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Gear#15/First Epilogue:Go West

      挿絵(By みてみん)




   Ⅰ The Guns of Avalon




 敗者への鎮魂。亜種のハイエルフ蒼魔導士ブルー・リザードを打ち倒し、その言葉を手向けたレオニス。彼の左腕と両足が機械仕掛けに組み直される。


 これで全てが終わったかに思われた。


 しかし、突然。


_人人人人人人人人人_

> HISSSSSSSSH!! <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄


 膨大な排蒸気が、上空からレオニスたちに吹き荒れる。

 そして、巨大な黒い影が、辺り一面と空とを覆い尽くす。


「「「――!!――」」」


 ひび割れるような甲高い金属音と轟く機械音を鳴り響かせ、見上げる彼らの頭上をゆっくりと進む影。


 それは後方で待機していた空兵艦隊旗艦。リーン大佐の機械戦闘艦だった。その行く先にはアヴァロン城がある。


 悪い予感がレオニスの頭を過る。


「まさか!?」

「特攻しかける気だわ!?」

「冗談キツイぜ!」


 レディの言葉は当たっていた。それは先に機械鉄甲船の三番艦で戦線を離脱した、ジェネラル・フェルドナンと呼ばれる男の狂気の置き土産だった。


 洗脳されたかに操られる戦闘艦の艦長。乗員もろとも道連れに、彼は特攻を仕掛ける。既にアヴァロン城までの距離は半㍄も無い。


 城の中にはMr.ファザーをはじめ、ミセス・マシーン達がいる。何よりシャングリラ別邸から救助したミス・マジェスティとヴィヴィアン王女が避難している。


 だが、その進み始めた鋼鉄の巨躯の歩みは、それがハイエルフの”Ruby”(ルビー)ベレロフォンの霊子力であっても、とても止められるような代物では無かった。


 再び、レオニスが左手首のギアを回す。


「間に合うか!?」


 こういう時のレオニスは後先を考えない。忽ち両足をスチーム・ジェットに組み直すと、彼はアヴァロン城へ向かおうとした。


 驚くレディが、その腕を掴んで引き留める。


「もう、慌てない!」

「エッ!?」


 すると、突然。鳴り響く地響きに地面が大きく揺れ始めた。


「地震か!?」


 それはベレロフォンの視線の先。機械戦闘艦が特攻を目指すアヴァロン城。あの機械機甲師団の猛攻を耐え凌いだ鉄壁の城壁が、ガラガラと音を立てて崩壊を始めた。


「ナンだアレは!?」


 そして、崩れる石とスチーム・パイプの城塞を割り、黄金色の輝きを纏う巨大な船らしきモノが、彼らの目の前に姿を現すのだった。




†*        †        *†




「”The Gunsガンズ ofオブ Avalonアヴァロン”急速発進用意!」


 ”The Gunsガンズ ofオブ Avalonアヴァロン”。それはアヴァロン男爵存命の頃より。彼らギア・ナイトの象徴として建造される筈だった機械戦闘艦であった。


 その後。男爵の死によって、一度頓挫した計画をレディ・アヴァロンが復活。その命を受け、Mr.ファザーが密かに地下城内で開発を続け、そのアヴァロン家の悲願を完成、実現させたのであった。


 そして、その艦橋後部。艦長の席に座するMr.ファザー。


「我が艦は、急速浮上から近接戦闘に入る。敵機械戦闘艦を撃滅、急速離脱する。ソルジャー・イプシロン。戦闘指揮を頼む」

『了解した』


 ソルジャー・イプシロン。彼は都市国家軍学校を主席で卒業し、若くして空兵隊士官にまでなったが、あの第二次異教徒戦争に於いて負傷。コンドルマン同様。その全身をネオブラスで覆うサイボーグとして復活した男であった。年齢はマジシャンズ・クロウの一つ下であるが、若手ギア・ハンターの筆頭といったところであろうか。因みに戦場では、銃火器より数多の刃物を好む。


『マダム・ゼータ。補助蒸気動力接続』

「補助蒸気動力接続。両弦バランス正常」


 マダム・ゼータ。彼女は、その光彩奪目こうさいだつもくな色香とは裏腹に巨大な銃火器を操る若手ギア・ハンターの一人であった。今は”The Gunsガンズ ofオブ Avalonアヴァロン”。その機関長を務める。


