第4話 綺麗なエルフのお姉さんは好きですか?
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俺、アキナリ・サイトウ。33歳。この世界では伝説の勇者アキナリらしい。
そして何故か見た目が20代くらいに若返ってしまっている。
右手の甲に青白く光る紋様がその証だそうで。
異世界生活5日目にして俺は皿洗いの仕事を見つけた。
それまでの経緯っていうと、なけなしの銅貨3枚で安宿に泊まり、その宿屋の主人に仕事が見つかるまでいさせてくれと頼んだところ、大衆食堂の皿洗いの仕事を紹介してくれたという経緯。
ちなみに、食堂での日給は銅貨5枚。止まっている宿と食費でパーだ。
ネコ生のほうはというと、配信はしてるのだけれども、ネコPをもらえない日が続いている。
というか、配信自体が危機に晒されている。
昨日はコメント0件もあった。
もっとも俺みたいなネトゲ中毒の引きニートに、ネコ生の生主になるとかいう才能があるわけでもなく、自分ではこんなもんじゃないかと納得している。
「はぁ・・・」
仕事が終わり、宿屋に帰る途中、思わずため息がでちゃったよ。
はやく日本へ帰りたい。ネトゲしたいよ、まじで。
でもわけわからない異世界に飛ばされた、その日その日を食っていくのが精いっぱいとか、まじね。泣けてくるっす。
「どう、元気してる?」
ん?後ろから声をかけられた。
振り返るとおせっかいハイエルフのルチアがいた。
「今更なんの用だよ」
「あら、浮かない顔してるわね」
「そりゃ見知らぬ世界に送り込まれて皿洗いの生活じゃな」
「やっぱりあたしと組まない?それがきっといいわよ」
どうすっかなあ。
このまま皿洗いの毎日が続くと思うと厳しいしな。
ここはルチアと組むほうがかろうじてマシな気がする。
ルチアは美人だし。
こんなかわいい子が俺のそばによってくるのを捨ておくわけにはいかないような気もするし。
「最初に断っておくが俺は戦力にならないからな?いいんだな?」
「オーケーオーケー!交渉成立ね!それじゃ明日、ギルドで待ってるわ」
「おう、一番簡単で安全なクエストをやろうな」
「うふふ。そうしましょうね!」
ルチアと別れて宿屋に帰ってきた。
ふう、疲れがどっと吹き出てきたよ。
まじ皿洗い半端ないっす。
ベッドに転がりながら、右手の甲を見つめる。
まぎれもなく水色に輝く勇者の紋様だ。
しかしこんなもんあったって俺がこの世界でできることといえば皿洗いくらいなんだけどね。
。
ふう、絶対楽なクエストを選んでやる。
んでもって仕事は全部ルチアにやらせて、わい高みの見物じゃ。うんそうしよう・・・むにゃむにゃ・・・
翌朝、俺とルチアはギルドで再会した。朝まだ早いので、ギルド内は俺とルチアだけの様子で。
「おはよう、ルチア」
「来てくれたのね、アキナリ」
「俺さ、ルチアだったらさ、ペットになってもいいと考えたんだ」
「い、いきなり何をいいだす??」
「だから、ルチアに全面的に養ってもらいたいなって思うんだ!クエストもルチア一人でやって、俺はルチアの帰りをひたすら待つだけ・・・」
「このおお、軟弱者!」
ビシィ!
うお、また平手打ちされたよ!
「なんだよう、なにしやがる!飼育したいんだったらペットだって同じじゃないか!」
「あ、あんたみたいなおもちゃいらないわよ。勘違いしないでよね。あたしはペットがほしいんじゃなくて、あたしが満足できるパートナーが欲しいのよ!」
どうやらルチアが求めているのは愛用玩具としてのペットではなく、長い年月を生きる上で必要なパートナーを探しているということのようだ。
飼育というのは言葉のアヤで、要は俺にいっぱしの勇者に成長してほしいということ、だからしつこくクエストにさそってくるというわけのようだ。
「なるほどな、それで俺に目をかけてくれたというわけか」
「前のパートナーが旅立ってもう長いしね。人間の社会で生活するには、人間のパートナーが色々と必要になるわけよ」
「なるほどね。でもやっぱり俺には期待するなよ。引きニート歴10年の猛者だからな!」
「でもあんたの右手の紋様は本物よ?まあ、のんびりでいいわ。あたしには無限の時間があるんだからね!」
とまあ、なんとなく、ルチアとの間の溝も埋まったことだしよかった。
でも本当このエルフ娘は強そうだし、当てにできそうだな!