特殊な力
小平高校との戦闘では、ある野原で行われていた。小平高校が山の中にあるため、そこがちょうど中間地点になり戦場になったのだ。
野原での戦闘、それはつまり、遮蔽物がなく、身を隠せないとゆうことだ。だが、それはお互い同じであることに変わりはない。
そして、俺と心美はその方がやりやすいのだ。
「クソッ!なぜ当たらないんだ!300人で一斉射撃だぞ⁈」
「構うな!撃ちまくれ!」
「だめだ!弾切れだ!」
彼らの銃口の先には黒い戦闘服に身を包み、右手にハンドガン、左手にコンバットナイフを構えた青年が一人、踊る様に舞っていた。正確には弾丸を全てよけていたのだ。
そんな事普通の人間には不可能だ。「普通の人間には」不可能だが幹彦にはある特別な力があるのだ。
それは異常に発達した「目」だ。彼は目がよすぎるのだ。人の筋肉の動きを見て次の動作を予測することもできるし、1km先の物を見ることもできる。弾丸程度であれば止まってみえる。とゆうのは大げさだが、ゆっくりに見えるのだ。
もちろん、目の異常発達だけではここまでのことは出来ない。軍での厳しい訓練で身体能力を強化し、目の処理能力に追いつく脳を鍛え上げた。その結果、弾丸も避ける事のできる一人の軍人を…一つの兵器を作り出したのだ。
幹久は黙々と弾丸を避ける。だが、そろそろ反撃に出ようと考えていたのだ。できるだけ身軽にしようとあまり弾丸は持ってきていない。全弾で200発にもならない。
幹久は決断した、接近戦で戦うことを。コンバットナイフがあれば最悪弾切れでも戦える。
それに、相手の武器を奪うのも可能だ。
「心美!接近戦に移る。援護要請及び射撃を許可する。」
「了解!大尉殿!対物ライフルにより目標を攻撃します!」
心美が構えた銃は対物ライフルと言う大型狙撃銃の事だ。長距離狙撃用の銃と言っても過言ではない。
現在、心美は幹彦の地点から800mの地点にいる。心美が引き金を引くと爆音がその地域を包む。だが、音が届く前に弾丸が着弾する方が早いのだ。音速を超えた弾丸が小平高校の生徒に着弾する。すると、彼らは頭を跡形もなく吹き飛ばされる。対物ライフルとはここまで強力な物なのだ。
一方幹彦は敵を殺しまくっている。ハンドガンを一発、相手の急所に的確にねじ込む。それだけでいいのだ。それを幹彦は作業の様にこなす。弾丸を避け、撃ち返す、それを繰り返すうちに遂に弾切れになってしまったのだ。相手の生徒に、少しばかり笑みがこぼれる。心美は少しばかり焦っている。それを見ていた雫は動じず、とても冷静な面持ちだ。だが、それ以上に冷静なのは幹彦本人だ。動じることなくハンドガンを捨て、コンバットナイフを抜く、そして一番近い敵に突き刺し、抜く。それと同時に相手のショルダーホルスターからハンドガンを引き抜き前方3人に向けて発射する。刺された男と前方いた3人は断末魔を上げることなく倒れていった。
「幹彦くん、聞こえる?私です、雫です。」
無線から雫さんの声が聴こえた。だが、身体を休めることは出来ない。弾丸が俺を目指して飛んでくるからだ。
「はい、なんですか?」
「敵の残存兵力は残り120人よ、そこにいるのは後60人。残りは司令室にいると思うわ」
「わかりました。では、もう少ししたら爆薬を届けていただいてもよろしいですか?」
「わかったわ。分団を成型し向かわせるわね」
「ありがとうございます」
そういいながら俺はナイフとハンドガンを駆使して5人を立て続けに葬っていた。
一方、心美も対物ライフルを休むことなく撃ち続けていた。
(正確な狙撃だ。俺が見ていた限りでは全弾命中させている。本当に頼もしい味方だ。)
そんな事を考えているうちに戦闘は終わっていた。最後は敵が逃げ出してしまい、俺がアサルトライフルを拾い乱射する事で一掃し、戦闘は終わった。
その後、幹彦はC4爆弾を4つと新たな武器を受け取り小平高校に向かって歩き始めた。残念ながら心美のスナイパーとしての仕事はひと段落し、ここからは幹彦とともに前線にでる。
現在、幹彦は大口径のオートマチック拳銃を二つ、レッグホルスターに収め、先の戦闘で使っていたM9を2丁、脇下のショルダーホルスターに収めている。他にC4を4つと手榴弾を2つほどバックに詰め込んである。
ちなみに、心美はL96とゆうスナイパーライフルを背中に背負い、MP5(サブマシンガン)
を手に俺の後をついてくる。
「心美、大丈夫か?かなり疲れている様だが」
心美は見るからに疲弊しきっていた。恐らく、狙撃にからに精神力を体力を使ったのだろう。
「大丈夫だよ。戦闘に支障はないよ」
「そうか、無理はするなよ」
「うん、わかった」
少しばかり、顔が赤くなったように見える。やはり疲れているのだろうか?