『ヴィーナス・オメガ。スチーム・ホイール始動』

「主蒸気機関点火まで、5、4、3、2、1、点火」


 ヴィーナス・オメガ。彼女は、その両の掌に高速噴流砲メタルジェット・ガンを持ち、格闘を得意とする若手ギア・ハンターの一人であった。”The Gunsガンズ ofオブ Avalonアヴァロン”。その操舵士を務める。


 そして、この三人にレオニス・アルファを含めた四人が、次世代のギア・ハンターを担うであろう者達であった。


『”The Gunsガンズ ofオブ Avalonアヴァロン”、浮上せよ!』

「浮上」


 その膨大な排蒸気を吐き出し、莫大な土砂を巻き上げて降らし。船は全貌を現す。


 ”The Gunsガンズ ofオブ Avalonアヴァロン”。その名に相応しく四方に城塞のベルクフリートを構え、居館パラスに当たる部分を艦橋とし、城壁上の凹凸のこぎり型狭間(ツィンネ)のような尖頭を連ねていた。その姿は船と言うより、まさに宙に浮かぶ要塞であった。


 また、アヴァロン軍では初となる三連装電磁主砲(レールガン)を両弦と艦尾のベルクフリートに備える。そして、蒸気墳進弾スチーム・スパロー主砲ランチャー、蒸気墳進魚雷など多数を装備する最新鋭戦闘艦と言えた。




†*        †        *†




 その艦橋に姿を現したミセス・マシーン。待ち侘びたかにソルジャー・イプシロンが言う。


『ミセス・マシーン。砲雷長をお願いできるか?』

「勿論さ!」

『射撃管制は要らないと思うが?』

「管制もナニも、敵は特攻なんだろ?」


 その言葉通り。”The Gunsガンズ ofオブ Avalonアヴァロン”に特攻を仕掛ける形となった敵機械戦闘艦が目前に迫る。


『ヴィーナス! 浮上と共に攻撃を仕掛ける。艦の姿勢を水平に保て!』


 その間隙にミセス・マシーンが指令を飛ばす。


「マッド・シチズンども準備はいいかい!?」


――Yes, Ma'am(イエス、マム)! 俺たちに扱えない武器はナイぜェ!!――


「両弦ベルクフリート。レール・ガン用意!」


――両弦ベルクフリート。レール・ガン用意ィ!――


「第一、第二、第三蒸気墳進弾(スチーム・スパロー)主砲ランチャー開け!」


――第一、第二、第三蒸気墳進弾(スチーム・スパロー)主砲ランチャー開けェ!――


「一番から六番、蒸気墳進魚雷発射用意!」


――一番から六番、蒸気墳進魚雷発射用意ィ!――


「いいかい!? 敵は目の前だ! 目視で構わない、ありったけブチ込むよ!」


 浮上する”The Gunsガンズ ofオブ Avalonアヴァロン”が、纏う土砂を振り払った時。もう既に敵機械戦闘艦は目と鼻の先であった。その距離は約0.1㍄。


「一斉射用意! 撃てえええええっ!!」


_人人人人人人人人人人人_

> BLAAAMMM!!!!!!!! <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄


 号令と共に、至近距離から敵艦に向かって大量の徹甲砲弾とミサイルが乱れ飛ぶ。

 やや斜め上方から、頭を押さえるように特攻を仕掛ける敵艦。

 それを躱す為、”The Gunsガンズ ofオブ Avalonアヴァロン”は急浮上を続ける。


○。\!Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y!//。○

( BOM!BOM!BOM! )

○゜//i人_人_人_人_:i\゜○


 次々と敵の装甲を打ち破るミサイル群。

 爆発に火の手が舞い、黒い煙が吹き出して踊る。

 が、その巨大な質量をもった鉄の船は勢い止めない。


「怯むんじゃないよ! 各砲塔、撃ち続けるんだ!!」


_人人人人人人人人人人人_

> BLAAAMMM!!!!!!!! <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄


 その猛攻撃に、次第に敵機械戦闘艦の船体が砕かれる。

 そして、尚も浮上を続ける”The Gunsガンズ ofオブ Avalonアヴァロン”。

 だが、燃える火の玉と変わった敵艦は、制御を失いつつも”The Gunsガンズ ofオブ Avalonアヴァロン”目掛けて突進する。


 ソルジャー・イプシロンが叫ぶ。


『ジャンヌ! 艦首機械衝角アヴァロン・ブレード展開!!』

「アヴァロン・ブレード展開」


 艦首機械衝角アヴァロン・ブレード。それは艦首に備える体当たりを想定した対艦衝角決戦兵器であった。


 途端。艦首に当たるベルクフリートのこぎり型狭間(ツィンネ)が迫り出すと、グラインダーのように回転運動を始める。


「皆、衝撃に備えろ!」


 Mr.ファザーが叫んだ瞬間。

 敵機械戦闘艦が”The Gunsガンズ ofオブ Avalonアヴァロン”に真正面から衝突した。


  ○。\!Y⌒Y⌒Y!//。○

○。\!Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y!/。○

( KABOOOOOOOM!! )

