を始めた。詠唱が完成すると、
「ファイアーボール!」
ルチアが魔法を唱え終わると、すさまじい炎がゴブリンの群れに襲い掛かった。
ゴブリンの群れは一瞬のうちに焼き払われた。
何匹かは森へ逃げて行った。
「ルチア!おめえわざとこっちへ仕向けただろ!」
「うふふ。どうかしらね。でも倒せたじゃない?よかったわね!」
「こっちは死にそうだったわけだぞ。というかむしろこのクエスト自体、こういう仕掛けだったって知ってたんじゃないのか?」
「さあ、どうかしらね。とりあえず夕方まで清掃がんばってね、勇者アキナリさん!」
まあ、清掃(?)クエストは今日で終わりでよいようだ。
もちろん報酬も上乗せでくれる模様。
夕方となり、農家のご厚意で馬車の荷台に乗せてもらい帰ることとなった。
今日のクエストとネコPでだいぶお金が手に入ることがうれしい。
でも俺の右手の紋様がいったい何なのかそれも気になり、正直複雑な気分だ。
「そんなときは空をみあげてればいいんじゃないかしら?」
ルチアはすっとぼけたこと言うけれども、こいつ絶対何か知ってるよな、と思う。
俺の右手の紋様の秘密もね。まあ、どうせ今は教えてはくれなさそうだし、流れに身を任せますかね。