鈍感な幹彦はさておき、幹彦と心美は敵の学校の校庭まで着ていた。校舎は3階建て、校庭はなかなか広い。そして、この校庭は今は地雷原になっているだろう。恐らく遠隔操作式の爆弾だ、掘り返した後がある。
俺はM9をホルスターから抜き、爆弾があるであろう場所に向けて発砲した。次の瞬間、ものすごい爆発音が聞こえる。ビンゴだ、その後も撃ち続け、全ての爆弾を撤去した。
「すごいね幹彦君、よくわかったね」
「俺は目がいいからな」
その会話の最中に異変は起きた。的の攻撃だ。設置式の重機関銃で一斉射撃だ。俗に言う、ガトリングとかミニガンと呼ばれる回転式の機関銃、あれが5丁同時に火を吹いたのだ。
「ちっ、マズイな、流石にガトリングが相手となると全て受け流すのは厳しい、心美!俺が囮になるからその間に射手を撃て!」
「わ、わかったわ!」
了解を得た幹彦は一気に走り出す。そして、心美は林の中に潜り込み、狙撃の体制を整える。
幹彦は常人では目にも留まらぬスピード、まさに高速移動しているのではないかと疑うほど素早く動き、弾丸を全て避けていた。だが、人間である以上限界がある。そもそもガトリングガンは1分間に3000発も撃ち出せるとても高性能な銃だ。だが、常に打ち続ける事は不可能である。銃身が熱に耐えられず、溶けてしまうのだ。そして恐らく、一般人であった彼らはその事を知らない。そう幹彦は考えていた。
最悪、心美頼みもありだが他力本願は良くない。
「幹彦君!狙撃体制整ったよ!」
「よし、撃て!」
「了解!」
了解の声ともに心美は引き金を引いた。そして、立て続けに引き金を引き、ガトリングガンの射手を一掃した。
「ありがとうな、心美、助かったよ。」
「いいえ、どういたしまして」
幹彦は心美の頭をポンポンと軽く叩いた。
(また顔が赤くなっている…風でも引いてるのか?)
「じゃあ、残りは俺が仕留めるからここでまっててくれるか?」
「うん、わかった。信じてまってるからね」
「あぁ、行ってくる」
そう言い残した幹彦は校庭を疾走する。ものすごいスピードだ。校庭を走り抜け校舎に向かって思いっきり飛び上がり3階の教室に飛び込んだのだ。飛び込んだ教室には男子生徒と女子生徒が重なり合うような形になっていた。驚くべきことにこの状況下で性行為をしていたらしい。
別に幹彦は何の感情も無かった。この時幹彦が考えていたのは敵の殲滅のみ、相手がどんな事をしていようと関係ないのだ。
幹彦はレッグホルスターから大口径オートマチック拳銃、デザートイーグルを抜き、男女を一発の弾丸で始末した。
そして、残存兵を始末するために教室を一つ一つしらみつぶしにしていった。
残念ながら数人は逃したが、それは心美に頼んでおいた。
全ての教室を潰した幹彦が立っていたのは司令室の前だ。デザートイーグルに弾を再装填する。最後まで気を抜かず的を殲滅する、そう幹彦は自分に活を入れた。
その時無線が入った。
「幹彦君?聞こえる?」
「はい、聞こえます」
雫からの無線だ。
「敵は全滅しました、司令本部を破壊して帰投してください」
「了解です」
俺はC4を設置し、3階から飛び降り起爆した。そしてこの圧倒的な戦闘は…いや、虐殺は幕を閉じたのだ。