○゜/i人_人_人_人_人i\゜○

 ○゜/i人_人_人_人i\゜○


 伸し掛かる巨大な質量。

 衝撃に軋む船体。

 しかし、超硬の合金ネオブラスで建造された”The Gunsガンズ ofオブ Avalonアヴァロン”。

 その艦首機械衝角アヴァロン・ブレードが、燃える鉄の塊を粉々に打ち砕くのだった。


  ヾ\!人人人人人人!//レ

_\人人人人人人人人人人人人/_

>≫GoGoGoGoGOOOOOOOO!!≪<

 ̄//^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y\ ̄

  フ/iY^Y^Y^Y^Y^Yi\ヾ




   Ⅱ 騎士の十字弓




 亜種のハイエルフ紅魔導士レッド・サーペントと蒼魔導士ブルー・リザードを打ち破ったレオニス・アルファ、ベレロフォン・アウリル。


 敵機械機甲師団を殲滅したミセス・マシーン、コンドルマン、マジシャンズ・クロウ。


 そして、女王ミス・マジェスティと王女ヴィヴィアンを救出したレディ・アバロンとセイント・ジャンヌ。


 敵空兵艦隊旗艦を撃破したアヴァロンの城塞戦闘艦”The Gunsガンズ ofオブ Avalonアヴァロン”。


 彼らは、その艦橋で待つMr.ファザーやミス・マジェスティらと一堂に会した。


「ダイアナ。今回はおかげで命拾いしました」

「いいえ。代々、シャングリラ王家の為に働いて来たアヴァロン男爵家。亡き我が夫も喜んでいると思います」

「そう言ってくれると助かります」


「ただ陛下。まだ全てが終わったわけではありません」

「そうですね。きっと市街地では、まだ戦闘が……」

「はい。ですが、こちらに新たな戦力の投入がないということは、クーデターを起こした勢力も、そう多くはない筈」

「だといいのですが……」


「おそらく、侯爵家、伯爵家、子爵家からも討伐隊が出ていると」

「ですが、先ほど聞いた話では、侯爵家や子爵家からも反乱分子が……」

「はい。残念ながら今回。近衛にも内通者がおりました」

「近衛にも!?」


「ですから陛下。今後の事なのですが、ひとつお願いが御座います」

「お願い?」

「はい。これまで通り、ジャンヌは近衛付きとして陛下の警護を。あと、ミセス・マシーンとコンドルマン、マジシャンズ・クロウも復職させたいと思っております」


 すると、傍らにいたヴィヴィアン王女が、お伽噺の英雄譚を聞く少女のように瞳を輝かせ明るくした。


「ギア・ナイトの復活ですね!?」


 が、多少の苦笑いにレディが答える。


「いいえ。ただ、どこまで敵が入り込んでいるか見えぬ以上。三人を、元々いた都市国家軍の騎兵隊と空兵隊、そして近衛に、王家の直属軍人として置けないかと? あくまで便宜上です」


 それを聞いて、幾分の思案に耽るミス・マジェスティ。


「なるほど。そういう事であれば。議会には私から働きかけてみましょう。オブザーバーという形なら可能かもしれません」

「ありがとうございます」

「ですが、レディ・アヴァロン。その議会との契約はどうするのです?」

「契約?」

「ギア・ハンターとしての契約は破棄するのですか? 履行するにも、四人も近衛に回しては支障があるのではありませんか?」

「心配は御無用。幸いギア・ハンターには若手が育っております」

「若手が?」


 そんな、ミス・マジェスティとレディの遣り取りを、我関せずを決め込んでいたレオニス。というより、彼は新たな城となる戦闘艦の艦橋内を、感嘆を交えつつ物珍しそうに眺めていた。


 そんな彼にレディが話を振る。


「ねっ、レオ!?」

「えっ!? あ、ああ……」


 レオニスはトップハットを右手で脱ぐと、少し大げさに礼をして見せた。


「陛下。このレオニス・アルファめに、お任せください」


 そして、もう一人。少女に姿を戻し、艦橋の窓から見下ろす戦場の爪痕。操舵機器に寄りかかりながら、物思いにそれを眺めていたベレロフォン。


 レディは彼女にも話を向ける。


「ベレロフォンも!」


 名を呼ぶレディが、手にしていた皮のホルスターを放り投げる。


 慌てて、それを受け止めるベレロフォン。


「オ、オイ! ナンだコレは?」


 すると、矢庭に襟を正すレディが、神話の一節を綴るように淡々と語り始めた。


 ――それは遠い昔。


   このアヴァロン家に集い戦った者達が、まだ騎士と呼ばれていた頃。


   我が男爵家の主アヴァロンから授けられた


   ギア・ナイト称号の証。


   ”戦士の十字弓クロス・オブ・ナイト”――


 レディの言葉通り。そのホルスターの中には、リムを折り畳んだハンドヘルド・タイプのピストル・クロスボウが収まっていた。その黄金色の銃身と銃把グリップには、美しく細かな意匠の文様が彫り込まれている。


「戦士の十字弓、クロス・オブ・ナイト……」


 呟くベレロフォンにレディが続ける。


――それは共に戦い、生き残った者に栄誉として渡されるクロスボウ。


  普通、騎士なら剣なんでしょうけど

 

  アヴァロン家は初代が十字弓の使い手だったらしいの。


  我々が”アヴァロンの狩人”と呼ばれる所以でもあるわ。


  そして、それは私がギア・ナイトとなった時に授かったモノ。


  美味しい紅茶の代わりになるかは分からないケド、貴方にアゲルわ――


「いいのか? そんな大切なモノ?」

「心配しなくていいわ。私には()()が使っていたモノがあるから。これでアナタも、晴れて狩人の一員ね」

「ワタシが、アヴァロンの、狩人……」


「そう。それに住む所も必要でしょ?」

「住む所?」

「あっ、レオニスの家はダメよ。あんな所に住んでいたら病気になるわよ!」


――オイオイ――


 皆の笑いが艦橋内に鳴り響く中。ミセス・マシーンが言う。


「ところで、レディ。これからどうするんだい?」

「まずは王城へ」


 マジシャンズ・クロウが。


「この船で王城に乗りつけるのか? そりゃイイ!」

「そして、女王の名の元。クーデターの残党を制圧する」


 コンドルマンが。


『なるほど。錦の御旗か』


 そして、ジャンヌ。


「面白い。マッド・シチズンども! 女王の帰還だ! 旗を上げろ!!」


「「「「「Yes,Sir!!!!!」」」」」


 そうして、城塞戦闘艦”The Gunsガンズ ofオブ Avalonアヴァロン”の艦橋マストに、掲揚される二つの旗影がはためいた。


 ひとつは、シャングリラ王家の紋章。四足の荒鷲。そしてもうひとつは、アヴァロン男爵家の紋章。中央のクロスボウに交差する四本剣。


 そんな御旗の元。”アヴァロンの狩人”たちを束ねるレディ・アヴァロン。彼女は皆を見回すと心新たに大号令を掛けた。


「さあ、ミンナ! 狩りを始めるわよ!!」




   Ⅲ Eden




 シャングリラの各要所で引き起こされた一部将校のクーデター。それはレディの読み通り。侯爵家、伯爵家、子爵家からの討伐隊もあって、翌日の夕方には沈静化することとなった。


 シャングリラ王宮の広大な中庭に鎮座した城塞戦闘艦”The Gunsガンズ ofオブ Avalonアヴァロン”。それを部隊の軍営とし、アヴァロン軍ギア・ハンターの面々も手分けして鎮圧の一翼を担った。


 ただ、そんな中。様々なわだかまりや葛藤を持ちつつ、ひとり王宮を離れるベレロフォン・アウリルの姿があった。ヴィクトリアン調のスチームパンク・ドレスに身を包み、人知れず王宮の裏口を出てゆく少女。


 が、それを見越していたかのように、外にはスチームバイクに跨るレオニスの姿があった。


「約束しただろ? 事が終わったら、レース・バイクにタンデムさせてやるって!?」


 その約束をベレロフォンも忘れたわけではなかった。寧ろ、半ば楽しみにする自分もいた。だが、彼女の持つ本能が、そのプログラムされた定めが、彼女をダーク・エルフとしての性に縛り付けていた。


「悪いが、遊んでいる暇はない……」


 そう言って、視線を逸らすベレロフォン。彼女は足早にレオニスの横を通り抜ける。


 そんな彼女の背中に、再び言葉を投げるレオニス。


「行くんだろ? 本物の”Sapphire”(サファイヤ)を探しに?」


 思わず立ち止まるベレロフォン。


「付き合うぜ。オマエとは呪いの契約もあるしな」

「レオ……」


 すると、そこにもうひとり。姿を見せる者がいた。


「やっぱり行くの? フォモール教の総本山。エデン・シティに?」


 その声はレディであった。振り返りに神妙な面持ちを見せるベレロフォン。彼女は教えを乞うように静かに尋ねた。

 

「やはり、エデンだと思うか?」

「ワタシもダーク・エルフよ。そうね、ワタシのゴースト・ジュエルも囁いてるわ。――西へ行け!――ってね」


 すると、またひとり。ベレロフォンを探す者の姿が。


「ああ、間に合ったか……」

「ジャンヌ!?」

「共に戦った仲間の見送りぐらいはしないとな。それが騎士道というものだ」

「ナカマ……」


 更にマジシャンズ・クロウが。


「レオニス。カワイ子ちゃんを一人占めか?」


 ミセス・マシーン。


「アタシは、まだ正式に紹介してもらってないんだけどね?」


 コンドルマン。


『それなら、エデンから帰ってでも遅くはあるまい?』


 それを予期していなかったベレロフォンが一様に驚く。


「ミンナ……」


 そんな彼女に、改めてレディが贈る言葉を口にする。


「だから、昨日のは私からの餞別。”アヴァロンの狩人”が狩りに出掛けるなら、それ相応のモノを持たさなきゃね」


 ベレロフォンは、腰に纏うホルスターの”騎士の十字弓(クロス・オブ・ナイト)”に手を置くと小さく呟いた。


「ありがとう……」


 俯くベレロフォンにレディが問い掛ける。


「もしかして、まだ私が言った事、気にしてる?」

「……」

「この世界。私のようなハイブリッドもいれば、体の半分が機械の人間もいる。ジャンヌみたいにサイボーグの人間もね。たまたま貴方は、貴方だっただけ。でしょ?」

「……」

「世界は広いわ。貴方の他にもいるのかもね。魔族で悪魔の人間が……」

「ニンゲン?」

「そうよ。人間……」


 何か思い直すように呟くベレロフォン。


「そうだな。私は、私であれば良いのだな……」


 そんな彼女に微笑んで見せるレディ。


「ええ」


 途端。これまで引きずっていたモヤモヤを吹き飛ばし、心を晴らしたように表情を変えるベレロフォン。


 彼女はレオニスに歩み寄ると、そのバイク後部座席に飛び乗った。


「レオ! エデンは西だナ!?」

「ああ、エデンなら西だ。でも、かなり遠いぜ!?」

「上等だ!」


 すると、ベレロフォンはホルスターから”騎士の十字弓(クロス・オブ・ナイト)”を取り出し、リムを開くと真っすぐに腕を伸ばし構えた。そして、地平線に沈みゆく太陽を照準に狙い定めると、西日のオレンジ色に染まる中、瞳に赤々と炎を煌めかせ牙を剥いた。




_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_

> レオ! 狩りの続きを、しようじゃナイか!! <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄











【SteamPunk×LowFantasy×CyberPunk】

 Gear#15/Epilogue:Go West【完】











†*THE GEAR HUNTER~スチームパンク異世界奇譚*†

†*第一期 アヴァロンの狩人たち *†

【終わり】

 この物語を最後まで読んで下さった皆様。Twitterでの宣伝に御協力頂きました皆様。また、カクヨムでも応援して下さった皆様。本当に有難う御座います。


 レオニスとベレロフォンは、未だ残る疑問の答えを探して旅に出ました。いつの日か、きっと彼らは謎を解明すべく皆様の元へ帰ってくることでしょう。


 その時は、また彼らを温かく迎えてあげてください。そして、彼らが紡ぐ物語に耳を傾けて頂けたら幸いです。


†*THE GEAR HUNTER/スチームパンク異世界奇譚*†

$来期

†*第二期 エデンの道標*†


      挿絵(By みてみん)


――魂のギアを回せ!鋼の体が唸りを上げる!!――


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